感染症が奪ったのは、人の命だけではなかった…。

主人公は、感染症によって夫を失ったシングルマザー。ステイホームの息詰まる生活の中で、双子の娘たちに、心身とも健康的に育ってほしいと奮闘しているのだが…。
何かがおかしい。読み進めるうち、ひとつ、ふたつと、何かが心に引っかかっていく。あれ、もしかして…と思ったあたりで、雪崩を打つように明かされる真実。ふたりの幼い娘たちに、母親の姿はどう映っていたのだろう。夫を感染症で亡くしたことが、きっかけのひとつであったには違いないが…。そしてラストでは、もうひと戦慄待っている。異常事態によってひき潰されてしまった精神の崩壊を描く。文字数もちょうどよく、引き込まれて一気読みしてしまうサイコホラー。あの頃、人の体だけでなく、心までもが追いつめられていたのだと、改めて思い至る。