おみごと

 縁起物の蛇。
 何かの象徴――カドゥケウスの杖? うーん、違う。ウロボロス? うーん、決定打に欠ける

 本作キャッチコピー。
『私は蛇面の男を探してるだけで、私自身が蛇なんじゃない』
 ――本文中にもこの女の子が蛇であるとか蛇女であるとかそういう容姿についての記述はなく、蛇面の男の子が唯一『蛇みたいな風貌』、と取れる描写があるのみ。
 うーん?

 あ。ああ、あー。シンプルに『夢にまで見た』出会いを得るお話。

 ふたたび通読すると、確かに恋、なのかもしれない、この物語。
 アマゾン行ったり赤道近くに行ったりと紆余曲折あったものの、いやたった一度の夢のひとを追うにしては消費カロリーの高い恋やな、と思うでしょう。ですがそのあまりの奇行(失敬)から、本作が純愛であるとの認識からミスリードさせた。
 ――こんな恋をしたことが皆さんありますか? 夢で見たきり、一度も会えず、心臓わしづかみされて地球駆け巡りまくってそれでも実らず、友は去り、齢十八にしてやっと会えた。

 恍惚どころか失神しますよ、わたしなら。

『謎はすべて解けた!』といいたいのですが、別解出るなり何なりで論破されるのも面白そうなので一個人の解釈垂れ流しと見なしてください。
 あえてミスリードと書きましたが、この物語、相当丁寧な包装です。普通に読んだだけでは何割かのひとは分からないのかもしれません。みごとな純愛でした。