THE・O とラーメンについて

お前の水夫

THE・O のこと


正直に言えば私はあの『ガンダム』が好きでした。今でも懐かしさは感じますし、オッサンの心の中に何かモニョモニョしたソロモンみたいな小惑星の様な物があって、それが時折、地球に落下したりすることがあります。


それでも今では『あの世界』の戦争前と戦後に『SNSが無かったのは何故なのか』ですとか、どうして宇宙空間で『慣性の法則が働かないのか』といったことが非常に気になりだしました。

あの作品はSFとしての未来予測を放り出し、ついでに物理法則にそっぽを向きながら『リアリティがある』と認知されてきたからです。

富野監督のクリエイターとしての『全力のウソ』に踊らされ、私たちは見事に騙されました。そしてソレを結局は後悔することも出来ないわけです。


その結果として、私の内部に存在する『少年マインド』というヤツは今でも好きなのです。あの『モビルスーツ』という人型機動兵器が……。





9月の3連休も終わりを告げた『敬老の日』の夜のこと。

敬われたい、というにはまだ若い私はツラツラとPixivなんぞを見ておりました。もちろんのこと、エロ寄りのAI生成画像を見ていたわけでは決してありません。


私の目に入ってしまい、如何ともし難い気分にさせてくれたのは木星帰りのあの男が設計した『ジ・O』でした。あの丸っこいモビルスーツです。


私の様な古いファンにとって『ジ・O』と言えば、デザイナーである小林誠先生が世に送り出したモビルスーツとして有名です。

【※アーマード・コアや、モーターヘッドであるアシュラテンプルのデザインをされた方ですね。】


小林先生はこのデザインが好きすぎて、ご子息に『ジオ』という名前をつけてしまわれました。それぐらい好きなデザインだったのでしょう。

『ジ・O』のデザインはその後も形を変えながら、いくつかのコアな人気を持つSF作品に流用されました。

理屈は無茶苦茶でしたが、当時の私は大好きでした。


『ジ・O』は本当に久しぶりに私の目に映ったわけです。

ただ、不思議なことに私が感じたのは『カッコ良さ』ではありませんでした。イラスト自体は非常に上手い物であるのにです。

私が感じたのは懐かしさと「これは何かラーメンの様な物ではないのか」という感想、そして『パプティマス・シロッコ』という男の中にある『職人魂』でした。





何故に『ジ・O』がラーメンなのか。それは当時のライバル機である『Zガンダム』と『キュベレイ』も同じくラーメンであるからではないのか。

私が自身の疑問を探求する思索はこうして始まったわけなのです。


当時の地球圏をめぐる戦いは少なくとも、環七沿いの激戦区を凌ぐ苛烈さがあり、巨大な資本と太い固定ファンを持つ企業までが参戦していました。

アナハイムの厨房担当者たちは素材に糸目をつけず、更に麺にコシと新たな粘りを持たせ、具材ですら高級品で固めるという力業に出たわけです。ぶっかけトリュフやチーズで味変も可能でした。

その結果できたのが『Zガンダム』でした。

超限定品でした。一杯の値段は2500円を上回るでしょう。


一方で、放浪の老舗の系譜であるアクシズの厨房担当者たちは苦しんでいました。彼らは経営が思わしくなく、それでも秘匿した技術とソレを際立たせる女性の力を借りて、至高のラーメンを完成させます。

それが『キュベレイ』でした。

平凡な素材の使い方を工夫し、いままでに無かった仕上がりのそれは好みは別れるものの、一杯が800円であるという奇跡の様なコストパフォーマンスを有していました。


そしてここに『ジ・O』が加わるわけです。

ジュピトリスの大将であるシロッコはぶらり旅に出ている最中でした。

もちろん地球圏の『味の流行情報』は得ていたでしょう。彼には自分のラーメンで激戦を勝ち上がる野望がありました。

もし彼が勝てば、ダウンサイズされたカップ麺が全サイドと地上のコンビニを席巻したでしょう。アナハイムが彼の麺を作ることになるわけです。

木星に出掛けている間に完成させた彼のラーメンは新しい技術を盛り込まれながらも、非常に手堅いラーメンでした。豚骨魚介醤油の味のバランスを極めた結果でしたが、ベース自体は800円程度にまとめられたはずです。ベースのスープに新しい食感まで加え、更には光る隠し味まで持っていました。

彼はソコにチャーシューしか乗せませんでした。手堅い判断であり、しかも1400円を超える価格になってしまうにも関わらず、ためらいなく贅沢に乗せました。

どこか慣れた味であるはずなのに、これはこれで新しくそして旨い。それが大将が一人で完成させた『ジ・O』なわけなのです。





おそらくですが、私はモビルスーツの後ろにこのような『職人魂』を見たのだと思います。

理由は定かではありません。メカではなくソレを作り上げ必死に戦う人々に、より魅力を感じるようになったからなのかもしれません。ソロソロ脂っこい物が食べ難くなり、食への憧れが懐かしさに惹かれたのかもしれません。人は例え宇宙そらへと昇ろうとも、麺から離れて生きることは無いかもしれない、という予見が降りた可能性も微レ存ですがあると思います。

ですが、昔から『ジ・O』に感じていた何かを私の言葉で表すのであれば、きっとこれ以外に無いのだろうなと、そう思うのです。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こうしてカクヨムをチラシの裏のように使うことについては抵抗が無いわけでは無いのです。

しかし、その時の心情を読み物として綴るのはきっとギリギリセーフだと思いますし、どのみち読まれないから大丈夫ではないかと、そんな心情で書いた次第です。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

THE・O とラーメンについて お前の水夫 @omaenosuihu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ