6時間の観戦のお作法

 そんなことを思いつつ、コースの西半分をほぼ網羅してスタンプラリーをクリアし、参加証のお菓子をもらいました。こういう企画は観客をグランドスタンド(メインストレート)だけに留めず、コースの各所を歩かせるよい工夫だと思います。欲を言えばTGRコーナー(コース東)にもポイントを設けてほしかったところ。おかげで東半分は手つかずです。

 あとはグランドスタンドでまったりしながら残り1時間半を過ごします。

 富士スピードウェイは山中。雲は低いものの、天気はこの日も崩れる気配はなし。風が吹けば意外と涼しいという感じですね。しかし日光があるとアスファルトの照り返しがキツい。この時間になって、お日様が雲に隠れるようになったので、だいぶ過ごしやすくなりました。

 途中、場内の植生ではラベンダーの花が見られました。秋の気配は確実に近づいてきています。トンボが多かったのはどうかな。赤トンボではなかったのですが。

 場内のビジョンでGRスープラコーナー進入の挙動などもチェックしてみます。ここでもハイパーカーはあまりアウトを欲張らない印象。タイトコーナーは小回りが最近のトレンドなのでしょうか。

 LMGTE Amクラスの宮田莉朋選手の健闘なども確認しながら思います。このクラス、なくなってほしくなかったなあ。負のパワースパイラルと参戦費用の高騰は、WECでも今後の課題となるでしょう。実際、よろず自動車レースはもうこれ以上「速くなる」必要はないというのが、ワタクシのかねてよりの持論です。それよりも競技性、安全、参戦費用の抑制、環境問題への対応……克服すべき問題は山ほどあるでしょう。

 実際、このレースへのエントリーも全36台。耐久レースとしてはいささか寂しい限りです。LMGTE Proクラス復活してほしい。全体で50台くらいは欲しい。それが私の切なる願いです。


 さてすっかりまったり観戦モードになってしまったワタクシですが、レース時間も残り15分を切ったところで二つほど事件が起こります。

 まずはダンロップコーナーへの進入で、LMP2クラスがかたやイン側を締め、かたやブレーキロックさせながらの少々荒っぽいオーバーテイク。おいおい無茶しよるな。ゴールまでマシンを持ち帰ることが第一だろって。抜くならTGRコーナーもあるだろって。

 続いてコース上にクルマのパーツが散乱し、全車全コーススローダウンに。これ幸いとマシンを捕らえるべくスマホカメラを取り出すものの、正味1分も経たずに競技レース再開。今回はわりとクリーンな展開が続いておりますな。

 それ以上の波乱はもう起こらず、17時のチェッカーとなりました。トヨタ7号車-8号車の盤石の1-2フィニッシュ。続くのはポルシェの6号車。フェラーリ50号車-51号車と続きます。栄えあるトップチェッカーを受けたのは注目の小林可夢偉選手。ちゃんとライバルもいる中で、必勝を課せられたレースできっちり勝ち切るのはトヨタお見事でした。ちなみにこの1-2で、トヨタは最終戦を残してマニュファクチャラーズ・タイトルも決定。こちらもお見事です。

 そして出走36台中、リタイアは1台もなしのクリーンなレース。まあもとが24時間走り続ける設計のクルマですからね。6時間は余裕でしょうか。


 かくして初めてWECを観戦しての感想は……なんというか、「女を抱きたくなる」レースですな。F1やスーパーフォーミュラ、スーパーGTでは「女人禁制」のヲタクっぽい匂いがぷんぷんと漂っているのですが。この観戦では傍らに女の子の一人が欲しい。そんな空気感を持つ会場の雰囲気でした。


 表彰式では観客がコース内に入ることができます。このへんは決勝当日、後にサポート・イベントがないスケジュールならではですな。せっかくなので私もコースに入って、タイヤカスをいくつか失敬してきました。

 なお、LMP2クラスの優勝ドライバーにはロバート・クビサの名が。少々前のF1ファンには懐かしい名前ですね。あの大クラッシュからのリハビリで苦労したようですが、こうして元気に活躍する姿を見られるのはなによりです。

 LMGTE Amクラス注目の宮田莉朋選手は表彰式では2位に登壇しました。……が、レース後、終盤のスローダウン時に速度違反をしていたと判定され、3位に降着。これは残念。なおこのクラスのプレゼンターは、近年話題の静岡県知事殿が務めました。どう話題なのかは、ネットニュースでもググってくださいね(笑)。


 あとは帰りのバスがちょっと渋滞ひどくて新松田駅到着が遅れたとかありますが……ともあれ、今回のWEC富士観戦ではおおむね満足できる収穫が得られました。

 こういうカテゴリに、もっと日本メーカーからの参戦があればいいのにとは思うところです。ホンダはF1、ニッサンはフォーミュラEで忙しいのかな? マツダはロータリーじゃないと存在意義がないですし……。

 とりあえず、今はレースといえども環境に配慮せずにはいられないご時世。時代の流れに沿いつつも、内燃機関の火は消えないで欲しいと願うところであります。

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【専門用語・レース描写少な目】2023 WEC 富士6時間耐久レース観戦記 飛鳥つばさ @Asuka_Tsubasa

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