物語は、「己霊」《こだま》と呼ばれる存在(女性)が、人間の身体におりてきて、というところからはじまります。
「己霊」のサク、その器となった人間の「ツキタチ」とのやりとりがメインの物語ではありますが、とくに華やかなのは、花街の猫写。
とにかく文章が美しい。
ふんわりと纏められた髪型
色とりどりの着物。
美しい妓女たち。
「ツキタチ」は花街で働く男であるので、自然と妓女の猫写が多くなります。
そして、とある妓女が、雪道をひたすら歩くシーンは、圧巻です。
花結び───。この縁。
このタイトルが象徴するものは何か。
最終話を読むと、すっきりと、腑に落ちます。
美しい物語です。
己霊というものがある。それと縁を結ぶことで、己を確立させるものがある。
本来ならば混ざり合い溶け合うはずであったものは、別々に在ってしまった。ならばその状態を何と呼ぼうか。
選ばれた美しい言葉で綴られるのは苦界と、そしてそこで生きていく人々。
器と己霊との性が食い違ったことで、あるひとつの「結婚」は生まれた。
己霊とはなんだろうかと考える。
そして、彼らの在り方も。
分かり合うということは、現実においても難しい。「きっと分かり合える」というのは、お互いに分かり合おうとするからこそ生まれてくるものなのだろう。
己とは何か。
溶けず混ざり合わなかったものは、それでも分かり合ってあるひとつの縁の形をつくれるか。
ぜひご一読ください。