第3話

 センキュー!



「ありがとうございます。一曲目ありがとうございました。……ええと、実は、小生、札幌の出身じゃあございません。福岡県の福岡市博多区というところに実家があります。こちらには単身赴任の父を頼って参りました。まあ、この時点でお気づきの方も多いとは思いますが、一言自己紹介をさせてください」



 葵氏はこのライブがサークルでの過ごす最後のライブとなるらしい。工業学部だから、来年からは別校舎に移動になるのだ。一年だけの本校舎での日々は、楽しかったのだろうか。確か、彼氏さんなのか、仲が良さそうな同じ学部のサークルの男の子がいたのではなかっただろうか。良い青春を送れるのならそれに越したことはない。では、そろそろ。



 マイクがハウリングする。小生はそのマイクに向かって言う。



 福岡市博多区からやって参りました、小生、田中と申します。最後までどうぞよろしく! ドラム!




 ドラムが鳴る。ドコドコ、ドコドコ、ドコダコドコドコ、ドコドコ、スネア、スパァン!! 



 四人、息を合わせて。



 ドラムとギターとベースが同時に、三回に分けて鳴る。



 そしてすべてが始まる。ここから、憧れに向かって始まっていく。これが、これこそが小生のすべての初期衝動。



 そう、そしてそれはこのギターのキュイイイーンから始まり、最高のイントロが始まるのだ。



 

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ナンバーガールに憧れて 小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】 @takanashi_saima

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