東京、吐棄捨場|Tokyo, Waste End
sodaame | ソーダアメ
01 / 吐 Vomit
00
「ここにはとても高い塔がある。
昇れば登るほど向こう側へ行ける。
底を見れば、霧がない沼だ。
どこまでも落ちる。」
01 . 01 吐 Vomit
ギターがインテリアになったワンルームは、孤独がごみ袋へ放り投げられて、モニターがナイフみたいに物語を注ぎ込んでは、日常が「誰かの生活を鑑賞すること」と同義になっている。
「干渉せず、鑑賞せよ。」
そんな命題を背中に抱えて、日々が風を吹く様に、波に流れる様に、埋もれていく、動画と映像と構成の隙間に。合成みたいに積み重ねられた、観客の一員に
それが、僕たちだ。
京都から来たソングライターが、東京の悪口みたいな感傷を投げた。上京はごみ箱か? 捨てたものは持ち帰れよ。育った胎内で煙草の毒が膨らむみたいに、ずっと刺さって痛い。産まれた場所を
メンソールは負傷兵のメンタルを整える効果があるらしい。だから煙を吸う時は「生きることは戦争だもんな」と思うことにしている。夜勤の夜に、窓のない部屋から出るために、25歳で煙草を始めた。川沿いには、夜と月しかない。
01 . 02
33歳になり、ふと思い出した様に、電子煙草を買った。昔綿棒みたいに掃除していた「ごみたち」が、今ではもう不要で、そのまま捨てるだけらしい。金属チップが入った吸い殻。簡単に捨てられるようになるんだ。
「東京みたいだ。」
焼却炉が強いほど、ごみの分別が楽になる。だから東京は、区によって捨て方が違う。弱火で燃えない、燃やさないごみ。ぬるま湯みたいに溜められた銭湯に茹だる、抜け出せない日常みたいな仕事たちが、空に浮かんでは、暴れる。
エンジニアになって8年になる。機器に埋もれる、媒体に埋もれる、0と1に埋もれる。罵倒がなる、電話が鳴る、心が泣く。亡くなった感性の数を束ねては、墓標を建てる。それは塔だ。
「だからスカイツリーは
無数に伸びた枝が、灯台みたいな光になり、繋ぐ恋愛みたいなもの、弱肉強食みたいなこと。
「ルッキズムで光るのは、ボクシングで殴るのと変わらないよ。」
暴力でねじ伏せるの、力を振り
01 . 03
「世界樹に繋がった光がインターネットだ。」
それはあなたと僕を繋ぐ。繋ぐことは光であり闇だ。だから影法師みたいに、よく見える。奥まで。あなたの趣味も、生活も、将来も。そんな風に可視化された名刺が浮かぶ、灯台だ。
あなたの本を読むみたいに、名刺を読み解く。お笑いが好きです、ラジオが好きです、武道館です、東京ドームです、孤独を積み重ねては我々はまだ大きくなる。層になった、ミルフィーユみたいに、白く雲が生きている。つづく。
堕落する恋愛に憧れたのは、
「もう初恋みたいな片思いが叶わないことを理解して、好きな人が自分を好きになってくれないということを悟って、この先の全ての僕の感情は、最初に生まれた恋の、派生で、惰性で。だから、初恋以外は、ぜんぶ、浮気だ。」
これは、呪いだ。
神格化する。神様みたいに、天使みたいに、理想を上塗りして作り上げたホールケーキみたいに、スポンジが見えなくなるみたいに、彼女の性格も感性も感情も台詞も、美化されて飾り付けられて、
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「エンドロールだずっと惹かれているのは。」
「終わりがあるから頑張れるから、死ぬことはこわくない。」
「消えたい死にたい、呪いみたいな疲れだ。」
「風邪をひく、堕ちるみたいな、怠惰の底。」
「ギターが好きなのは、呪いを忘れるから。」
「感傷みたいに鳴らせ、それが生きるだよ。」
「呪いを積み上げて、大きくなった、感性。」
「東京、捨てるみたいに、生きるんだよ。」
「人間を、ごみみたいに、踏むなよ。」
「猫が、鳴いたな。」
「まだ、生きてるかな。」
「僕は。」
「あなたは。」
ここは東京、みんなが、感情を捨てる場所だ。
東京、吐棄捨場|Tokyo, Waste End sodaame | ソーダアメ @sodaame140
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