7.戦車

 切り替わる数字=カウントダウン/重なる鼓動/3ドクン2ドクン/当然のように錯覚=神経加速剤による副産物。

 現実の鼓動=早鐘よりも早く/血液を送り出す=埒外なまでの意識の加速/本来ならば電脳の補助なしには無理な無謀。

 1ドクン=固定具の解除/自由落下エリア/横並びで落下を始める弾丸機=ただただ真っ直ぐに地上への到達だけを目的とする専用欠陥機/申し訳程度の翼と大仰すぎる噴射口/もどかしい瞬間=0ドクン/飛び付くようにレバーを前へと押し込む。

 緩やかな加速=実際は急激な加速度の増加/血液の循環不順=グレイアウト/色調を失う視界/続いてブラックアウト。

 装置が作動/液体を注入/更なる神経加速剤の投与/残り2回=ドーピング可能回数≠安全マージン/つまりは自殺行為。

 視界正常化→朱に染まる/眼球毛細血管より出血/問題なしと判断/正面を睨む/先行5機。

 広がる虹色の境界面/黒の月の置き土産/一定以上の速度を保持したものだけが出入可能領域。

 加速=速度の担保/突入→ゴムボールに押し付けられたような抵抗/引き延ばし/突き抜ける=極彩領域への突入。

 後方より衝撃=脱落機の爆発/珍しくもないよくあること。

 オーロラ/もしくは絵の具を出鱈目にぶちまけたような/=月並みな表現/空間そのものが彩色された黒の月の忘れ物。

 先行する5機/加速/加速/加速/加速/爆発/荒々しく開く/炎の花。

 炎の中から現れる残骸/=岩塊/へし折れた鉄骨/特攻機の残骸/人間の形を保ったままのナニカ/=プロジェクト・シュート・ザ・ムーン月落としの残滓。

 それら=障害物/激突→弾丸機の爆発/レース続行。

 地表300メートルに設置されたゴールライン/最初の1機/通過=レース終了。

 極彩領域=高速要求空間/必要な速度の喪失=停止/身動きすら出来ず囚われる/減速不可。

 さらに速度を叩き込み/バレルロール/障害物の隙間を抜ける。

 開きっぱなしの無線/解説者の怒鳴り声/レースの光景=彼方此方にばら蒔かれたカメラで中継/弾丸機の残り=5機。

 7=月を落とした伝説の7機に肖った数/公式レースの正式出場機数。

 大抵の場合/レース終了時/半分以下。

 渦を巻く/突入の度に様相を変える/セオリーなどない/ぶっつけ本番のデスレース=DownFall。

 網膜投影/データ/極彩領域の終了を示す。

 左右に其々1機/後方すぐに1機/僅かに遅れて1機。

 境界面へ接触/引き延ばし/引き伸ばされ/突破。

 広がる/黒く荒れた地表/距離/僅かに数キロ。

 再度/後方で爆発/2機の接触。

 神経加速剤/たて続けて注入。

 音/ゆっくりに。

 視界/真っ赤。

 鼓動/痛みを伴い。

 爆風/置き去りに。

 あとは/地表を目指したチキンレース。

 何処まで/加速/何処から/減速。

 間違えれば/地表に激突。

 だからこそ/限界まで加速。

 並ぶ3機/減速限界点手前/2機が減速。

 がなりたてる実況/『無謀レックレスが抜けたぁ~。さぁ、生きてゴールできるのかぁ!!!!』

 呼吸2つ満たない時間/ゴールライン通過/

 1位=無謀レックレス/2位、3位遅れて通過/停止。

 無謀/減速なし/ゆっくり/急速に/近づく地表。

 ギリギリでターン/機体を地表の瓦礫に擦り付け/半ば不時着。

 キャノピーを押し上げ/辛うじて這い出る/無謀/血塗れ=神経加速剤の副作用=全身の毛細血管からの出血。

 帰還救護班に担架に乗せられる/右腕を突き上げる=勝利宣言/帰還救護班の持つ無線から/勝者への惜しみ無い歓声=DownFallの数少ないルールの1つ。

 レースが終わる/明日もまた勝利を求める者が重力の井戸を落下する。

 

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タロット 此木晶(しょう) @syou2022

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