第20話

歩いているとなんだかスパイシーな匂いがしてきた。


その匂いがする方に目を向けてみると。

なにやら石が突き出ていることに気付いた。



名前:コショウ石



「あれは」


タッタッタッ。

近寄って見て俺は【アイスハンマー】を作り出してそれでその石を叩いた。


ガン!


ポロッ。

石が壁から外れた。


「なんだ?それは」


近寄ってきたアリシアに答える。


「コショウ石だよ。知らない?」

「コショウ石?」

「調味料だよ」


俺はそう言いながら実演しようかと思ったが今手持ちに肉がないことに気づいた。


これではコショウ石が使えないな。


そう思っていたが。


「グォォォォォォォォォォ!!!!!」


叫び声が聞こえた。


この声はダンジョンの奥から聞こえている。


「この鳴き声はまさかベヒモスか?」


そう言っているアリシア。

どうやら鳴き声でモンスターが分かるらしい。


「ちなみにベヒモス肉は美味いぞ。私は大好きだ」


そう言ってくるアリシア。


ちょうどいいかもしれないと思った。


「よし、早く食べに行こう」

「食べに行こう?」

「間違えた。倒しに行こう」


俺はそう言ってそのままダンジョン奥地を目指す事にした。


ダンジョンの奥地に向かうとそこはちょっと開いた空間になっており、真ん中でベヒモスが暴れ回ってる。


「グォォォォォォォォォォ!!!!」


ドカン!


ボカン!


角を壁や床に打ち付けて暴れ回っていた。


「初めて見たけどあんなもの?」

「ベヒモスは凶暴だからあんなものだよ。常に戦っていないと気が済まないほど獰猛なんだ。戦う相手がいないと自分の体を周囲にあるもので傷つけるやべぇやつなんだ」

「まじでやべぇやつじゃん」


だからだろう。

既にベヒモスの体は傷だらけだった。


(そんなになるまで自分のこと傷つけなくても)


って思ったけど俺にとっては都合がいい。


とりあえず魔法を使おうと思ったがアリシアは言った。


「ベヒモスのモンスターランクは上の方だ。魔法に対する耐性もある。生半可な魔法は弾かれてしまう」


そう言っていたが俺は無視して魔法を放った。


「【ブリザード】」


ヒュオォォォォォォォォ!!!!

冷気が吹き荒れ。


そしてベヒモスは凍りついた。


断末魔を上げる余裕すらなく凍りつく。


「な、ベヒモスにマトモに魔法を通すなんて!」


そう叫んでるアリシア。


「初めて見たぞ!ベヒモスに魔法を使える人なんて」


そう言って尊敬の眼差しで俺を見てくるアリシア。


「すごい!本当にすごいことだ!」

「そんなに褒めるようなことかな?」


俺はそう言いながらベヒモスに近づいて行く。

そうすると凍りついたベヒモスの氷は砕けてその場に宝箱が落ちる。


【ベヒモスの肉】を入手することができた。


それにコショウ石を砕きながら振りかける。

それから岩塩だ。

いつものやつ。


「そういえば姫様が言ってたな。この村の料理はすごく美味いと」

「今からご馳走してあげるよ」


そう言いながら準備を終えた肉を焼いていく。


ジュワーっ。


滴り落ちる脂がとてもおいしさを感じさせるなぁ。


「だが、私はこれでも舌が肥えてるんだ」


アリシアはそう言った。


「ふぅん」

「私の舌をうならせることが出来るかな?ふっふっふ」


なんだかカチンときた。


「食べなくてもいいんだよ?」

「すみませんでした。食べさせてください」


初めからそうやって素直になってればいいのにな。


「はい」


焼き上げた肉を半分渡してやった。


「このスパイシーなにおい……絶妙な焼き加減……ふむ……」


俺はそんなことを言ってるアリシアの横でさっさと食べた。


パクっ。


「おーうまーい」

「なんだと?!いただきます!」


レポートをやめてさっさとかぶりついたアリシア。


「おー、うまい……ほっぺたが落ちそうだ。初めて食べたぞこんなうまい料理」


1口食べてそう言ってた。


(即落ちしてるよこの人)


まぁいいや。


美味いと言って貰えるのであれば俺としてもそこそこ気分がいい。


そうして帰り道を歩いてるとアリシアは言った。


「そういえばだがこの村のことかなり話題になってるのは知ってるのか?」

「え?そうなの?」


聞いてみるとアリシアは頷いた。


「とても美味い飯が出てくると有名なんだ。各国が所有権をめぐって言い争ってるんだぞ」

「残念ながらここはとある貴族の所有地なんだよねぇ」


俺の父親の所有地。

所有権は父が持っている。


「その父親に暗殺依頼が殺到しているぞ」

「うぇっ?」


変な声が出た。


「いつまでもここの所有権を手放さないから暗殺されそうになっているらしい」

「じょ、冗談だよね?」

「マジだよ。嘘ついても仕方なく無い?」


そう言われて俺は逆に冗談だと言って欲しかった。


しかしどうやら本当らしい。


(まじで暗殺されそうとか笑えてくるな)


親族とは言えいきなり縁を切ってきた奴だから正直スカッとしてた。


「もう一押しで所有権を手放しそうなところまで来ているそうだ」


そう言われてぶふぉっと噴き出してしまった。


「めっちゃ効いてるんだな」

「そりゃ暗殺されそうになったらねぇ」


そんな会話をしながら俺は村に帰ろうとしていた。


今日はたくさんの肉が手に入ったので村の人たちに分けてみよう。


ベヒモス肉をコショウと岩塩で味付けしただけだけどさ。


でもシンプルイズベストってやつだと思ってる。


そんなことで歩いてると声をかけられた。


「ありがとうルイス様ー」


女の子の声。

アリシアか?と思ったけど明らかに声の感じが違った。


それにアリシアはもっとガサツという言葉が似合うような話し方。


誰に声をかけられたのかと思って声の聞こえた方向に目をやった。


そこにいたのは


「誰?」


見覚えのない女の子がいた。

見た目は……例えるならそうだな。ハチガールだな。


頭から触覚が出ていてお尻の部分からは長い攻殻みたいなの。

そして、黄色と黒のデンジャラスカラー。


いや、待てよ。

これひょっとして


「お前キラービーか?」


そう聞いてみると女の子は頷いた。


「はいっ。私はキラービーの女王蜂でございます♡」


俺はアリシアを見た。


「なぁ、キラービーって人になれるの?」

「え?し、知らないな。少なくとも私はそんなこと聞いたことないぞ」


原作でもキラービーが人になるなんて話は聞いたことがなかった。


それから俺は蜂ガールを見て叫んだ。


「はぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ?!!!女王?!!!」


なんで?!人型になって人語しゃべってるのこの人!!!



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【悲報】悪役に転生した俺さん、うっかり原作主人公さんを殴り飛ばして辺境に追放されてしまう~原作を履修済みなので辺境を開拓していくことにした。俺の開拓した辺境はやがて立派な大国になっていく にこん @nicon

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