第14話 母親
天堂が悩んでいるようだったので話を聞く。
「僕作は勇者なのにまだ弱いままだ、できれば力を貸してほしい」
「いいよ、でも天堂が戦うんだよ?」
「分かってる」
「じゃあもっと強いダンジョンへ行こうか!」
「今でも十分強いけど?」
「それはボスの話だろ?雑魚が強くなればいくらでもレベル上げができるじゃないか!」
雑魚が弱いからボスが強く感じるんだ。
「うん。やってみるよ」
「じゃあ決まりだね」
特級ダンジョンというところがあるらしいのでそこに行く。
「じゃあ俺は見てるだけな!危なくなったら回復してやるから」
「おう!スパルタだね」
「これくらいしなきゃ」
「だな!いくぞ」
一階層でボロボロになるまで戦った天堂は少し顔つきが変わった気がした。
「どうだった?」
「いや、これくらいがちょうどいいのかもしれない」
それから毎日、天童と二人で特級ダンジョンの攻略に励む。
ようやく三十層に辿り着く頃にはだいぶ強くなっただろう。
「一回元のダンジョンを制覇してみるよ」
と言った天童は一時間くらいでダンジョンをクリアしてきた。
「特級に比べればまだマシだな!」
「だろ?だから美琴なんかと言ってみるのも手だと思うぜ」
「ああ、回復ないと辛いからな」
ファミレスで二人で笑い合う。
俺も仕事に戻らないとな。
「ただいま戻りました」
俺は会社に戻った。
「お帰りなさい!この天童君ってのも才能ある子なのね」
社長がデスクで仕事をしている。
「勇者ですからね」
「職業が?」
「そうです。僕らは異世界に呼ばれた時に職業を与えられました」
「へぇ。そうなのね、で勇者君は今なにしてるの?」
「まだ自分は弱いと言って特級ダンジョンに潜ってますね」
「凄いわね、攻略できるの?」
「あれくらいなら俺はできますけどまだ天童は三十階層までですね」
「勇者より強いなんて凄いわね」
「ガチャ」
「ん?」
「あんたのせいで私の人生はめちゃくちゃよ!死んで詫びなさい」
何故か母が包丁を持って立っていた。
「殺しちゃダメよ」
「分かってますよ」
「なにがわかってますよだ!包丁で刺して殺してやるからそこでじっとしてなさい!」
“パキンッ”
「こんなので死ぬわけないだろ?俺がどんな生活を送ってきたと思ってるんだ?」
胸を刺したはずの包丁は折れてしまった。
「ふ、ふざけんじゃないわよ!あんたは私の言うことを聞いてればわよかったのよ」
「あんたの言うことなんて聞いてたら俺はあのまま死んでいただろうな」
「そうよ!死ね!死ね!このクソ野郎」
「警察に電話したわ」
「そうですか。あなたも犯罪者ですね」
「は?私のものを私が壊そうとしただけじゃない!なにが犯罪よ!」
「話にならないな」
「あーー!あったまくるわねその口調!あんたも私を馬鹿にして!」
「あんたも?」
「あんたの父親も私のことを馬鹿にしてでてったのよ!あんたと一緒の目をしてね」
母は警察に捕まり殺人容疑で逮捕された。
俺の父か、会ってみたいが今は無理だろうな、俺の心が許してないからな。
母親を捨てなければこんなことにはならなかったんじゃないかと思う。人だから合う合わないがあるだろうが子供にその責任はない。よく親ガチャなんて言葉を耳にするが本当にその通りだと思う。
「今回は出られないわね、人を殺そうとしたんだから」
「ですね、俺もその方がいいですし」
「会社が貴方を守るわよ、守る心配もないでしょうけどね」
「あはは。守ってもらってますよ」
「ほんとうかしら?」
「ほんとうですよ」
笑いながら話をする。
「でも、本当ひどい母親よね」
「まぁ。あれが普通の人ですから」
俺はあいつと縁が切れてほっとしている。
そして、俺の収益の一部はそんな恵まれない子供達へと寄付している。
俺みたいな子が出てこないように願って。
小四で異世界に転生した僕は生きて帰って見返してやる。現代ファンタジー あに @sanzo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます