第20話 魔王と鬼嫁の再婚


 それから一年が過ぎ、弟たちもこの人魔界に馴染んできた。


 あれだけ酷かった天候災害もおさまり、各町や村、緑あふれ実りの多い場所になった。

 多くの町には子供が読み書きや計算を教わる学校が出来て、弟たちもそこで学んでいる。

 人魔界は、人も魔族も住みよい世界になった。


 そして──。


「ゼノン、とってもカッコいいです……!!」

「千奈も、とてもきれいだ」


 純白のドレスが、開け放たれたテラスの窓から入る風に揺れる。

 微笑み合う私たちの目の前には、大司教と、結婚証明書。

 それに金の印璽。


 外には大勢の国民。

 人と魔族、皆が私たちを祝福しに集まってくれた。


「これで、お二人の結婚を承認いたします。陛下、印璽を」

 大司教が促すと、その赤い瞳が私をとらえた。


「後悔はないか?」

「あったらここにいませんよ」

 私の可愛くない答えに頬を緩め、印璽を手にしたゼノン。


 そして書類に、印璽が押された──。


「これからもよろしくたのむ。鬼嫁殿」

「こちらこそよろしくお願いします。魔王殿」


 再び夫となったゼノンの唇が、私のそれに重なる。


 少し照れくさそうに微笑んだゼノンのずっと後ろの方で、碧眼の女性が優しく微笑んだ。そんな気がした。



 END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鬼嫁と呼ばれ離縁された私は魔王と強制結婚させられました。腹が立つので人間界滅ぼそうと思います。 景華 @kagehana126

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ