第35話 ヒトの欲求ってめんどくさい

 今まであんまり書籍化したいとか思ってなかったんですよ。訳が分からんまま書籍化したもんだから、コンテストの苦労とか知らんのね。

 たまになんとなくコンテストとか出すと、一次は確実に通過しちゃうから、みんなそんなもんだと思ってた。二次三次行くとさすがに「このまま行けばいいのになぁ」とかぼんやり思ったりしたけど。

 いずれにしろその程度だった。


 ところが。

 人間って『死』を意識すると途端に何かを形として残したくなるんだよね。これホント不思議で、電子書籍なんかまったく眼中にないの。紙の本にしたい、ドラマ化したい、そういう欲求がむくむくと鎌首をもたげてくるわけ。


 そこへきてやっと、毎回コンテストの度に「今度こそ書籍化したい!」とか「書籍化できなかったら筆を折る!」とか言ってる人の気持ちがわかった。

 ああ、そうか、こういうことだ。みんな書いてたんだ。だからあんなにみんな必死だったんだ。私はどこか「どーでもいいや」って思ってたんだ。

 多分、名刺に「作家」って書きたい人と、どうでもいい人の違いなんだろうな。今頃になってやっと私は名刺に「作家」って書きたくなってる。


 で、ここで笑っちゃうのが、その「作家」って書きたくなった原因によって、書けなくなってるという現在の状況。

 まんまと何かの賞に入っても、授賞式どうやって行くの? 最寄り駅まで行けないのに。授賞式の会場で車いす貸し出してくれんの? 歩行器で行っていい? 疲れたら休んでいい? 途中で帰っていい?

 めんどくさいね、授賞式。だけど何か賞に入りたいって思う矛盾した自分がいる。


 ヒトの欲求ってほんとめんどくさいよね~。



※如月は14歳なので余命はあと80年くらいです。80年のうちにドラマ化するぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コイツろくなことを考えずに生活してる 如月芳美 @kisaragi_yoshimi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ