代々実家に伝わる葬送の儀式。それを取り行う物語の主人公は、何を見たのか?情景の精密な描写と、物語の急速な展開が、驚愕の結末へと読む者を一気に導くでしょう。
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ふるさとの慣習って、もはや意味はわからないけど、やってること、ありますよね。 そういうのに興味がなくて、あるいは、めんどくさくなって、やめてしまう人もいます。 でもその、死にまつわる慣習は、本当にやめても大丈夫かな? 描写力がすごい、本格ホラー。 主人公の見る光景、感覚がしっかり伝わってきて、ガッツリ怖いです。 途中でダレずに、おおおおお、と一気に読んでしまいます。 ラストも、ああ、そうだったんだ、と納得させてくれます。 ぜひおすすめしたい、素晴らしい作品です。
「お骨返し」それは、田岡家の者が死んだ時に、山の祠に骨の一部を納めに行く儀式。「お骨」を「返す」。だから「お骨返し」だ。謂れも由来も何も知らない。ただ昔から田岡家の者は骨の一部をお山に返す……。30年ぶりに、「お骨返し」をすることになった主人公は、祠を目指し、鬱蒼とした山を登ってゆく。ホラーだよっ!怖いよぉ。夜中に一人で読むのはオススメしません。鳥肌たっちゃうよ。ぶるぶるぶる……。面白くって、ゾクゾクするホラーが読みたい、そこのあなた!ぜひご一読を!
事の始まりは、主人公の父が亡くなったところから始まる。珍しい風習を持つ主人公の家は、亡くなった家族の遺骨を石室へ戻す“お骨返し”という儀式を行わねばならない。しかし何よりも異なことに、父はおかしな亡くなりかたをしていたのだ。件の石室の前で倒れていた父の口に、いっぱいに詰められた葉や土くれ。そんな物を詰め込む理由とはなんであろうか。まさか、空腹だったなどということはあるまいが。我々に想像などできる筈もない。科学の時代を生き、死に至るまでの空腹などとは遥かに無縁の我々などには。