4話 Be? My Friend!!(No.2 相田志優)

志優(心の声)

「昔から、そうだ。意地っ張りで、とにかく素直じゃなくて。憧れているモノに手を伸ばそうとしても、僕には無理だと決めつけて、距離を置いていた」


紗弥

「ちょっとお兄ちゃんたち! 早くしないと、学校遅れちゃうよ?」


希耀

「わかってるってば。紗弥準備はやいよ」


紗弥

「希耀兄ちゃんが遅いだけだよ。志優兄ちゃんはもう準備終わってる」


希耀

「焦らせないでよ、紗弥!」


志優

「小競り合いはいい。早くしないとバスが来る」


希耀

「ふう、ふう。終わったよ準備!」


紗弥

「じゃあ、行きましょ。行ってきます」


 志優、希耀、紗弥、並んでバス停まで歩く。


 バス停に到着。


紗弥

「じゃ、お兄ちゃんたち! 新しい学校の始まりは、今後の人生を左右するわ。ちゃんとやってきてよね!」


志優

「はいはい」


希耀

「わかってるってば、これ以上緊張させないでよ!」


紗弥

「じゃ、私は学校行ってきます」


志優

「いってら、紗弥」


希耀

「行ってらっしゃい!」


 紗弥、中学校へ。


希耀

「はぁぁぁぁ。友達出来るかな」


志優

「お前は友達に固執してんな」


希耀

「何だよ、悪いのかよ、兄ちゃん」


志優

「悪くはないけど、別に友達いなくても、生きていけるじゃん」


希耀

「兄ちゃんは寂しいことを言うなあ。高校時代、友達なしで過ごすなんて、人生の半分無駄にしてるよ。兄ちゃんは友達欲しくないの?」


志優

「どこからどこまでが友達かわからないし。ひとりでいる方が気楽だよ」


希耀

「ほんとに寂しいなあ。それに根暗だよ。そんなこと言ってると、本当にひとりになっちゃうよ?」


志優

「どうせ僕は、根暗な発言しかできない根暗人間ですよっと。あ、バス来たぞ」


希耀

「ひぃぃぃ、緊張する!」


 志優、希耀、バスに乗車。


 志優、希耀、言の葉高校に到着。


 昇降口で靴を履き替え、4階の1年生フロアへ。


希耀

「兄ちゃんは5組だよね?」


志優

「5組1番。相田だから1番は免れられない」


希耀

「じゃあ、職員室より向こう側かあ」


志優

「そうだよ」


 志優、希耀、4階のフロアへ到着。


志優

「じゃあ、僕はここで」


希耀

「兄ちゃん、俺のこと応援しててよね!」


志優

「はいはい。じゃな」


 志優、希耀、別れる。


 志優、5組の教室に入り、1番の机に座る。


志優(心の声)

「今日の日程は・・・・自己紹介、対面式、写真撮影っと・・・」


 志優、クラスのなかを見渡す。


 クラスメイト、談笑している。


クラスメイト

「初めまして、よろしくね!」


「どこ中から来たの~?」


「部活、何に入る予定?」


志優(心の声)

「・・・・ふぅ。ホームルームまで時間あるし、寝るか・・・」


 志優、机に顔をすぼめる。


(志優の中学時代の回想)


 志優と希耀の周りにクラスメイトが集まっている。


中学の時のクラスメイト

「おいおい、志優も希耀も、お前ら強いって!」


「お前らがいるおかげで、サッカー部成り立ってるようなもんだよ」


希耀

「そんなことないよう。兄ちゃんのおかげだって!」


中学の時のクラスメイト

「やっぱこの双子はいいわ。推せる」


「それな?」


希耀

「あははは、推せるだなんて、俺ら大層な存在になったなあ。ね、兄ちゃん」


志優

「え?」


希耀

「俺、トイレ行ってくる!」


中学の時のクラスメイト

「お、行ってらっしゃい!」


 希耀、教室から出て行く。


 中学の時のクラスメイト、志優の周りから離れていく。


中学の時のクラスメイト

「なんか、志優くんって話しづらい・・・・」


「変に人と距離置いてるし」


「あんま話聞いてないよね・・・・」


「なんかよくわかんない信条持ってるっていうか、勝手に友達面すんなって顔してるっつうか」


「正直友達にはしたくない・・・・」


「双子なのに、希耀と全然違うよな」


 希耀、教室に戻ってくる。


中学の時のクラスメイト

「お、希耀お帰りー」


希耀

「たっだいまー! あ、兄ちゃん、次の英語の予習箇所どこだっけ?」


中学の時のクラスメイト

「あ、それ、私も教えてほしい、志優くん!」


志優

「え? あ、えっと・・・・・」


志優(心の声)

「こんなんだから、わからなくなる。どこからどこまでが、友達なのか、って」


(志優の中学時代の回想、終わり)


友架

「あのぅ・・・・・相田くん?」


 志優、机から顔を上げる。


志優

「え・・・・?」


志優(心の声)

「誰この人・・・・知らな・・・・」


友架

「初めまして!」


志優

「・・・はい」


友架

「2番の市川友架です! 私の友達に・・・・なってくれませんか!」


 志優、2、3度瞼をしばたたかせる。


志優

「・・・・・え?」


 対面式の時間になる。各クラス出席番号順に並ぶため、志優、友架、隣同士。


司会者

「・・・・それでは続いて、部活動紹介に移りたいと思います! ではまず、野球部から・・・」


友架

「ねえ、相田くん」


志優

「・・・はい、なんでしょう」


友架

「相田くんは中学では何部だったの?」


志優

「・・・僕? 僕はサッカー部だよ」


友架

「へえ! じゃあ、高校でも、サッカー部?」


志優

「い、いや・・・・高校では別に」


友架

「そっかあ、そうなんだ。なんか弓道部の袴とか着たら、似合いそうだけどなあ」


志優

「弓道部?」


友架

「うん! 何て言うのかな、私、初見で相田くんにビビッときて、友達になりたいって思って声を掛けたんだけど・・・・・その時、弓道で弓を放つ、凛々しい感じに見えたと言うか」


志優

「・・・・・初見でそんなに印象受けるもの?」


友架

「え! 誰だってそうじゃない? 私はそうだったよ。相田くん、名前のとおりシュッとしてるし、なんか素敵なんだよね。昨日初めて見た時から、相田くんが脳裏に焼き付いて離れないんだよ~」


志優

「へえ。変わってんね」


友架

「・・・・えへへ。よく言われる」


 友架、ステージの方に向き直り、黙る。


司会者

「続いて、弓道部。部長、満天寺雪さん、お願いします」


「はい。初めまして。弓道部です。弓道部は・・・・・」


志優(心の声)

「・・・・・僕に似合いそうなんて、考えてくれるんだ、この人」


「・・・・袴を羽織り、一点集中して、想いを乗せて、矢を放ちましょう!」


志優(心の声)

「・・・想いを乗せて、矢を放つ・・・」


 志優、隣の友架の方を向く。友架、にっこり笑う。

 

志優(心の声)

「・・・・ほんと、変わってるな、この人」



 写真撮影の時間になる。


担任

「はーい。出席番号順に並べ~。10人ずつ4列な~」


友架

「相田くんと隣だ! イエイ!」


志優

「・・・・」


友架

「ちょっと~、盛り上がってよ! それに、こんなに表情固まってちゃ、写真よく映らないし、みんな離れていっちゃうよ?」


志優

「・・・・・・別に、元から離れてるし、いいけど」


友架

「ええ? じゃあ私も離れていこうかなあ」


志優

「え?」


友架

「相田くん、とても素敵で魅力ある人なんだから、そんな風に言うなんて、もったいないよ」


志優

「・・・・市川さん」


友架

「魅力がなかったら、私は友達になりたいって、思わない!」


志優

「・・・・・・市川さんにとって、友達ってどこからどこまでなの」


友架

「え?」


担任

「はーい、撮るぞー」


 5組一同、写真撮影を終える。


 5組メンバー、各々教室に戻り始める。


友架

「・・・・話途切れちゃったね。どこからどこまで、かあ・・・・」


志優

「ごめん、変なこと聞いて」


友架

「なりたいって思った瞬間から始まって」


志優

「?」


友架

「どこまでってのは、ない! って私は思う!」


志優

「・・・・・」


友架

「私は今、相田くんに対して一方的に友達になりたいって言ってるけど・・・本当に友達になる瞬間って、お互い心惹かれあった時なんだと思うなあ。心の磁石同士がくっついて、想いがひとつになるの。まさに一点に集中するっていうか! なーんて、弓道部から引用してみたけども」


志優

「・・・市川さんは、変わってるね」


友架

「ええ! 2度目だよそれ!」


志優

「・・・・僕なんかに、声かけてくるんだもん」


友架

「それは、魅力がある人だから! だよ」


志優

「・・・・ありがとね」


友架

「・・・・えへへ」


 志優、帰宅。部屋のベッドの上で、寝そべっている。


志優

「心の磁石同士がくっついて、想いがひとつになる・・・か」


紗弥

「志優兄ちゃん、ご飯」


志優

「ああ、今行く」


志優(心の声)

「中学校の時、僕の周りにいる人たちは、本当は陰で、僕のことを疎ましく思っていた。希耀がいない時は、いつも僕から離れていって、上辺だけで、仲のいいふりをしている。それが本当に・・・・心の底から気持ち悪くて、いつしか僕は、ひねくれ思考になっていた」


相田家

「いただきま~す」


希耀

「ねえねえ兄ちゃん」


志優

「なに、希耀」


希耀

「クラスに友達出来たよ!」


志優

「・・・・よかったじゃん」


紗弥

「志優兄ちゃんは? まさか根暗発言してないでしょうね」


志優

「してないから」


希耀

「で、どうだった?」


志優

「・・・・どうだろうね」


希耀

「ええ~」


 希耀、紗弥、他愛のない会話を始める。


志優(心の声)

「市川友架さん。あの人は・・・・本当に真っ直ぐで、綺麗で、純粋で、そしてとっても変わっていて・・・・中学時代の、あの人たちとは、確実に違った」


志優

「ともだち・・・・」


希耀・紗弥

「ん?」


志優

「い、いや? なんでも・・・・」


志優(心の声)

「なりたいって思った瞬間から始まる。そして・・・・」


 翌日。


友架

「おはよう、相田くん!」


志優

「あ、お、おはよう」


友架

「今日から授業開始! 緊張するっ」


志優

「そう」


友架

「1時間目から数学とか嫌だよ~」


志優

「・・・・市川さん」


友架

「ほへ? なに、相田くん」


 志優、手を差し出す。


友架

「・・・・ん? どうした?」


志優

「友達に、なりたい」


友架

「・・・・え?」


志優

「自分から言って来たんじゃん」


友架

「え・・・なんだか照れるなあ。友達になりたいって、思ってくれたんだ」


志優

「自分の想いを真っ直ぐ伝えられる、綺麗で純粋な人だから」


友架

「・・・・ッ!」


志優

「それが市川さんの魅力」


友架

「あ、相田くん・・・・」


志優

「これからよろしくね」


 友架、笑顔を輝かせる。


友架

「うん! もちろん!」


 友架、志優の手を取る。


                            (終わり)



登場人物

相田志優(あいだ しゅう) 高1(98期生1年5組)

市川友架(いちかわ ゆうか)高1(98期生1年5組)

相田希耀(あいだ きょう) 高1(98期生1年1組)

相田紗弥(あいだ さや)  中3・志優、希耀の妹


満天寺雪(まんてんじ ゆき)高2(97期生・弓道部部長)

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言の葉高校98期生短編集 言の葉綾 @Kotonoha_Aya

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