孤独や惨めだと感じる日さえあるけれど一人じゃない、君がいるから

勉強や研究と同じく、創作も独りで行う孤独な作業である。
作るには自分が描きたいものを注ぎ込めばいいけれど、出来上がった作品は、楽しませる相手に届くものでなければならない。
矛盾するようでいて、車の両輪のように、前に進むためにはどちらも欠けてはならない大切なものだということに、改めて気づかせてくれる作品。

主人公がとった方法は、彼女を思っての行動であり、彼女のためでもある。
作品を破ったのは彼女に作品を書き続けてほしくて、筆を折ってしまう最後の小説をなかったことにしようと破って物語世界を壊したのだろう。
でも、それは主人公の考えであり、エゴの押しつけでもある。

高三の春に入賞して、書籍化は卒業の頃。一年かかっている。
「長編をリメイクした作品を書籍化」なので、手直しをするのに時間がかかったからだと推測される。
出版側としては、在学中に出版すれば『高校生作家デビュー』と広告に打てて売りやすいと考えたはず。
もっと早く、書籍化したかったに違いない。

主人公の書いた作品は「ここに下ろしたものは、剥き出しの内臓だ。血生臭くって、人間の腐敗臭がする」であり、互いにやりあえば内蔵が出てくる。
決してきれいなものではない。
カバー裏は、血のような真っ赤では、と思えてくる。
二人が同じ舞台に立てたとき、良き友人として笑いあって再会することを切に願う。