女子トイレの怪
ハナビシトモエ
弐番地ビルの女子トイレ
大阪の弐番地ビルには多くの飲食店が入っている。粉もん、ラーメン、和食、寿司、中華、バー。
特に単価が高いわけではなく、帰りのサラリーマンや学生の集まりが立ち寄るくらいのテナントが多い。
このテナントたちには共通点がある。店内にトイレが無いことだ。
その為、ある人は早歩き、ある人は階下にかけ降り、ある人は階上にかけ昇り。テナントから借りた鍵で二階の男女共用トイレに行くことが必須になる。ビルの会社は整備をケチったせいで、和式便器一台でタイルの色は冷たい。
吐しゃ物を夜勤管理人の私が退勤前に掃除しようとも、間違いなく吐しゃ物を前にしてトイレをした者もいる。便器からはみ出した便。うっかり便器に落としてしまった持ち物。
ここに通うのは週に四日ほどだが、転職を考えるくらいだ。
さて、トイレの利用者からこの様なクレームが挙がっていると聞いた。
よくトイレに眼鏡を落としてしまう。
それくらい何とか気をつけて欲しい。
ところが不思議なことに同じテナントに三日後に来ると、洗面台に自分の眼鏡がきれいな状態で置かれているという。気持ち悪くて客足が遠のくテナントもあり、何とかならないか管理人さんと言われてしまった。
管理会社に言っても仕方がない。テナントによるとちょうど私の勤務がある時に起こるという。
仕方なく赤色の眼鏡をかけて、早くから出勤した。
トイレの中を監視したいが、利用者も使いづらいだろう。
「あ!」
中から声がした。
貴重品がよく落ちるので赤黒い色で注意と書いているのに落とすのだ。利用者はきっと落としたのだ。眼鏡は必要だが、かけることが出来ない。慌ててコンタクトをつけるか、中座するか。
そうだね。もうトイレに置いておく子もいるよね。
女の子の排泄物にまみれたゴミ箱に入っている眼鏡は美味しいもの。ちゃんと洗ってねじを締めてあげるから二日待ってね。ちゃんと洗面台に置いておくからね。
この赤い眼鏡も明日には返さないといけない。
惜しいな、丸見を帯びたこれを昨日の出会いを思い出しながら、ずっとつけていたかった。
女子トイレの怪 ハナビシトモエ @sikasann
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