第一章・第二話「revive」
「ここは、どこかしら...。わたくしは、一体」ヴェルデは、自らの体が運ばれていることに気が付いた。周囲は見慣れない機材で溢れており、窓の外は何やら新鮮な光景が広がっていた。
やがて、担架は小さな診察室のような場所に進んでいく。1人の医師が現れる。
「ヴェルデ様…。とうとう目を覚まされましたか。ここは、大変危険です。歩けますか?我々と共に逃げましょう。」謎の医師達が、ヴェルデのもとに駆け寄った。
彼らの目は何かに対して怯えるかの如く恐怖に満ちていた。
「ヴェルデ様、裏の非常口からお逃げください。」ヴェルデは呼吸を荒くしながら、医師達にうなづく。
「さあ、早く…!」ヴェルデはふらつきながら、医師達に支えられながら立ち上がろうとした。
しかし、遠くから黒服が迫ってきている影が見えた。
「まずいぞ...!」不穏な空気が診察室を包み込む。その瞬間、ドアが蹴破られ、何人もの男たちが一斉に部屋へと入り込んできた。
「我々はエルマール共和国
「なんなの...?」意識がもうろうとしながら、混乱し始めるヴェルデ。
「見つかった…!早くお逃げください、、ヴェルデさま…!」医師達はそう言った。
「構わず撃て…!」と一人が声高く言い放つと、何人もの国家情報客員が医師に向けてライフルで乱射する。
「なぜ!あなた達はわたくしにそこまで…!」大きな銃声と悲鳴が響き渡る中、ヴェルデは心の中で複雑な気持ちが交差していた。
彼らは、ヴェルデに向けて逃げるようにという目配せをした。
ヴェルデは咄嗟に逃げた。
恐怖で声も出ず、ただひたすらに震えながら走り続けた。それは、彼女がこれまでに経験したどの恐怖よりも直接的な恐怖だった。
彼らの決死の判断によってその場から脱出に成功し、迫り来る命運から流れたのだ。
こうして、ヴェルデはNIAに追われながら、なんとか近くの港町までたどり着く。
「きっと大丈夫よ…。」ヴェルデは自問自答した。訪れた街は、彼女にとってはどこか親しみある風景が広がっていた。
「ここはどこなのかしら...?」偶然遭遇した旅人が話しかけてくる。
「お前さん迷子か?ここはエルマール共和国の古都ベッフェルだ。旅人なら案内するぞ。」旅人は、そう答える。
「エルマール共和国...?ここが王都ベッフェル...?」ベッフェルは彼女が暮らしたエルデンブルクの首都で、ヴェルデは混乱を隠すことができなかった。
かつての建物は取り壊され、見慣れない色の国旗と見知らぬ鉄筋コンクリート造りの建造物が立ち並んでいたのだ。
「まさかっ…?そんな訳!わたくしは !?」摩訶不思議な現実を受け止めきれないヴェルデ。
その瞬間
再びあの銃声と共に、怒鳴り声が聞こえてきた。
「国家情報局からは逃れることはできないぞ!」
「教えてくれたことに感謝するわ。わたくしはもう行かなければなりません」旅人にそう伝え、勢いよく走り出すヴェルデ。
複数人の黒服に追われながら、とうとう港の端まで来たヴェルデ。
ヘトヘトになり、完全に逃げ場を失う。
そこで小さな観光船を見つける。複数人の旅人が船に乗り込んでいるようだ。勢いで、出口からチケット確認なしに乗り込んでしまう。
「ここまで来れば大丈夫かしら...?」ヴェルデは身を固くする。
しばらくしても黒服がおって来なかった。
彼女は一安心した。
その時、突然アナウンスがかかり、船が発車する。
「あら。どこに向かってしまうの...?」
しかし、ヴェルデはそう言いながらも、観光船の甲板に立ち、遠くの海を見つめ始める。
「...長い度になりそうね。」彼女の心の中ではどこか生きた気持ちがしていた。
追手の存在は常に彼女を脅かしていたためだ。
この逃避行は、彼女にとって未知の旅行のスタートだった。
「この船は、桜国の北陰道へと向かいます。」アナウンスが響いた。
ヴェルデは記憶を思い返す。
「桜国は隣国。確かアレインの言っていた国ね」長い航海を経て、船は静かに桜国の北部、北陰道に到着した。
「...!」ヴェルデは人目を避けるように船を降りる。
辿り着いたのは、桜国の北陰道にある小さな港町。穏やかな海と、温かい風がヴェルデを迎え入れる。
「ぐぅ...。お腹が空いたわ…。」ヴェルデは丸1日飲食をしていなかった。
彼女は近くのコンビニに入店する。
「いらっしゃいませー」2人のアルバイトの店員がヴェルデに話しかける。
「ここは飲食店かしら。イチオシの食べ物はないかしら?50王政ベルクでいいわ」
ヴェルデは店員にそう投げかける。
「エルマール語?確かバイトのアレインさんが通じたような」店員は柔軟に対応する。
「ベルクは世界一の通貨...。誰も知らないはずがないわ!」ヴェルデは素直に疑問を問いかけた。
周りの客や店員は、明らかに見かけぬ紙幣を見せ始めたヴェルデに同様する。
その時、一人の老人が彼女の前に現れる。
「おや。なぜ君はエルデンブルク時代の紙幣を持っているだ?懐かしい...」老人を紙幣を見て、ヴェルデも同時にある記憶が蘇った。
「まさか貴方は…?アレイン…!」そう、その老人はミハイル・アレインだった。
彼はヴェルデの幼馴染で、恋人だった青年だ。
ヴェルデは老人の衰えた姿に言葉を失う。しかし、彼は優しく微笑むわ
「生きていたのか?私は夢をみているのか?」
ヴェルデが当時のままの姿であることに気付き、幻想だと思い込むアレイン。
〈第四話につづく〉
亡国のヴェルデ 桜国 @sakurakoku
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