亡国のヴェルデ
桜国
第一章・第一話「eve of revolution」
50年前の旧エルデンブルク王国。
透き通った満月が天を彩り、きらめく星々が夜空にかがやく静寂な革命前夜。
王女エルデンブルク・ヴェルデは、幼馴染のミハイル・アレインとの久々の再会した。しかし、新たな緊張感に包まれていた。
「アレイン…?生きていたの。」
「ヴェルデ、逃げろ...。今夜、全労働者党が王宮の襲撃計画を実行する...。僕は数日前まで彼らに囚われていた。会いたかったよヴェルデ。」アレインは呼吸を荒くしながら、突然の告白をした。
「嘘よ...!そんなこと信じられるはずがないわ...」
ヴェルデはその陰謀を信じたくなかった。
「ここは危険だ。一年後に隣国の桜国で会おう。僕からの約束だ。」
「わたくしは、泣いているわけじゃないの…。」明らかにヴェルデの声は悲しみに満ちていた。
アレインは、一層決意を込めて言葉を続けた。
「僕は、ヴェルデや王様達に早く逃げてほしいと言っている!」
ヴェルデは深呼吸した後静かに言葉を紡ぐ。「アレイン。今わたくしが直面している状況も、あなたの置かれている状況も、まだ理解できていないけれど、ひとつだけはっきりしていることがあるの...。」彼女は穏やかな声で続けた。
「嘘をつくたびに本音がこぼれれてしまうのは、アレインが、心の底からわたくしたちの存在が大切だからに他ならないと思うの...!」その言葉には、ヴェルデのアレインへ対する強い理解が感じられる。
「わたくし、明日国王に話してみるわ...。」
翌日、ヴェルデは国王のエルデンブルク・エルディアン2世に全てを告げることを決める。この夜、城の外から聞こえる爆発音が、緊張を高めていた。
事態の深刻さを知った国王は、しばらくの沈黙を重ねた後、険しい表情で語り出す。
「愛しき娘よ...。共に成長してきたこの日々は、私にとって何物にも代えがたい、貴重な記憶だ。人は誰しも尊い人との別れを経験する。ヴェルデ...。彼と逃げるのだ。私は、エルデンブルクの国の王として、最後まで民を見守る責務がある。」
国王の表情には、絶望的な状況下でも揺るぎない高い信念が宿っていた。
「お父様...!わたくし、涙が止まらないわ」
「確かに、ヴェルデ姫は幼い頃に生まれるはずのメルデという妹と母を病で亡くし、ただひとりの父である国王エルディアン2世に育てられてきた。彼女にとって、父の言葉は受け入れがたい現実かもしれませんね。」国王の側近はそう行った。その間にも、炎が強くなる王宮。そして、ひとつのシャンデリアが墜落する。
「きゃぁっ...!」響き渡るヴェルデの悲鳴。
その瞬間、全員が爆風によって強く地面に叩きつけられる。
振り返ると、すでに国王達のいた方向は残虐な炎ほ海に包まれていた。彼女は眠りにつくように倒れる。ヴェルデにとって、この時代の最期となった...。
しかし、ヴェルデの運命はここで終わりをみせなかった。彼女の命は50年の
〈第二話につづく〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます