待機所、あるいは亡者でいっぱいの冥界

自動微細機械式全般性生命機関、通称『天使』。人類史上最大の発明であるこのナノマシンは、ユーザーが死ぬその瞬間までの思考、人格、記憶を全てデータ化し、バックアップする。ユーザーの人格データは死後速やかに予備のクローン体にインストールされ、最短で一昼夜での蘇生を可能とした。
この技術によって、人類は死を克服したと言われていた。そんな時代。

大事故に巻き込まれて死亡したゴードンは、いつものように『天使』が起動し、自分を生き返らせてくれるのを待っていた。
しかし、目の前に広がるのは病院の風景ではなく寒々しい荒野。そして鎌を持ち、黒いローブを着た、馴れ馴れしい『使者』。
「誠に残念なことですが、この度あなたがたはお亡くなりになりました」
『使者』はここが死後の世界だと語るが、ゴードンはそれを受け入れ…続きを読む