第9話 主さまの憂鬱 by椥

最近、俺の主になったひとは少し変わっていた。従えたわりに誰を叩きのめしてこい、とかいう荒事は自分で片付けてしまう。俺らにやらせることといえば家事やおつかい、医療器具の手入れぐらいだ。俺はそもそも暴力関連は苦手なので喜ばしいはずなのに…。「濡羽さまは何のために俺たちを従えたんですか?」「だってさ、ロンペルの差し金でしょ?失敗したらそれこそ悲惨だと思わない?」俺たちのため?このひとが何故そんなことを言うのかわからなかった。

前に茉仁荼さまが、仰ったこと。「濡羽ねえさんはきっと君たちが必要なものをくれるよ。」楼花という女のせいで、できなくなったはずのことが。彼女によってもたらされていた気がして。椥はひとり、歩き出す。

「あの四人?元気にしてるよ。」「それはよかった。」「言ってる場合かよ。茉仁荼のせいでこんな目にあってるんだからさ。」「すみません。何はともあれよろしく頼むよ、姐さん。」「……わかった。」少女はため息をそっと吐く。

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闇医者少女が今日も強い 彗驊 @suika0817

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