本当の怪物は
煙が空高く昇っていく。雲ひとつない青空に竜のごとく昇る煙。
空を見上げる喪服の女性がそこにいた。
「終わったわ…」
『世田谷区で発生した松永大輔さん殺害における…』
昨夜ニュースで見た出来事だ。これも雅樹が殺ったことだと
「
そう、
雅樹が全てやりとげてくれた。この後彼は、自ら命をたつだろう。
もうこの事を知っている人間は誰もいない。
―― 私は自由だ。
『おい、何とかしてくれ! 絶対に大丈夫だって、あんた言ったよな?』
『連絡してこない約束だったでしょ? お金は十分お渡ししたと思いますけど?』
『状況が変わったんだよ。もう俺しか残ってない。あんたのことを話して警察にっ!』
あの事故の実行部隊の男。名前は松永何とかって言ってた。お金に困ってたクズ。今さら雅樹に命を狙われ、連絡を寄越して来るなんて、何てちっちゃい男なの?
早く雅樹に行動してもらわなければならなかった。あのときと同じように雅樹の罪悪感に火をつければ、全てうまく進むと思った。
警察が来たのは事実だったけれど、それは被害者が
それでもあの言葉は、雅樹を焦らせるには効果的だった。早く殺らなければ捕まる。捕まれば復讐は完結しない。
案の定、雅樹は行動を早めた。
あの夜を思い出すと、
10年前、
だからあの日…、生まれたままの姿を雅樹に見せつけた。雅樹が断るかどうかは賭けに等しかったけれど、
――
―― だからね。雅樹だけは奪ってやったのよ。だって、
空が青く清々しい気分になる。
―― うらやましい?
「ふふ」
思わず笑いが込み上げてくる。
「サヨナラ。
青空に煙が昇る。
本物のMONSTERは……、ここにいる。
END
MONSTER ~哀しい怪物~ 桔梗 浬 @hareruya0126
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