堕ちていく時
見知らぬ街のビジネスホテル。その一室に俺たちは滑り込む。小さな部屋に粗末なベッド、気持ちばかりの机に小さなテレビがある小ぢんまりとした部屋だった。
ドアがしまると同時に、俺たちは激しくお互いを求めあった。まるで生きていることを確かめる様に。
10年前、俺は
そしてゆっくりと服を脱ぎ捨てていった。俺はその行為から目が離せず、駄目だと分かっていてもその場を離れることが出来なかった。
あの頃、俺は
それなのに…あの日の俺は目の前の誘惑に負け、妹の
相手の気持ちも考えず、ただ己れの押さえられない欲望のままに、
そして今夜も…。
「あっ…」
俺は
俺は呑気にレストランで
記憶が交錯する。なんだ? この違和感…。
「……っ…」
俺の目の前で
ゆっくりと耳元へ唇を這わすと、
「ま…雅樹…」
「
一瞬
「
俺をぎゅっと抱き締めた
「…うっ…」
頭の中が真っ白になる。白い光が目の前で弾けるような感覚。
俺たちの間で「愛してる」の言葉は不要だった。ただ快楽を求める自分勝手な行為。
俺は
海の中を漂うような脱力感と共に、俺は
「雅樹…」
「……っ」
知らないうちに俺は泣いていた。苦しくて、苦しくて…。人を殺める行為そのものへの罪悪感ではなく、空っぽな自分に、そして誰一人幸せに出来ない自分が許せなくて泣いた。
あの日と同じ後悔が俺を襲う。時間を戻し、やり直せるのならどんなにいいか。
今夜のことは想定外だ。
俺は今、
俺は自分に言い聞かせた。全ては俺が
冷たいシャワーが、あの日の記憶を甦らせる。
あの日俺は
追いかけてさえいたら、
あの時
そして、事故に遭った。店先を赤い車がもうスピードで走り去る。店内もざわつく程のスピードだった。
倒れた
だから俺はそのメッセージを削除した。
「すまない…。
一番許せないのは、俺だ。俺自身だ。
俺は犯罪者だ。誰にも許されるはずはない犯罪を犯してる。もう、止められない。無かったことには出来ないのだから。
「あと一人…」
俺は冷たいシャワーを頭から浴びる。俺の腐った想いを流すように、水は流れていく。
時間がない…。警察が全てを明るみにする前に、全てを終わらせる。
鏡に映った自分の顔は、見知らぬ男の顔に見えた。
俺はMONSTERだ。そう自分に言い聞かせる。
俺は眠っている
「すまなかった…。
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