MONSTER ~哀しい怪物~
桔梗 浬
終わりの予感
「今日ね。私のところに警察が来たの」
静かな機械音しかしない病室で、
俺の愛した
「そっか。意外と早かったな」
俺はいたたまれなくなり、眠っている
俺たちは、目を覚ますことのない
「
「雅樹…」
「お前は何も知らない。何も聞いていない。それでいい」
「でも…」
俺たちは1年に一度
「もう10年か」
「うん…」
俺たちは
そう…、10年。
あの日俺は
車に弾き飛ばされた
「赤い車…」
「えっ?」
「いや、何でもない」
赤い車。そこには男女4人が乗っていた。警察は
加害者のやつらは人生を謳歌し、
だから…。
「また来る。
俺は
俺の
あの日から、俺の時間は止まっている。
あの日、俺は
あの時、俺が迎えにいってさえいれば…。悔やんでも悔やみきれない。
そうやって、俺はそんな俺を許せないでいる。今もずっと…。
だから俺は俺のために復讐を誓った。自己満足、それでいい。そうしないと俺は生きる価値もないんだ。
加害者の4人を見つけるまで8年もかかってしまったけど。
それももうすぐ終わる。
俺たちは雨の中、滑り込むようにして入った定食屋で食事をとった。はたから見たら、恋人同士に見えただろう。
『藤沢市で発見された男性の身元が判明しました。地元の建設会社に勤める高畠勇次さん35歳は、胸などを…』
店内のテレビから抑揚のないアナウンサーが事件を読み上げている。
『現場付近にいた男が…』
もう殺害された被害者たちの関係も警察はみぬいているだろう。
「行こう」
ご馳走さまと店の人に告げ、俺はスマホを片手に席を立った。
「もう帰れよ。俺に構わないでくれ」
「何処に行くの? 部屋には警察がいるかもしれないよ」
前を歩く俺の腕をぎゅっと掴み、
「好きにしろ」
俺は
あと一人。
迷いはない。
「もうやめていいよ。雅樹…」
俺を呼ぶ
「
そんなはずはない。
俺は目に入った雨をぬぐい、もう一度声の主を探す。そこには雨に濡れ小さく震えながら俺を見つめる
「
「もういいよ。もう終わりにしようよ」
「…」
あまりにも目の前にいる
「
「私……私じゃダメなの?……」
10年前と同じ言葉が、また繰り返される。
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