芸術も青春も、そして障害も病気も、すべて飲み込んで

イジメを契機として発症した統合失調症、学校になじめないきっかけであった発達障害。
主人公の蒼は二つのハンディキャップに悩みながらも、その悩みこそが芸術を生み出す原動力となることを知る。そして、やがてその芸術によって生かされ、自身の存在価値を知ることに。

作者自身がつらい過去に向き合い、前向きさを得るような展開に、読者も勇気を貰えるだろう。人が生きることは決して美しくも心地よくもない。だが、それこそが強烈な芸術を生むのである。
ひたむきに、真摯に、それでいて迷いながらも芸術に向き合う蒼の姿から、本当の芸術とは何か、芸術家になるとはどういうことなのかを模索する青春小説の快作。