「俺」は友人の間土発太(まど はった)から、突如「殴ってくれ」と頼まれた。切羽詰まった様子の間土だが、さすがに殴るのは躊躇する。そんな中、現れたのは町一番の可憐な少女・有栖。彼女の発言に、間土が殴られたい理由があるらしいのだが……。
テンポよく進むコメディタッチの描写が小気味良い。そして、明かされる謎もまた不条理なものだが、なぜか爽快感を抱くことだろう。
間土、有栖、それに「俺」のキャラクターがしっかりとした個性を持っており、彼らがそれぞれの思惑で動いているのを実感させ、そして、その結末もまた爽やかかつ不条理、それでいて納得感のあるものである。
この物語こそ、「不思議の国のアリス」の後継作にして、バレンタインディに語り継ぐべき、不条理恋愛コメディの決定版となった。