とりあえず奥へ
数分後。
二十機近くあった迎撃用ドローンは、一機残らず撃墜された。
その間、ヤミが敵から発見された回数はゼロ。
完全ステルスによる一方的な蹂躙だった。
「すげえ……一人で全部片付けちまったよ」
無論、ヤミの優れた狙撃技術があってのことだが、その陰にはミャーのサポートががあったのも大きい。
敵は空だけじゃなくて地上にもいるわけだからな。
ミャーの的確な遠隔指示が無かったら未発見で殲滅は出来てとしても、もう少し移動に時間がかかっていたと思う。
「——にしても、マップの情報量が増えた予め敵の居場所と向いてる方向が把握できんのはマジで助かるな」
「それな! どっちに進んでるかだけでも分かっていれば、それに合わせて罠も仕掛けやすいしね!」
加えて、俺らは逆に敵から奇襲されづらくもなるし、場合によっては無駄な戦闘を避けることも選択肢に入れられるようになる。
……まあ、基本は倒せる敵は全部倒す方針だから、昨日初めて未開領域に踏み込んだ時みたいに周りがよっぽど格上だらけかピンチでもない限りは、後者の選択はまず取らないけど。
オペレーターとやらの恩恵を実感していると、ヤミが瓦礫の隙間から姿を現した。
「あ、ヤミちゃん、おかえり〜。いつもながらナイス狙撃だったよー」
「お疲れ。凄かったぞ、マジで」
俺とミャーが声を掛ける傍ら、
「ね! 四連早撃ちスナイプとか激ヤバだったよね!」
「ああ、狙撃地点の移動を含めて本当に見事だった」
ゼネとティアが素直にヤミを賞賛する。
すると、ヤミの頬がほんのりと赤く染まった。
「……そんなに大したことじゃない。敵の動きが遅かったのと、私のレベルでも一撃で落とせるくらいの強さでしかなかったってだけ」
「いや、止まってても相当むずいだろ。少なくとも俺はやれってと言われても無理だぞ。それはそうと、あのドローン……意外と弱かったんだな」
一応、この遺跡の攻略推奨レベルは30程度。
丁度ティアやゼネくらいのレベルくらいだ。
対してヤミの現在のレベルは17。
その程度のレベルだと、いくら他武器と比べて単発威力の高いスナイパーライフルで急所をぶち抜いたとしても、ワンパンはそう簡単な事ではないはず。
となれば少なくとも、前提として見た目以上にペラッペラの紙耐久なのかもしれない。
ちなみに互いに昨日から始めたにも関わらず、ヤミと俺らとでは大分レベルが離れてしまっているが、これに関してはヤミが低いと言うよりは、俺らが昨日一日だけで上げまくってたのだろう。
昨日の防衛任務でティアと二人だけでアホほどアンノウンぶっ倒しまくってたし、その後ゼネを加えた三人でなんか格上のオーバードも撃破したしで、客観的に見ても他のプレイヤーよりも獲得経験値はかなり多い部類に入るはずだ。
加えてティアは未開領域で魔晶を乱獲して、ゼネは俺らが参加する一つ前の防衛任務で単騎で暴れてたらしいからな。
それも相俟って、二人のレベルは俺よりも何レベか上だったりする。
……つか、なんで始めた初日でそんな蛮行やってんだよ。
知ってたけど、やっぱコイツら馬鹿じゃねえの?
「まあね〜。あのドローンは迎撃用だけど、どっちかというと敵を発見して、仲間にそれを伝えるっていうのがメインの役割だから。ヤミちゃんのレベルでもワンパン出来たのはそういうわけ」
それでもちゃんと急所を撃ち抜く必要はあるけどね。
にゃはは、と笑いながらミャーは続ける。
なんか今さらっとエグいこと言い放ったけど、一旦それはスルーするとして、
「なるほど、伝達と召集も兼ねてるってわけか。中々ダルそうな機能を備えてんな。じゃあ、先にヤミにドローンを全部潰させたのは……」
「敵の増援を防ぐ為だね。あのドローンを処理しておかないと、どんどん敵が集まって手に負えなくなるから」
「ふーん、なんかミツバチの巣を発見したスズメバチみたいだな」
確かアレもフェロモンだかで仲間を呼び寄せるらしいし。
ついでに外装が黄色と黒で色もなんか似てるし、マジでスズメバチモデル説ある?
いや、ねえな。
「——ま、いいや。これで後は一体一体潰していけば良いって事だろ。折角、ヤミがお膳立てしてくれたんだ。今度は俺らが蹴散らしてやろうぜ」
「ラジャー! あ、あとついでにゼネくんだってちゃんと強いんだぞーってところを二人に見せつけなきゃね!」
「……見せつける必要はない。戦ってれば自然と分かるはずだ。——誰が一番強いのかも含めて、な」
おーおー、随分とカッコいい発言しやがって。
お前のその地味にナチュラル強者ムーブすんの嫌いじゃないぜ。
「上等だ。じゃあ、誰が一番敵を倒せるか勝負しようぜ。勝ったら負けた奴らから一番レアなドロップアイテム貰うってことで」
「……言ったな。その言葉取り消すなよ」
「いいね! ゴールはどうする?」
「ミャーの言う隠しエリアで良いだろ。だから競争とはいえ、変に遠くまで単独行動すんじゃねえぞ」
釘を刺すと、何故かお前が言うな、みたいな視線が二人から返ってくる。
いやいや、俺は比較的まともな方だろ。
そう思うも、言ったところで白い目を向けられるだけな気がしたので、気を取り直して奥に進むことにした。
————————————
この遺跡に出現する機械系の敵は黄色と黒の色合いの個体が多いです。
警告色でカラーリングされている為、主人公の推測はそこまで外れてはなかったり。
Saga of The Unknown〜覇権ゲーのせいでガチってたゲームがサ終したから、ちょっと殴り込んでくる〜 蒼唯まる @Maruao
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Saga of The Unknown〜覇権ゲーのせいでガチってたゲームがサ終したから、ちょっと殴り込んでくる〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます