折り紙の月その7

そんなことを考えていると、携帯電話の安っぽいぶっきらぼうな電子音が鳴り響いた。


六時三十分のアラームの音である。出勤の時間だ。白と黒のモノクロのビックスクーターの後部座席に僕はまたがった。


中古で五万円で工場長に譲ってもらったスクーターだ。交差点で横転してから白い車体に灰色の擦り傷が焼き付いている。


畑野が気だるい様子で鍵を回し、鈍いエンジン音と共に車輪が地面を蹴り始めた。


僕も運転できるが大抵は畑野が運転手を務める。こだわりの強い男で、ブレーキの踏み方ひとつで文句をつけてくるので僕は嫌になってしまった。


車と違って触覚で風の力を感じられるから好きだ。


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魂をミッケ! 海野わたる @uminowataru

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