宇宙人のねらい【大人のみらいばなしシリーズ】

独白世人

宇宙人のねらい

 地球上から戦争が無くなる気配はない。

 人類は実に愚かだ。


 しかし今から百年後、宇宙人から送られてきた地球侵略宣言によって戦争は終焉を迎えた。宇宙人が住む場所を求めて地球を侵略しようとしている事実に、人類は底知れない恐怖に襲われることになるのだ。

 人間同士で争っている場合ではないと国境や人種、宗教の壁を越えて人類は結束した。交渉術に長けた人間が各国から徴収され、宇宙人と話し合いの場を設けた。

 その結果、宇宙人との武力による戦争を防ぐことができた。人類は自分達の居住に適していない土地を全て宇宙人に明け渡すことで、宇宙人の武力から逃れたのだ。


 以後、人間同士での争いが起きそうになると、宇宙人が新たな要求や問題を起こすようになった。

 その都度、人類は結束せざるをえなかった。


 いつまでたっても移住して来ない宇宙人を不思議に感じている者もいたが、来ないのならそれはそれで良いという者が圧倒的に多かった。


 とにかくこうして地球上から戦争がなくなったのだ。


 しかしこれには裏の話があった。

 全てが一人の男の仕業だったのである。

 地球上から戦争をなくす方法はないかと考えた結果、地球の侵略を目的とした宇宙人を作ることをザクリーノという男が思いついたのだ。

 彼は共通の敵を持つことでしか人間同士の争いはなくならないと考えた。


 今から100年後の世界でザクリーノはAIの第一人者だった。彼は今よりかなり進んだAIの技術を最大限に活かして架空の宇宙人を作った。そしてその人工知能を持った宇宙人に地球を征服するというミッションを与えたのだ。

 ザクリーノの創り出した宇宙人のリアリティーは素晴らしいものだった。人類が想像する宇宙人と未知の生命体が上手く融合していた。その姿に人間は、その宇宙人が本物であるということを疑わなかった。


 あらゆるデータを元にプログラミングされたAI宇宙人はいとも簡単に人間の思考を先回りした。

 その結果、いとも簡単にAI宇宙人は人間を降伏させた。


 ザクリーノの思惑通りに物事は進んだ。

 地球上から戦争がなくなったのだ。

 その理由を知るのはザクリーノのみだった。


 しかしそれも長くは続かなかった。

 ザクリーノの死後、全てが明らかになったのだ。

 宇宙人の存在が架空のものだと知った人類は再び戦争をするようになった。


 以後、再び人間同士の戦争がなくなることはなかった。地球上から戦争がなくなった数年間を人は“ザクリーノ時代”と名付けた。


 戦争を続けた人類は自ら生み出した核兵器によって滅びた。


 その後数百年をかけてザクリーノが生み出したAI宇宙人は独自の進化を遂げる。

 まさかそのAI宇宙人が全宇宙を支配することになろうとは。我々人間の知るところではない。

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