最終話

「はぁ、空気が旨い」「田舎ですから♪、田舎から空気の良さとか自然の良さ取ったら何にも残らないと思うの」



その答えに、ジト目になる和弥。


「俺達は、田舎の民なんですけど」「いいじゃない、満員電車にのらなくて済むし。勤め先近いし」「お前は、お前んちが職場だろうけど。俺は車で毎日約二時間だってーの」



そうでしたと、頭をこつんとやる真琴。



「手を放すなって、自転車だって車扱いなんだぞ」


「相変わらず、心配性ね」「心配性なの判ってんなら、俺の前だけでもちゃんとしてくれって」


ちなみに、真琴の自転車は結構チェーン付近からギシギシ音がしているが和弥のそれはチェーンオイル等細やかなメンテナンスが成されている為滑らかに回っている。


和弥は、ヘルメットをつけているが真琴はノーヘルだ。


「そのヘルメット変な形してない?」「あー、これは折りたためるヘルメットだからな」

「それ、ヘルメットとして機能するの?」「一応、鉄骨が頭に落ちてきても頭を守る程度の強度はあるぞ。それで、こう本みたいに畳めるから本棚にもいれておける感じかな」


「ずばり、欠点は?」「普通のヘルメットに輪をかけてダサい事、値段も安いから災害に備える意味ではいいかもだが普段使いには向いてない」


「普段から、それ使ってるわよね?」「俺は、実用主義なんだよ。ちゃんと頭が守れるもんならそれでおっけーだ」


「一緒にいる私もダサく見られるって」「イヤなら、距離あけてればいいだろ」



「それ、何の為に一緒にいくのよ」なんとも言えない顔で苦笑する。



湖について、柵を背に二人でそんな事を話していた。




二人でいつもくる、湖だ。子供の頃からずっと……。



何にもない、ただ気持ち大き目の池と子供の頃は思ってた。だけど、ちゃんとした湖の名前がついていて。



風が、頬を少し撫で。ダサいけども、ずっと、そのままの二人がいた。



(変わる事が、基本は正しい。でも、変わらないようにしていく事で叶う事もある)



「なぁ、真琴さ」「ん?どうしたの和弥改まってさ」



「この湖さ、ちっちゃくて汚くてさ。何にも変わらないよな」


ふっと、真琴が口元だけで笑った。



「だから、いいんじゃない。私はね、このまま年をとってもずっと変わらないでと願ってる。それが和弥の彼女でも奥さんでもただの友達でも変わらずずっと。私を背負って、雨にうたれて一緒にかえった。あの日の、和弥のままでいて欲しいって思ってる」




和弥も夕日が差し込む、そんな真琴の笑顔を見て。




「そっか……」と答え二人で田舎の空をみた。



子供の時と同じように、二人が手を繋いで。



「なし崩し的に始まったけど、私達は何にも変わらなかった。つまり、ずっと曖昧にしてた気持ちを伝えただけだったって事よ」


「そうか、そうだな。じゃあ、改めてこの湖の前で」


「ん?」


「俺達の関係の始まりは、俺の部屋じゃなくて。ここに、すべきだったかもな」


「どこで始まったってかまわないわよ、和弥はイロモノが好き。私も、それ判ってて好きになったんだし。裏切られたりする事に比べたら、ずれてる方がマシだもの」




思わず、顔を見合わせ。




「ここが、俺達のスタートだな……」

「ここから、私達の再スタートね……」



そういうと、二人で湖の柵の前で唇を重ねた。



ここからが、二人のRe'start。



<おしまい>

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Restart めいき~ @meikjy

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