青の世界と夢幻的な慰みと
- ★★★ Excellent!!!
週末、電車の一人旅の記憶です。JRの一日散歩きっぷ。旅の始まりは無人駅。
現役の駅構内に炭鉱遺産。水田一色の風景。澄み切った青空と、深緑の山を挟んで風にそよぐ青々とした稲。都会では見られない原風景に包まれる道程に旅情をかきたてられていく。
ありのままに綴られる旅のしおりは、とある印象的な夢を見るシーンも儚い彩として残している。ありふれた妄想も、海馬の底から浮き上がる幻姿として、いつまでも瞳に焼き付け、鼻粘膜を覆う心のフェミニーナ軟膏のように消えない残り香として、憩い続けてほしい。
そして時折抱いた雑念を払拭するかのように、目の醒めるような海と空が迎えるクライマックス。どこまでも青の描写が未来へと向かう心情にのせて、日々を生き抜く活力として、そんな力強い筆力のベクトルを私は感じる。日々の喧騒と時間とを忘れて、こんな一人旅に心ゆくまで、ゆられていたい。