週末

あるまん

出発

 とある週末、僕は朝4時半に目覚める。

 熱帯夜の寝苦しさに起きてしまった訳ではなく、その時間に目覚まし時計を合わせておいたのだ。


 JRの一日散歩きっぷという物がある。例年4月末から11月までの土日祝日限定で、大都市・S市近郊のフリーエリアの普通(快速)列車に丸1日定額で乗れるという物だ。

 僕の自宅のある町の駅からS市までの往復運賃程の料金で、僕の県のほぼ半分程の駅を廻る事が出来る大変格安な切符だ。

 車もなく収入も心許ない僕にとって、月に1度~3か月に2度程度小旅行が楽しめる為愛用させて戴いている。

 さて、今回はどこへ行こう……と思っていたが、昨年とある海辺の観光都市・O市に遊びに行った時、その途中にある駅が気になっていた。


 志路見駅……正確にはO市志路見だろう……一体何が気に入ったかというと、本当に海辺を列車が走るのだ。

 直線距離的に駅舎でも海まで50m、一番近い所では目測10mないのではないだろうか?

 堤防もあるとはいえストリート・ビューで見る限り海面から線路の高さまで目測2~3mほどしかない。満潮になって、更に台風などが来た場合どうなるのかと心配になるが、その駅自体何と明治初期から存在するらしい……その間に大災害に見舞われたという話も聞かないので余計な心配だったか。


 僕の町からこの駅へは100km近く離れているのだが、幸い僕の町は特急こそ止まらないが大都市の間にあり、その駅まで乗り換えなしの普通列車で行ける。

 しかし一日散歩きっぷを買うには途中にある駅で一度降りて切符を買わねばならない。僕の町かせめて隣街で売っていたら、もしくはネット・コンビニエンスストアで前売販売していたらもっと楽なのだが……両隣の有人駅でも販売していない……。

 なので午前の暑さが緩い時間に行きたくても、必然1本早い電車に乗らねばならない。幸いその途中降車駅から志路見駅までは1時間2本程度列車があるのだが。


 車がない、といったがつまりは最寄り駅まで歩かねばならない。自転車を使ってもいいが一度盗難にあってから怖くて駅に置いておきたくない。

 片道2km弱、若い人なら30分ほどで着くだろうが、肥満体型でアラフィフである僕の足では途中のベンチで休み休み行かねば辛く、始発前のこんな時間に起きる羽目となっている。

 軽度の精神病な自分にとって早起き、身支度、そして4~50分ほどの徒歩と挫ける要素満開だが、今迄行くと決めた日に行かなかった事はほぼない(流石に大雨とかは延期しているが)。

 朝とはいえ既に30度近い猛暑、ヒイヒイいいながら、帽子を目深に被りながら、公園のベンチで水の入ったペットボトルを飲みながら、ほぼ人のいない町内を歩く……朝だろうが昼だろうが50分近く歩いてもほぼ人とすれ違わない現状に寂しさを覚えながら僕は町の無人駅についた。

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