私の青春
@irichan
私の青春
高校一年生の春、私はあなたに一目惚れした。
「私の幼馴染かっこいいの。来年からこの高校に入学してくるんだって!」
私と仲がいい友達がそう言った。友達づくりと思って入学前からその人とSNSで繋がった。私はその人がどんな人か気になった。その人を入学式で見つけようと思ってその人の容姿、特徴を聞いた。「髪はマッシュのセンター分けでイケメンだからすぐわかるよ。」そう言われた。マッシュのセンター分けでイケメンなんてひとりじゃないはず。私は早くその人を探したかった。
高校入学式の当日、私はその人を探した。でも見つけることが出来なかった。人数も多いし、見つかるはずが無かった。その日は諦めて明日からの学校で探そうと思った。入学式が終わって家に帰っても私はその人のことがとても気になって仕方がなかった。「早く明日になって欲しい。」「早く学校に行きたい。」その日の夜はとても長く感じた。次の日になりわくわくドキドキで私は学校に行った。「今日こそ会えるかも!」そう希望を持ってバスを降りた。思った以上に初日からバタバタ忙しくてその人を探す暇なんて無かった。結局、見つけることができないまま一日が終わった。「あ。そういえばもうすぐ一年生だけの集会がある。今度こそ見つけるチャンス!」心の中で勝手に気持ちが高ぶった。その日が待ち遠しかった。
「やっときた!今日見つけることができる!」そして最初の集会。チャンスだ。そう思って気づいたら探していた。「もしかして、あの子?」そう思った。私が聞いた容姿に全部当てはまった。一番かっこよかった。それが大きな勘違いになるとも知らずに。大きな勘違いをしてることは後々になって知った。でも、私はすでにその時からあなたに一目惚れをしていたのかもしれない。「あの人のこともう一度見たい。同じ学校だからまた見かける日はすぐ来るだろう。」そう信じて私は毎日のように探した。
ある日の学校の帰り道、何気なくいつも通り友達と歩いて帰っていた。珍しく学食の前に誰か立っていた。後ろ姿だけで普通の人とは異なるオーラを感じた。そう思うのは多分私だけだろう。気づいたら目で追いながら歩いていた。校門ぎりぎりまで追った。すると振り向いてくれた。「あ。見つけた。」私はなんとも言えない感情になった。毎日私が探していた子にもう一度会えた。再会できた。私は嬉しかった。「もっと欲が出て話したい。」と思うようになった。「名前は知っているけど何科かは知らない。寮生なら普通科だろう。」勘で行動してみた。そして、普通科の友達に聞いた。「普通科で一番かっこいい子いない?その子の名前が知りたいんだけど。」「ああ!〇〇くんか、〇〇くんかな。」そう言われた。「え?2人もいるの?」思わずそう言ってしまった。2人いるなんて想像もしてなかった。1人目の人は、友達の幼馴染で私が探していたイケメンの〇〇だった。2人目の人は初めて聞く名前だった。「〇〇あの子やよ!」教えてくれた人は私が見つけた人と違っていた。友達が教えてくれた〇〇が本来私が探していたイケメンだった。そう、私が見つけたイケメンと友達の幼馴染のイケメンは全然違う人だった。それから一週間ぐらい経ってインスタを友達に聞いてフォローした。フォローボタンも押すだけなのにかなりの勇気がいった。誰かを見つけて自分からフォローするなんて初めてだった。「フォロー返してくれるわけ無いよね。」そう思っていた。次の日の朝になって通知見たら、フォロー返してくれていた。とても嬉しかった。繋がれて嬉しい感情と話したいという感情が交互に込み上げてきてある意味複雑だった。それが勘違いから始まる恋で、私の高校生活最大の恋愛の始まりだった。
5月28日だった。話したくてだめ元でストーリーで一言した。いっときたって閲覧者見たら押してくれていた。嬉しくて舞い上がった。すぐDMした。「はじめまして」の一言を送るだけでも今までにないくらい緊張した。一時経って返信が来た。通知が来るたびに舞い上がった。「なんて返そうか、なにを質問しようかな。」わくわくした時間だった。「顔見たことある!」って言われたときはほんとに嬉しかった。一時して会話が終わった。楽しい時間だった。
その時期、学校はちょうど高校総体期間だった。移動教室で普通科の前を通った。初めて目を合わせてくれて、初めて私の顔を知ってもらえた。知ってくれるってこんなに嬉しいことなんだ。って思った。学校が終わり、勇気を出してDMした。「午前中のなに!笑」話したい感情が込み上げてきて送った文章はぎこちなかった。そしたら「あ、会ったよね」やっぱり私って気づいてくれていた。そこからなんとかして会話を続けようと思ってたくさん質問した。相手もたくさん答えてくれて質問してくれた。「電話しない?」土曜日になって電話に誘ってくれた。そのおかげでLINEも繋がれた。電話がかかってきたときは心臓が破裂するかと思った。嬉しさよりも緊張のほうが大きかった。初めて話した電話越しの声は今でも忘れることができない。緊張で何を話したかも覚えてない。でも楽しかったことだけは覚えている。それから毎日LINEをした。2日に1回は電話もした。電話を繋いで気づいたら長時間話していたっていうことがほとんどだった。毎回の電話も全然苦じゃなくてむしろ楽しかった。毎日幸せでドキドキが止まらなかった。
ある日の夜、「気になっている。」て言われた。嬉しかった。でも私は恥ずかしがって素直に「私も。」なんて言えなかった。いま思えばこれがいけなかったんだろうなって思った。毎日毎日あの人に押されていつの間にか気になっている以上の好きに変わっていた。優しくてかっこよくてあの人のなにもかもが完璧だった。
移動教室の帰り道、普通科の教室の前を通った。「おいっ!」声にびっくりして私は思わず振り向いた。まさかのあの人が私に声をかけてくれた。私は応答するように手を振った。普通科の他のクラスメイトは「キャーキャー」と言って盛り上がっていた。そのほんの少しの時間はずっと、これからも忘れることはできないと思う。その日の昼休み、「少し会って話さない?」ってLINEが来た。学校の図書館で待ち合わせしてそこで初めて会った。距離が近かった。何気なく通っていた図書館もその人といるとキラキラした。10分ぐらいしか会って話せなかった。それでも4、5回は会い続けた。それが私の唯一の学校に行く楽しみだった。「このままこういう時間が続けばいいのに。」そう思っていた。電話でこれからのことについて真剣な話をした日があった。「部活が忙しいからあんまり遊んだりできないかも。」そう言われた。「ああ、遠回しに付き合えないってことだよね。脈なしだよね。私じゃだめだよね。」そう私は感じ取った。4回目、また図書館で会った。その時はまだコロナ禍でずっとマスクつけていてお互いの本当の顔なんて見たことなかった。「マスク外してよー。付き合ってからマスク外すより今外してたほうがいいでしょ?」そう言われた。私は戸惑った。恥ずかしいというよりも意識して見られるというのがとても嫌だった。自信が無いわけでもない、外しても良かった。でも結局、私は外せなかった。そして、帰ろうとすると手を引っ張られ、「俺、今日告ろうと思ったのに。」そう言われた。告白しようとしてくれてたことは嬉しかった。だけど、「顔が自分の好みと異なっていたら告る気なんてなかったってことだよね。」私はそう捉えてしまった。その日の夜電話で、「2人で話せる場所を見つけたんだ。」そう言われ、教えてもらった場所は屋上に続く階段の最上階だった。私は次の日の朝その階段に登っていって2人で会って話した。その場所は狭くて、2人の距離も近かった。でも私は昨日のこともあり、なかなか素直に楽しめなかった。心の片隅がずっと憂鬱で素っ気ない態度を取ってしまった。それが2人で会える最後の日になることも知らずに。その日につけて褒められたCHANELの香水はその日のことを思い出してしまって今でもつけられない。もうすぐ体育祭だ。「写真撮ろう。」初めて誰かを写真に誘った。異性と写真なんて友達以外撮ったことなかった。ましてや好きな人。楽しみで仕方がなかった。でも、誘った日以来LINEが来なくなった。「自分からLINEしなくてもいつも通り夜になったら来るだろう。」そう思って余裕があった。でも、LINEはなかなか来なかった。待っても待っても来ることなんてなかった。「私なんかしたっけ。」私はずっともやもやしていた。そして、体育祭の前日まで結局あの人からLINEが来ることはなかった。
体育祭当日、あの人に少しでも可愛く見られたくて早起きして髪の毛セットしたりした。早く会いたくて、見てもらいたかった。いつもは目があったら「ニコッ」ってしてくれてたのに、その日は目があってもなんか素っ気なく感じた。思った以上に体育祭が楽しくてあっという間に体育祭の終わりが近づいてた。あの人と写真を撮る時間なんて全然無かった。結局写真は撮れなかった。「またいつか撮る機会はあるだろう。」私は勝手にそう思っていた。体育祭の夜、1件のLINEの通知が来た。嫌な予感がした。「電話しよう」私はする気になれなかった。よっぽど深刻な話なんだろうな。一旦出てみた。明らかに声がいつもの声じゃなかった。話を聞いてみると、私とLINEしていなかった間に他の女の子と話してたらしい。その女の子と電話したことを謝られた。相手は私の知っている先輩だった。まさかだった。なんともいえない感情になった。でもあの人は、「私の方にある気持ちのほうが強いから安心して。」そう言われた。でも安心なんてできない。私は、「キープされるのが嫌で、先輩と話すなら私とは話さないで。話す人をどっちかにして。」思わず私は強い口調でそう言ってしまった。「じゃあ俺に考える時間をちょうだい。」そう言われた。それからあっけなくあの人とのLINEは終わった。毎日のようにしてたLINEも、電話もなくなった。私は寂しかった。でも、私は絶対あの人は私のことを選んでくれるという自信だけはあった。答えを待つ時間は思った以上に長かった。
次の日、携帯をみたら1件のLINEの通知が入っていた。「決まったよ。」バスの中で見た返信は今でも鮮明に覚えている。「よし。絶対私。」どこからきた自信かはわからないけど期待はしてた。返信は。まさかの「先輩」だった。「え。私じゃないの。」そう思った。終わった。私の恋。今にもバスの中で泣きそうになった。でも、「泣いてはいけない。」そう思って涙を必死に我慢した。次に来たLINEのメッセージは長文だった。私に対するあの人の今までの気持ちと感情が書かれてあった。夜になるにつれてだんだん私の目から涙が溢れてきた。その時はちょうどテスト期間だった。でもテスト勉強どころじゃなかった。テキストを開く度に涙が落ちる。あの人から送られてきた長文を見返すたびに涙が目を覆う。「私はもう諦めよう。」そう思って私も今までの気持ちをすべて長文にして返信した。「いい加減諦めよう、もう終わった恋だ、私は選ばれなかったんだ。」と四六時中自分に言い聞かせた。でも、私は諦めきれなかった。次の日になってもう1回、自分の気持ちを最後の機会だと思って長文にして伝えた。「もう一度考えてほしい。」その言葉を何回送ったことか。一時して「もう1回真剣に考えてみる。」そう返信が来た。「まだチャンスが私にも残っている。」ちょっと期待してしまった。ほんの少しの希望を持ってもう1回返信を待ってみることにした。2回目は考えている期間が長かった。「そろそろ来るかな。まだかな。」毎日毎日私はあの人からの返信を待った。でも、通知が来ることはなかった。
あれから一週間が経った。あの人からの返信を待っている一週間は気が気じゃなかった。ある日の夜、携帯を見ていたらLINEの通知が来た。2回目もやっぱり同じ返信で「決まったよ。」だった。2回目はあっさりと先輩の名前を言われた。「やっぱそうだよね。私と話していない間も先輩とは話しているんだもんね、先輩のほうが有利に立っている。」そうやっていい風に自分に言い聞かせるしかなかった。そうじゃないと私のメンタルが終わりそうだった。私はこの現状から逃げたかった。朝になってベッドから起きた瞬間昨夜のことを思い出して辛くて涙が止まらなかった。学校に登校しても毎時間泣いた。朝から帰りのホームまでずっと泣いた。当たり前だった日々は当たり前じゃなかった。今更になって気付かされた。だんだん学校に行く楽しみが減っていった。その2週間後、あの人から1件のLINEの通知が来た。「これって裏垢?」そういうLINEだった。あの人がどうやって私のインスタの裏垢を見つけたのかはわからない。でも送られてきた写真は私のインスタの裏垢だった。あの人から「裏垢繋がろう。」と言われ、「え?もう1回気持ちを伝えるチャンスが来た?!」私は勝手に期待して勝手にそう思った。「あの人ともう1回話せる。」現実じゃなくてこの現状が夢かと思った。即あの人の裏垢をフォローした。すぐ承認してくれた。投稿を見た。そこには先輩と仲良く写っている写真が投稿されていた。思わずLINEで「先輩と付き合った?」私は我慢できなくてそう聞いてしまった。返信は「うん」の2文字だった。辛かった。言葉に言い表せないくらい辛かった。私は、「お幸せに。」その4文字の言葉しか言えなかった。その言葉を送るのにどれだけ辛かったか。もちろん心の奥深くではそんな言葉を思っているわけがない。「好きな人の幸せを願うのが自分の幸せ。」というけれど私は素直に応援なんて上辺だけであって心から正直に祝うことが出来なかった。付き合っている彼女との更新されるストーリーも見るたびに切なくなって、辛くなって、涙が溢れてきた。「本当はあなたの隣は私だったのに。」そんなことを毎日毎日欠かさず思った。あの人と会った思い出の詰まった図書館も、最上階の階段も。今でもその場所を通るたび、見るたびあの人との思い出を思い出して涙が出てくる。あの人と繋がっていた裏垢も見るのがだんだん辛くなってきてフォローを外した。LINEも友達から消した。「大丈夫。私はあの人がいなくてもちゃんと立ち直れる。時間が絶対解決してくれる。」そうやって毎日のように自分に言い聞かせた。でも、やっぱり忘れられなくて球技大会の日もかっこよすぎてついつい動画を撮ってしまった。「いつかあの人に送れる時が来たらいいな。」そう思って撮った動画をアルバムに入れた。
ふと気づいたらあんな日々から半年が経っていた。まだ私は半年経っても忘れることができてない。その半年間も毎日1回は必ずその人のことを思い出した。ある日、友達から「そういえば、あの2人って別れたらしいよ。」そう友達から聞いたときは驚きと嬉しさでなんとも言えない感情になった。「復縁は絶対しないってきいたよ。」そう言われたから思い切って私からあの人に連絡してみた。「友達から別れたって聞いたけど本当に別れたの?」そうやってメッセージを送った。返信はまさかの「復縁したよ。それもさっき。」そう言われた。たくさん期待した分、どん底に落ちた気分だった。「やっぱり聞かなければ良かった。」自分が取った行動を何度も後悔した。「もう終わった恋なんだから切り替えよう。」言葉では簡単に、何度でも言うことができた。でも自分の気持ちが現状になかなか追いつかない。どこか遠くに、あの人がいない世界に逃げたかった。あの人の記憶を私の頭から消したかった。
気づいたらもう3学期だ。未だにあの人のことを吹っ切れることなくずっと想い続けていた。一年生の一年間の思い出ムービーを作ってインスタに投稿した。あの人はいいねを押してくれた。私は思わず自分の投稿を2度見した。ラストチャンスで裏垢をフォローした。返ってきた。少しでもまた近づくことが出来たとおもって私は嬉しかった。付き合っていた彼女の投稿はすべて消されていた。もしかして。私は期待した。でも、前みたいに期待したくないから何も聞くことが出来なかった。とっても長い一年だった。
年が明けて1月、私は気になる人が出来た。あの人のことを吹っ切ることができる最高の機会。私はそう思った。その人と毎日連絡を取り、話し始めるようになった。でも、なんか違った。心のどこかにまだあの人に対して未練があるから。自分が一番わかっていた。それから約2ヶ月間ぐらい話した。だんだん関わっていて楽しいと思えるようになった。これならあの人のことを吹っ切ることができると思った。でもまだ私の心のどこかにあの人が残っている気がした。あの人への未練を断ち切らないと心の底から今の気になる人のことを好きになんてなれなかった。私はいつもそう。あの人に対する未練のせいでなかなか次の恋愛に進むことができなかった。引きずってしまって毎回新しい恋愛はうまくいかない。どこかでまだあの人のことを思い出してしまう。結局、気になっている人とはうまくいかなかった。「ああ。やっぱりあの人じゃないとだめなのか。これは好きじゃなくて依存してるんだ。」って。心の中で静かに悟った。
1年生の春休み。友達とふざけて匂わせストーリーを投稿した。数分後、まさかのあの人が私のストーリーに反応してくれた。思わず携帯の通知を2度見した。「彼氏?」私は驚いた。なんて返信しようか。素直に否定の返信を送信すればいいのになぜか緊張してしまった。そこから何通かやり取りした。「最近恋愛しよると?」って。今の私に恋愛なんかできるわけがない。未だにあの人のことを吹っ切ることができてない。私のありのままの気持ちを伝えた。私は「次の恋愛したいけど引きずっているの。」そう返信した。何回も謝られた。私は複雑だった。私は思い切って聞いた。「彼女と別れたの?」って。付き合っていても別れていてもあの人ととにかく話せることだけで嬉しかった。数分後「別れたよ。」そう返信が来た。別れたことに対する驚きとまた話せる嬉しさで感情が複雑だった。その日の夜中電話で話した。電話をするのはいつぶりだろう。今までの感情がすべて溢れてきて泣きそうになった。あの人の電話越しの声は今でも変わらなかった。初めて電話したときと何一つ変わっていなかった。私は今までの気持ちをすべて本人に伝えることができた。夜通したくさん話した。球技大会の日の私が撮った動画も遅くなったけど送ることができた。辛かった9ヶ月間のこともすべて吐き出した。この気持ちはずっと本人に伝えられる日なんて来ること無いと思ってた。長電話だった。久しぶりすぎて話したいこともたくさんあって開いた口が閉じなかった。そのまま寝落ちもした。幸せな時間だった。朝目覚めても電話を切りたくなかった。いや。切れなかった。この時間がずっと、毎日のように続いてほしかった。それからまた毎日話すようになった。すべてが夢のようだった。
2年生の始業式。あの人のことを体育館で探した。すぐ見つけた。やっぱり一番かっこよかった。学校帰りの「部活頑張ってね」を送ることだけでも幸せだった。幸せな時間のまま2年生をスタートすることができた。学校で探す時間、廊下ですれ違った時、毎日が楽しくて楽しくて仕方がなかった。でも、毎日話すうちにだんだん当たり前。って思えてきてドキドキすることもなく、なんでも言える関係になった。「なんて返そうか。」返信を考える時間もなくなった。私は本当にあの人のことが好きなのかわからなくなった。「このまま友達でもいいかも。」次はそう思うようになった。電話中もだんだんあの人はゲームばっかりするようになった。でも私はあの人と付き合っていないからなにも言えなかった。言ったら束縛になって嫌われそうだったから。その人だけには嫌われたくなかった。そのときはそう思った。電話もだんだん話すことがなくなってきて楽しくなかった。「ただの暇つぶしの電話に私を使っているだけかな。振り回されてるのかも。」気づきたくなくてもそう感じるようになった。私は思い切って聞いた。「私のことまた好きになってくれる可能性ある?」って。「可能性はある。」そう言われた。嬉しかったはずなのになぜか素直に喜べなかった。「思わせぶりされてるのかも。でも信じたくなかった。思わせぶりでも、キープされててもそれでも繋がれるならそれでいい。」そう思った。もうすぐ歓迎遠足だった。「次こそ絶対写真撮ろう。」って約束した。
遠足当日、あの人は私の好きな髪型にして登校してくれた。相変わらず一番かっこよかった。私は人が多すぎてなかなかあの人に声をかけることができなかった。あの人と偶然会った時、驚きと恥ずかしさで話せなかった。だけど、「写真撮らんの?」そうやって私に声をかけてくれた。私は嬉しかった。2人だけの写真がやっと撮れた。あの人との思い出をまた増やすことができた。もうすぐ私の誕生日だ。9か月以上前に話した私の誕生日を覚えてくれていた。まさか覚えてくれているなんて思ってもいなかった。「もしかして祝ってくれるのかな。祝ってくれたら嬉しいな。」ちょっとだけ期待した。でも、私の誕生日を覚えてくれているだけで嬉しかった。
誕生日の前日。「誕生日明日だね。俺、会いに行くわ。」電話でそう言われた。冗談だと思って適当に返した。私の家は遠いし流石に会いに来れる距離じゃなかった。
誕生日の当日、私はいつもより遅くまで寝ていた。目が覚めて携帯の通知を見ると100件以上もLINEが来てた。通知を見たら「いつになったら起きるのー」だった。慌てて電話したら、「私の家の近くのコンビニまで来てるよ。」そう言われた。「ああ。ほんとに会いに来てくれた。昨日のLINEは冗談じゃ無かった。」私は驚きが隠せなかった。私はもっと早く起きてメイクして可愛く着飾りたかった。慌てていてゆっくり準備している暇なんて無かった。その日がプライベートで初めて会った日だった。その時に私の本当の顔を見られた。もし私のことを顔で決められるなら私から縁を切ろうと思った。でもあの人は顔で決めるような人じゃない。そう信じたかった。もちろん距離が近くてずっとドキドキだった。あの人は私のことを受け入れてくれた。そう思っていた。あっという間に帰る時間になった。もう気づいたら夕方だった。時間なんか気にもしていなかった。そのくらい一緒にいる時間が楽しかった。私は坂の下まで送った。「帰り際に絶対告られる。」そう期待していた。その期待は大きな間違いだった。ぎりぎりまで告白の言葉は言われることなく最後に言われた一言は「お誕生日おめでとう」それだけだった。「ああ。やっぱり顔か。」信じたくなくても顔で決められたような雰囲気だった。「やっぱり私じゃだめなんだ。」そう思った。私は今にも泣きそうだった。次の日からあの人のLINEの返信は遅くなり、いつの間にか電話もしなくなった。「私ってあの人に遊ばれてたんだ。」確信した。自分からLINEしなければあの人からメッセージが来ることなんて無い。私から電話も誘わなければしてくれない。それからずっとLINEはしなかった。いわゆる自然消滅状態だった。もうすぐあの人の誕生日だった。「お誕生日おめでとう」とだけメッセージを送った。あの人からの返信は「ありがとう」その一言だけだった。とても素っ気なかった。出会った頃と性格が随分変わってしまったな。そう思った。先輩と付き合う前の性格の方が断然良かった。先輩と付き合う前のあの人が一番大好きだった。あの人の誕生日の前日、あのひとはなぜか私の幼馴染と喧嘩した。私はどっちの味方もしたくなかった。いや。出来なかった。でもあの人への気持ちはだんだん薄れていってたから私は幼馴染の味方をした。それが選択ミスだった。でも何十年も一緒にいる幼馴染のことを味方するしか無かった。「私は間違ったことはしてない。当たり前のことをした。」と今でも思っている。あの人が言ってたことを幼馴染に伝えただけ。それが悪かったのかもしれない。私は、「なんで言ったの。」あの人から電話越しで責められた。私の言い分も聞かず一方的な八つ当たり。私は言いたいことの半分も言えなかった。もっと私の意見を聞いてくれても良かったのに。あっさりとあの人から私は縁を切られた。自分がなんで縁を切られる側なのか分からなくて納得できなかった。「最低なことをした人がなんで縁を切り出す側なの。」納得できなくて次は怒りが込み上げてきた。「女子だろうが関係なく平気で文句を言うんだ。それが裏の性格か。」少しだけ怒りを通り越して悲しくなった。最後の電話はあっさり終わった。それと同時に今までの関係もすべて終わった。まるではじめから何事も無かったかのように。
月日が経った。もちろん今はインスタも繋がってない、学科も違う、あの人の情報なんてもう私のもとには何も入ってこなかった。私が意識して校内を探さなければあの人は見つかることもない。学校内を歩けばいつかすれ違う。すれ違ったら思い出してしまう。そんなことを考えているせいか、私は極力教室からも出なくなった。廊下を歩くのは登下校、移動教室、お手洗いのみだった。窓の外も見なくなった。最初はあっさり縁を切られて辛くて、悲しくて今までの思い出にいつまでも浸って、たまらなかった。でも時間が解決してくれる。そう思って毎日を過ごした。でもいつの日かだんだんあの人のことを考える時間は減って悲しくもならなかった。絶対あの人より幸せになってやる。辛くて、悲しい思いをした分幸せになりたかった。
半年後。私の隣にはもう別の人がいる。あの人よりも何十倍、何億倍良い人だ。あの人みたいに私を傷つけるようなことはしない。今は本当に毎日が幸せでたまらない。私が付き合ったことはもうあの人の耳に入っただろうか。耳に入ったらどんな反応をするのだろうか。何気ない時間にそう考える。でも、そう考えるのは付き合いたてだけで今はもう思い出す時間がないぐらい楽しい。こんなに幸せになれるならもっとあの人のことを早く忘れたかった。それか、もっと早く今の人と出会いたかった。そう思ったりもするけど、今が幸せならそれでいい。私はそう思う。
私の高校一年生の一目惚れから始まった恋は一年三ヶ月で終止符を打った。すべて良い思い出として胸の奥深くに閉じ込める。私はそう決めた。
私の青春 @irichan
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