雪の乱

敷島もも

雪の乱

東の窓から、オレンジ色の朝日が差し込むと、雪耶の透けるように白い肌を、その陽光が照らした・・・雪耶は、ゆっくりとその身を起

こし、ベッドから這い出て、洗面所へ向かった。長い廊下を歩き、扉を開き、脱衣所と一緒になった洗面室へ入ると、シャワールームの

曇りガラスの扉の向こうで母の美百合が、シャワーを浴びる音がした。雪耶は手早く洗顔を済ませると、洗面室を出た・・・廊下を歩き

、ふと、母親の寝室を覗くと、ベッドのシーツが乱れていた。夕べ安西と褥を供にした様子が、ありありと窺がえた。雪耶は不快そうに

顔を歪め、歩く足を速めた・・・安西は代議士を務める身で美百合の庇護であった」。初老のふっさりしたシルバーヘアーのおとこだが

、モダンな色気と品性が醸し出し、同性である、雪耶も、端々に出る、安西の魅了するかのような表情に、いつとなく目をそらすことも

あった。そんな安西に心情を乱される度に雪耶は不快さを感じていた。学生服に着替え朝食を済ませ、玄関へ向かって歩いた。玄関へ飾

ってある、般若の面が、視界に入った。般若は、女性の憎しみと憎悪を表した顔であると、以前安西から聞かされたことを雪耶は、思い

出した。そして、雪耶は思った。母も般若になることがあるのだろうかと・・・

安西の結婚指輪を嵌めた、煙草を置く指が思い浮かんで不意に脳裏からかき消しそそくさと、靴を履き玄関の扉を開いた。まばゆい陽光

が、差し込み雪耶は目が眩んだ。白い手で陽光をかざし、雪耶は早足で門の外へ出た・・・微かに目元にかかる黒髪が陽光で茶色帯びて

見えた・・・雪耶は歩調を早め通学路を歩いた・・・ひたすら歩くとギリシャ風の彫刻が彫られた白い校門が見えた。

校門をくぐり、校舎と校門を挟むグランドを歩いた。8時45分。この時刻になるとグランドを歩く生徒の数もまばらだ。重い予鈴の音色

響いた。1時間目は世界史だった・・・ローマ帝国とパルティア帝国そして、ササン朝ペルシャ帝国との抗争。その繁栄の頂点に君臨し

た女王ゼノビアは、エジプトのクレオパトラに匹敵するほどの美女であったという。昔、幼いころ憧れであった母を、雪耶はゼノビアの

ように感じた。遠い昔の母の記憶を雪耶は、そっと胸の奥へしまって、シャープペンシルをノートに走らせた。そして、心の中で母の思

い出が、ハラハラと儚く散っていくような気がした・・・雪耶は瞳をそっと閉じノートに幾つもの涙のシミをつくった・・・



PМ7時

今夜、料亭月の園で、母と安西と3人で、雪耶は食事をする予定が決まっていた。学蘭から、濃紺のスーツに白のブラウスに着替えて、

淡い藤色の和服に痩身の身を包んだ、母と一緒に雪耶は安西の迎いを、リビングのソファーで待っていた。しばらくすると携帯が鳴り、

親子二人は玄関を出た。扉を開けると冷ややかな澄んだ夜の空気が二人を包んだ。門の外へ出ると、安西の秘書が運転する、黒のアウデ

ィーが止まっていた。車の窓が下がり・・・

「ああ雪耶くん」

安西がそう言った。

「こんばんは」

低い声でそう言って雪耶は安西に一礼した。

「今日は安西のおじさまと一緒に後ろの席にどう?」

母にそう言われ

「ええ」

そう言って雪耶は、安西の隣へ乗り込んだ。車が走り出した。紺の襟から覗く、雪のようなきめの細かい雪耶の首筋を月明かりが青白く

照らした。雪耶の瞳には外のネオンがありありと映っていた。そして隣に座る紳士からビターで危なげな色香が伝わってきて、背筋に、

ゾクリと電流が走る気がし思わず、雪耶は視線を窓の外へ向けた。

そして、雪耶の白くて滑らかな手に、安西がそっと手を重ねた・・・

そして、不意に5年前の忌まわしい記憶が脳裏に蘇った。

雪耶は、窓の外に視線を向けたまま、そっと涙を零した。

そして、薄い唇を噛みしめた・・

そう、5年前父を死に陥れた男が今自分の隣に座っている。そして頭の中に、ローマ軍に攻め落とされた女王ゼノビアを思い描いた。ハ

ラハラと雪耶の白い頬を涙がつたった。

そして、安西のその手に涙が幾粒も落ちて濡らした。

PМ7時30分 料亭月の園

車から降りると、冷たい夜の空気が、3人を包み、おぼろげな月が夜空の闇のむこうの雲の影から姿をのぞかせていた・・・

3人の料亭の石板を歩く音が、夜風の音に紛れて静かに鳴った。

料亭の玄関で、雪耶は、黒の革靴を脱いで揃えた。

美百合の薄紫の裾から微かに覗く白い足袋が、漆拭きの廊下を歩く音が微かにした。

料亭の女将が、安西達を奥の間まで招いた。

予約時間ピッタリに3人は訪れた。奥の間のテーブルには、すでに料理が並んでおり炭火が焚かれていた。

安西がテーブルの向こうへゆったり座ると、その向かい側の座布団の上に。美百合と雪耶が、正座して座った。

「ごゆっくりと」

そう残して女将はピシャリと襖を締め切った。

しばらくして,3人は料理に箸を伸ばした。

「3人みずいらずで食事をするのはここしばらくご無沙汰だったな」

「ええ」

そう言って美百合は安西に微かに淡い笑みを向けて、長い睫毛を伏し目がちにし、椿の透かし模様の施された白いハンカチで、そっと紅

を押さえた。母のその仕草に視線をやってから雪耶は、桜色の自らの唇をゆっくりと舐め、白い指を湯呑へ伸ばした。

「雪耶、勉強の方はどうだね?」

安西にそう聞かれ。

「ええ。順調です。おじさま」

そう言って、雪耶は車の中で安西が自分の手に重ねてきた手を思い出した・・・雪耶は安西の湯呑を持つ手を見つめ、不意に視線をそこ

からそらした。母と安西の淫扉な間柄が、一瞬頭の中をよぎり」、雪耶はふてくされたように、視線をテーブルの端へ落した。

その夜の帰り、車に揺られながら、雪耶は深夜街の景色を見た。チラチラ雨が降り出して、車の窓の水滴が散乱した。雨脚がしだいに強

まって、降りしきる雨が、車の窓を叩きつけた。車を降りる頃雨は上がっていた・・・にわか雨だったらしい。

「雪耶先に家に帰ってて」

母がそう言った。

雪耶が、のらりくらりと車を降りて歩いた。

後ろで安西と母の笑って話す声がした。

玄関先で、ふと車の方を振り向くと。安西と母が口づけを交わしていた・・・

雪耶は、視線を泳がせてから部屋へ入った。階段を上がり自室へ戻って、黒い総革の椅子にゆっくりと腰を下ろした。机の向かい側に面

する、窓の外の夕闇をしばらく、ぼんやりと雪耶は眺めていた。静かな空気の中で、時計の針の音だけが鳴っていた。雪耶はふと立ち上

がってシャワールームへ向かった。


  ―― ジャ――― ――


シャワーから勢いよくお湯のしぶきが噴出した。

雪耶の黒髪から、泡雪のような素肌へ水滴が流れ落ちていった。天窓から半月が見守っていた。白い胸もとには、ネイビーブルーのサフ

ァイアの小ぶりのペンダントが、水滴で光っていた。雪耶は、深海を思わせるネイビーブルーが好きだった。深海を彷徨う鮫を。魚類の

中で、ただ一つだけ交尾を行う魚。海底で頭を打ち付け、メスの体にかぶりつく、あの鮫の交尾を見て、雪耶は深く感動を覚えた。



 翌日 昼休み  ――


雪耶は校舎の屋上で、ビルの立ち並ぶ街並みを眺めていた。

5年前の記憶を思い起こした・・・

学校に、連絡が入り、慌ただしい病院の廊下でスリッパの音がして病室へ入ると、父、神野耕造が、ベッドに横たわっていた。息を切ら

せて雪耶は歩み寄った・・・

『自殺です』


『神野耕造、贈収賄容疑で責任取って辞任いたします』

テレビの画面の向こうで、フラッシュがたかれる中、秘書が謝罪している光景が、記憶の中にありありと蘇った。

校舎の下を見下ろした。その時、

「神野」

そう名を呼ばれ,雪耶は現実に引き戻され振り返ると、担任の市川が立っていた。

「授業始まるぞ」

そう残して微笑んで、市川は扉を出て行った。雪耶は、涙を零してから、ゆっくりと歩き出した。



あれから、3か月の月日が経った。

屋敷の2階で、母が琴のレッスンを受けていた。この日1階の和室に、安西が居合わせていた。学生服を身に纏った雪耶が、粗茶を入れ

て、盆にのせ安西の居合わせる和室へ運んだ。2階の美百合のかき鳴らす琴が、その和室まで聞こえてきた・・・漆塗りのテーブルの上

に、盆を置いて、立とうとした時、安西は雪耶の白い手を引っ張った。雪耶はよろめき、安西の膝の上に、座った形で抱きかかえられた

。美百合の琴の音色が一層激しく鳴った。安西のコロンの香りが安西の鼓動と一緒に雪耶に伝って来た。一瞬、琴の音色がやんだ。雪耶

の視界に飛び込んできた、床の間の深紫色の胡蝶蘭が、視界の中で薄ぼんやりとにじんだ。琴の音色が響きだした。ひたと己をなくした

雪耶も白い肌の下に、野心と憎悪を漲らせた。そして、安西の手に雪耶は、己の白い手をそっと置いた。


5年前、あの父の自殺のあと、雪耶と美百合は世間から痛いほど叩かれた。そして、皮肉にも父を死に追いやった張本人の安西が見受け

になることで、雪耶と美百合は己の身が救われることになったのだ。


この夜、雪耶は自室でぼんやり座っていた。そして、そっと瞳を閉じた。そして、男たちに翻弄されながらも政権をぎゅうじたクレオパ

トラを頭の中にありありと思い描いた。



                    

                          *



塾の帰り、夜の車道は車が激しく行き交っていた。空は満天の星空が広がっていた。繁華街を出て、家路を歩いた。澄んだ空気がひんや

り心地よかった.犬の鳴き声が、遠くで聞こえた。雪耶は、歩速を早め、ひたすら足を速めた。街灯が見えてきた。歩速をなお早め、や

がて自宅屋敷へ、雪耶は辿り着いた。玄関を開くと、安西の靴が揃えてあった。いつか、安西に1階の和室で抱きかかえられた時の腕の

感覚を、雪耶は想い返した。笑い声が聞こえ安西が、背広を美百合に着せられながらリビングから姿を現した。

「おお、こんばんは、雪耶君」

安西が、そう言った。そしてこう続けた

「塾のかえり?」

「ええ」

「夕食は済ませたのかな?」

「いいえ」

雪耶がしばらく沈黙を保った後そう答えた

「じゃあ今晩ご飯食べに来なさい」

「え?」


安西の秘書が運転するアウディ―の後部座席に安西と一緒に雪耶は乗っていた。車は安西の本家と別に所有するマンションへ向かって走

っていた。雪耶の白いそのきめの細かい滑らかな手に、安西の手が乗せられた。



安西の所有するマンションのエレベーターに安西と雪耶は乗った。エレベーターが上昇するにつれガラス張りのエレベーターの向こう側

の闇にちりばめた宝石のような夜景がしだいに広がっていった。

エレベーターを降りた。

雪耶と安西の、マンションのワインレッドの絨毯の敷かれた廊下を歩く靴の音がした。

1034号室のドアを安西が開くと雪耶の背中にそっと手を置いた。玄関の向かい側に面した壁の前の台には、九谷焼の花瓶に。盛大な

花が生けられていた。木目柄の天然木のかべのせいで、その花は華美ではなく、清楚に感じさせられた。

二人は靴を脱ぎ玄関の廊下に上がり、8畳の和室の間入った。漆塗りのテーブルの上に料理と酒が用意してあり、そのテーブルの前に座

布団が敷かれ、床の間の青磁の花瓶には、たくさんの椿が大げさに感じさせられるほど盛大に生けられていた。かすかすの花が生けられ

手入れの行き届いているその部屋は、週2回女中が訪れて手入れを賄ていた。背広をハンガーに掛けながら、安西は雪耶に風呂へ入るよう

うに言った。檜武拭きの新木の香り立つ、脱衣所で、安西から手渡された紺の絣の浴衣を竹ひご組の籠へ入れ。その上に学生服を丁寧に

たたんで入れた。白い繊細な指で開襟シャツのボタンを外し雪耶は白いきめ細やかな肌を露わにした。バスルームの扉の曇りガラスは白

いサッシで縁取られていた。扉を開くと、純白の天然石の真ん中をくりぬいた高級感あふれるバスルームが広がっていた。香り高い細や

かな微粒子のホイップクリームのような石鹸の泡が泡雪のような雪耶の肌を洗った。、丹念に洗うと、シャワーのお湯で、絹のように滑

らかな雪耶の体から泡が滑るように流れ落ちていった。煙る湯気の中に浮かぶ白い体を雪耶は、バスタブの中にゆっくりと沈めた。水面

には、天窓から映る半月が浮かんでいた。


お湯を終えた後、雪耶は洗い上げた体を、生成りの毛足の長いフカフカしたタオルで拭い、先ほどかごにしまった紺色の絣の着物で、そ

の身を包んだ。廊下を静かに歩き、安西の待つ8畳の和室の間の襖を、雪耶はひき開いた。浴衣に着替えた安西は、モダンなスーツを着

こなすいつもと違った、けだる気な品性をまじえた色香を醸し出していた。

「失礼します」

そう言って雪耶はその向かい側へすわった。

「いただきます」

二人は、漆塗りのテーブルの上に並べられた、食材豊かな料理の品々にゆっくり箸をのばした。食材をくして丹念に作られた料理の数数

を雪耶は、じっくりと味わった。その料理の味はこの上なく申し分のないものだった。

完食した後、安西がこう言って、雪耶の盃に酒を注いだ。

「酒の経験は?」

「いえ」

安西が注ぐ透明の日本酒が、雪耶の盃をゆっくりと満たしていった。雪耶は、その盃に桜色の柔らかな唇をそっと付けた。初めて飲む酒

は、雪耶の喉をじんわり焼いた。

安西は、ゆっくりと座布団から立ち上がった。白い足袋と、畳の擦れる音がした。安西は雪耶の後ろに回り、雪耶の体を強く抱きしめた

。雪耶を抱く安西の強い腕が、焼けるように強く雪耶は感じた。・・・琴の聞こえる自宅の1階の和室で、安西に抱きかかえられた時の

ことを雪耶は想い返した・・・

酒で濡れた桜色の柔らかな雪耶の唇に、安西の指が振れた・・・安西が雪耶を抱き上げると、浴衣の間から、崩れた雪耶の白い足が零れ

た。

「あっ・・・」

そのまま雪耶は安西に抱きかかえられたまま、畳の上を引きずられていた。

襖を開けると、その向こう側の部屋には、布団が二つ敷かれてあった。雪耶は、布団の上に安西に押し倒された。

枕元にある、白い和紙で四方遮られた、オレンジ色の灯が、煌々と、雪耶の白い顔をてらした。安西が雪耶の額にかかる柔らかな黒髪を

優しく除けた。そして、雪耶の白い額に唇を押し当てた。雪耶の白い顔を両手で挟んで、桜色の雪耶の柔らかな唇を味わっていた。安西

の、ほろ苦いコロンの香りが雪耶の鼻孔を掠めていった。頬に添えられた安西の手が、雪耶の肩までおりてゆき、浴衣をはだけた。はだ

けられた浴衣から白い艶やかな肩が露わになった。浴衣の間から差し込まれた安西の手が、雪耶の白い腿を弄った・・・雪耶は白くて長

い足を悶えさせゆっくりと、瞳を閉じた。二人の絡み合う薄暗い影が障子にまるで散るように映し出された・・・雪耶の白い肌をオレン

ジ色の灯が照らした。

雪耶の桜色の唇の間から、安西の舌先が侵入していった。その舌が雪耶の歯列そをそっと撫でていった。雪耶は、思わず甘美なと息を鼻

孔から漏らした・・・安西の唇は、顎から首筋へ下りて行った。雪耶の白くて長い指が、安西のふっさりした、シルバーヘアの髪をかき

乱した・・・部屋の隅の床の間で、煌々と照るオレンジの灯の中に萌ゆる白い胡蝶蘭が咲き乱れていた。雪耶の白いきめ細やかな柔らか

な肌に、安西は、鬱血した、赤い跡を残した。そして、太腿を弄っていた安西の手は、雪耶の下着をはぎ取った。安西の唇は雪耶の柔ら

かな白い肌をゆっくりと這っていった。

甘美な色香にまみれながら、二人はをの空間に酔い浸っていた。十代の性で熟しきったその美しい少年の肌を安西はゆっくりと味わって

いった。静かに閉じた、雪耶の長い睫毛が美しい鼻梁の横に深い影を落とした・・・若い男のフェロモンと、安西のほろ苦いモダンな、

コロンの香りが、入り混え、辺りの空気の官能を、一層駆り立てた。そして、安西の雪耶に与える愛撫が、一層増していた案てた・・・

そしてそれを、口に含んで口の中で愛撫した・・・そして、右手は雪耶の艶やかな肩に添えられもう片方の手は雪耶の白い腰のあたりを

撫でまわした・・・雪耶は、そっと瞳を開き、滲む木目柄の天井を見つめ、そして再び瞳をゆっくりと閉じた…安西の唇が、雪耶の泡雪

のような素肌をゆっくりと滑り落ちてゆき、いきり立った欲望までたどり着いた・・・安西はそれを大きな手のひらに包みこんだ・・・

雪耶は鼻孔から妖しげなと息を漏らした・・・安西はその先端を口内へおさめた・・・雪耶は白くてもてあます長い脚を悶えるように動

かした。安西は雪耶の欲望を、きつく握り上下に愛撫した。安西の口内に収められた、果実のような欲望の先端から、透明の蜜が溢れ出

た。安西の舌はとめどなく溢れるその蜜を、舌で何度も舐めとった。煌々と照るオレンジ色の灯の中で雪耶の白い顔が苦し気に歪んだ。

安西に愛撫される度に、雪耶は意識が遠のくような感覚を覚えた。雪耶は、安西のふっさりしたシルバーヘアを白くて長い繊細な指でか

きまわした。安西の硬骨とした手が、雪耶の白い腿を弄った。雪耶は、安西の口内で精を吐き出した。安西は、ここに沸き起こり漲る愛

しさのあまり、雪耶の吐き出した白濁の蜜をすべて、飲み干した。雪耶は、恥辱で頬を赤らめた。安西は、雪耶の雪のように白い滑らか

な肢体へ身を重ね、雪耶の双丘の間に潜む、花蕾に指を触れた。そこは、快楽的な恥辱を伴った蜜で濡れていた。安西の猛る欲望が、そ

こを一気に貫いた。安西の筋肉のうねる逞しい背に、雪耶は爪を食い込ませ紅色の唇をかみしめた・・・安西は背に感じる甘い痛みにな

お欲情がこみ上げ、激しく雪耶を貫いた・・・雪耶は瞳を固く閉じた・・・閉じられた瞳の奥で激しい吹雪が渦巻いた・・・雪のように

白い肌が、みるみる桜色に染まる度に闇の向こうで、吹雪が一層激しく吹き乱れた。幾度も幾度も吹雪にあおられながら、狂気的な快楽

の中で、雪耶は安西と同時に果てた。根雪のような雪耶の肢体のうえに、安西は己の裸体を重ねた。二人は激しく乱れる息をしだいに和

らげていった・・・




                            *





翌日、学校が終え、放課後雪耶は公園のベンチに座って、噴水をぼんやりみつめていた・・・目の前の鳩の群れが飛び立っていった・・

・雪耶は、一人ポツリと取り残されたような境地に陥った・・・

5年前の記憶が蘇った・・・

父が自殺したあの日、病室へ駆けつけたとき、もう父の顔には布がかけてあった・・・あっけないものだとあの時雪耶は思った。

まわりで大人たちがバタバタと動き回って、一人雪耶はぼんやりしていた。何が何だかわからないまま葬式が終わった・・・

しばらくして、やっと父が死んだんだと実感した・・・

あの後、沸き起こった悔しさが今、雪耶の記憶の中で蘇った・・・

「くうか?」

   え?

顔を上げると、担任の市川が立っていた。

雪耶は差し出されたパンをゆっくり受け取った。

市川が、ゆっくり雪耶の横に腰を下ろした。

雪耶は、ゆっくりと、今受け取ったパンを食べだした。

「うまいか?」

噴水を見つめたまま市川がそう聞いた、

「ええ」

そう言って、雪耶はう頷いた。

再び舞い戻て来た鳩をしばらく見つめていた。

「人間、もっと楽に生きた方がいいぞ」

市川にそう言われ、

雪耶は、じっと目の前を歩く鳩を眺めていた。

「先生、言ってやれるのはそれぐらいだ、じゃあな」

そう言って市川はベンチを立って、後ろ向いたまま手を振ってベンチを後にした。雪耶は、目の前の鳩を見つめたまま、涙を静かに流し

た。白い顔を幾度も涙が伝っていった。


公園を出て歩道を歩いた・・・冷たい風が頬に当たった・・・しばらくするうちに、頬を伝う涙はしだいに乾いていった。




PМ7時30分


夕食を済ませ時計を机の右上に置いて、教科書を開けた・・・

3時間ほどたつと、勉強を切り上げて、雪耶はバスルームへ向かった・・・

シャワールームの曇りガラスの向こうで、シャワーの音がただなり続いていた。



                        

                       

                    *





そして2週間が経過した。

雪耶が、自室で本を読んでいると、隣の部屋から美百合の琴を、かき鳴らす音が聞こえた。

そして、ふとその音が止んだ。

それに気づくと、雪耶は読んでいた本を白い手で閉じて机の上へ置いた・・・

そして、そっと立ち上がり、美百合のいる部屋をそっと覗いた。

淡い藤色の着物で、柳腰のたおやかな身を包む美百合がゆったりとした仕草でことを片付けながら、こう口にした。

「明日、日本画の展覧会に一緒に行きましょう、雪耶」

雪耶は、久々に美百合にそう誘われて、何となく心の中に安堵が満ち溢れ、

「ええ」

そう言って、恭やかな笑みを顔に浮かべた。




AM10時

市バスに乗って、雪耶は美百合とともに、馴染みある古典画家の画廊を訪れた。

美百合は、椿の模様の入った淡いピンクの着物姿で、雪耶は、紺のスーツに白のカッターシャツ姿で。

館内へ足を進めると数々の絵画が、オレンジ色のタイトが照らされる白い壁に飾られてあった。静かな館内に靴の音だけが鳴り響いた。

雪耶は、桜の水墨画の前で、ふと足を止めた。

その絵が、妙に雪耶の心をひきつけた。

風情溢れる、その水墨画を雪耶は食い入るようにみつめた。

絵を鑑賞し終わた後、美百合と雪耶は、その画廊を後にした。道を歩きながら美百合は雪耶の襟もとに手をやった。

「もう一着ぐらい、スーツを新調しますか?」

「え?やった!」

そう言って雪耶は笑って美百合の腕につかまった。

今日はいつもにない、あどけない表情を雪耶は見せた。

そして二人はデパートへ足を運んだ。親子水入らずのショッピングは雪耶にとってとっても楽しいひと時だった。

そして、夜が更けて、遊び疲れた雪耶はタクシーの中で、美百合の肩にもたれて眠っていた。それは、まだあどけない優しい17歳の少年

の横顔だった。美百合はその顔を見つめた。雪耶の髪をそっと撫でててみた・・・そして、涙を零した。

「ごめんね雪耶」

美百合の頬をただ涙が濡らした。

夜の街が静かに輝いていた。




                         *



帰宅し、雪耶は自室へ戻り机の右上に、今日絵画展覧会で買った日本画の絵はがきを飾った。浮世を忘れて楽しんだ美百合とのひと時は

雪耶の心を溢れんばかりに充実させた。しばらく絵はがきを見つめてから、教科書を開き雪耶は机に向かった。





翌日の放課後―


授業を終え、雪耶は教室を出た、黒い合皮のナップザックを背負い大理石調の階段を下りた、玄関を出て、校舎と校門を挟むグランドを

早足で歩いた。白いギリシャ町の彫刻が施された校門をくぐると


  ―― パー パー ――


外車のクラクションの音が二回鳴った

雪耶がをちらに目をやると、安西の黒いアウディーが、止まっていた。

助手主席に雪耶を乗せた安西の車が滑らかに走り出した。そして、その車は安西のマンションへ向かった。しばらくすると、36階建て

の安西いのマンションが見えてきた。

マンションのオートロックを開き、安西の後に続いて、雪耶はマンションの中へ入っていった。エントランスをと売り抜け二人はエレベ

ーターに乗った。ガラス張りのエレベーターが上昇し、ガラスの向こうに、昼間の街並みの風景が広がっていった。この前は夜だったな

あと雪耶は何気なく思った。


  ―― ピンポン ――


エレベーターのドアが開いた。

エレベーターを降りると二人はエンジのいろの絨毯の敷かれた廊下を歩いた。1034号室。安西は部屋の前まで歩きカギを開いた。雪

耶は、安西に続き、玄関内へ足を踏み入れた。玄関の正面にはこの間と同じく、花瓶に花が、生けてあった。

この前はピンクの蘭と薔薇やかすみ草が生けられていたが、今日は、鮮やかな紅色の椿が盛大に生けられていた。雪耶は、漆拭きの廊下

に上がり、奥の間の和室に招かれた。そして、天然木の低いテーブルの向こう側の座布団に腰を下ろした。安西がいったん部屋を出て行

った。静かな部屋の中に、藺草の香りがほのかに漂った。床の間に掛けてある掛け軸に墨で荒っぽく描かれた書を雪耶は何気なく眺めて

いた。しばらくすると、襖が開き、安西が入ってきた。そして、高級和菓子店の抹茶の泡雪が、目の前のテーブルの上へ置かれた。

そして安西がこう言った。

「食べなざい」

「ええ、いただきます」

雪耶は木製のフォークで、泡雪を小さく切って、口へ運んだ。

雪耶の所作を慈しむように眺めた後、安西も九谷焼の皿の上の泡雪を口にした。それを食べ終わったあと、安西は、座布団から立ち上がった

った。そして、ゆっくり歩いて雪耶の後ろへ回り、雪耶をそっと抱きしめた。その時雪耶は、男に身を任せ政権をぎゅうじた、クレオパ

トラの肖像画を頭の中に思い描いた。安西の衣類から漂うモダ香水の香りが雪耶の心を覆いつくした。硬骨とした安西の指が雪耶の学生

服のボタンをそっと一つずつ外していった。雪耶は瞳を閉じ、白蛇、そう蛇神の中でも最も気高いといわれる白蛇を描くように立ち上る

いつか、美百合が焚いた香の煙を脳裏に蘇らせた。そして、薄紅色の唇を微かに開いた。安西の指先が、そっとその唇に触れた・・・

今、学生服が畳の上にカサリと音を立てて落ちた・・・

安西が雪耶の耳に唇を押し当てた・・・そして、雪耶の唇に添えられた安西の指先が白い顎を滑り、ブラウスへ落ちてゆき、雪耶の白い

ブラウスの隙間から、乳白色の肌が露わになった。ボタンをはだけられたブラウスの間から、安西の硬骨とした手が差し込まれ泡雪のよう

名雪耶の柔肌をまざぐった。純白のブラウスがハラりと落ちた。雪耶の光るように白い身体が露わになった・・・滑らかな白い方に安西

が、歯を立てた・・・

「あ・・・」

そう声を漏らして、雪耶はハッと瞳を開いた・・・

安西の手が学生ズボンの金具に掛けられた・・・シュッとベルトを抜く音がした・・・

そして、そのまま雪耶は畳の上へ押し倒された・・・

雪耶の長い腕が白蛇のように安西に絡みついた。安西は、雪耶の首筋に顔をうずめた・・・雪耶の白い指が安西のふっざちじたシルバー

ヘアーをかき乱した。安西の唇が、鎖骨から白くて薄い胸板へ下りて行った。

そしてその柔肌に鬱血した跡を残した・・・そして、学生ズボンと下着がはぎ取られた・・・

雪耶は、雪のように白い体を悩まし気によじった・・・

積雪の表面のように白くて平らな柔らかな腹に、安西は唇を押し当てた・・・そしてその腹に舌をゆっくりと這わせていった・・・そし

て幾度も丹念に嘗め回し、その白い肌をゆっくりと味わっていってから、白いすべすべした尻を撫でまわした・・・その白い双丘の間に

潜む濡れる蜜でヒクつく花蕾を指でやわらげ、安西は己の欲望で貫いた・・・雪耶は安西の体に長い手足を絡め苦し気に顔を歪めた・・

外は雨が降り出した。風が荒れはじめ、激しく雨が窓を叩きはじめた・・・

安西を、雪耶の内部がまるで安西を欲しがるように、絡みつき締め付ける、安西は激しく雪耶の内部を突き上げて行った。

閉じられた瞳の奥の興じる闇の向こうに、雪耶は狂い咲く桜を見た・・・そして、安西と雪耶は昇りつめて果てた。




                            *




   料亭 ― 月の園 ―


今日は、11月2日、雪耶の18歳の誕生日だった。

この日を祝うため、安西が雪耶と美百合をここ月の園へ連れてきていた。奥の間のこの部屋は、窓の外の庭園の景色を楽しめるようにな

っているが、今日は障子がピシャリと締めきられていた。漆塗りの低い木材テーブルの上には数々の食材を凝らした料理が並び、すでに

陶器の中の炭火が焚かれていた。申し分のない色合いの食材に感嘆とさせられ、それらは雪耶の祝い事を示すこの日に最もふさわしいも

ののように、思えた。雪耶の手前に置かれる盃が、安西が傾ける徳利の酒によって、満たされていった。                                                              

そして、

「お誕生日おめでとう、雪耶君」

「ありがとうございます、いただきます」

雪耶は、その盃に唇を添え一口酒を飲んだ。その酒は雪耶の喉をじんわり焼いた。この間まるで、肌が焼かれるかのように激しく安西に

抱かれた身にもかかわらず、今こうして事の情事を全く知らぬ美百合と一緒に、安西と同席して食事をとっている自分が雪耶は信じられ

なかった、雪耶はそっと目の前の刺身に箸を伸ばした。数々の料理が雪耶の胃をゆっくり満たしていった。食事を思う存分楽しんだ後、

「雪耶君、プレゼントだよ」

そう言って安西は、黒いケース箱を、テーブルの上へ出した。

「あけてよろしいですか?」

雪耶がそう言った。

「ああ、気に入るかどうかわからないが」

雪耶は、そっとそのケース箱の蓋を開けた。

その中には、2カラットぐらいの大きさをした、メンズのエメラルドのペンダントが入っていた。

その深緑はどこまでも果てしなく深く続く深海を思わせた。安西がこう言った。

「エメラルドは、かの美女クレオパトラがこよなく愛用したといわれてるんだよ」

「クレオパトラですか?」

権力ある男たちに翻弄されながら権力をぎゅうじた、あのクレオパトラを雪耶は心の中に思い描いた。

「カイサル、そしてアントニウスをこの石の力で魅了されたと語られているんだよ」

安西がそう言うと、雪耶がそっとその石を手のひらに握りしめた。

そしてその後。美百合は酒を楽しんだ。酒を飲むにつれ、美百合はどんどん陽気になっていきながら、頬をほんのり赤らめた。まるで、

少女のように燥ぐ美百合と楽しげな安西を、雪耶は複雑な面持ちで眺めていた。そして、やがてその祝いのひと時を終えた。



   ―― 神野低 ――



「今日は本当にご馳走さまでした」

美百合がそう言った。

「いや私も楽しませてまらったよ、じゃあ雪耶君おやすみ」

そう言って安西が車の中で手を振った。

「おやすみなさいおじさま」

安西の車が走り出し、バックランプが小さくなって見えはくなった。

 「キャッ」

美百合がつまずいて、雪耶につかまった、

「ごめんなさい」

そう言って美百合が笑った。

リビングに入って暖房をつけると、ゴブラン織りのソファーに美百合は着物のまま横になって、すやすや寝息を立てだした。こんな楽し

げな母を雪耶は久々に見たような気がした。雪耶は美百合に、散らし花の絵柄が施された掛布団ををっとかけ、2階へ上がっていった。

そして机の前に座った。今日、安西からもらった黒い小さなケース箱の中から、エメラルドのペンダントを取り出した。そして昔クレオ

パトラに匹敵するほどの美女として言い伝えられ、アウレリアウスに滅亡させられ、ローマ軍にさらわれていった、ゼノビアと美百合を

重ねた。そして、幼いころ美百合と父と3人で写った写真を引き出しから取り出し、そっと撫でてから、エメラルドのペンダントを身に

つけた。



                            

                            *





そして、師走も過ぎ、センター試験の日がやって来た。

雪耶はコートをまといマフラーをしたまま、市バスに乗っていた。窓の外に目をやった。今日はいっをう冷え込み木枯らしが吹いていた

。雪耶の第一志望校は、東大の文科ニ類だった。そこは、安西が卒業した学部だった。雪耶のブラウスの下に安西からもらったエメラル

ドが揺れていた。木枯らしの中、雪耶をのせてバスが通り過ぎていった。

試験会場は、最寄りの国立大だった。

「試験開始時刻まで、あと5分。開始するまで問題用紙および、解答用紙は開かないように」


  ―― チク タク チク タク ――


「では、開始」

そう試験監が言うと、いっせいに用紙越しに机と鉛筆が、ぶつかる音がひびいた。




                            *




あれから日が過ぎ去り、センター試験、2次試験も終え、今日は合格発表の日だった。

この日はチラチラと粉雪が舞っていた。

白い息を吐き、寒気で凍える口元をマフラーで押さえ、受験票をもって、雪耶は勇んで、合格発表の掲示板のそばまである行った。

そして・・・

今受験票に記されたのと、同じ番号が視界に入った。

「あった・・・」

そう呟いて、もう一度受験票の番号をじっくり確認した。間違いなかった。雪耶は、ゆっくり胸を撫でおろしてからその場を去った。

校門の外へ出ると、安西の黒いアウディーが止まっていた。




                            *




雪耶を乗せた安西の車は、スピードを上げて走り去ってゆく・・・フロントガラスの上に落ちる雪は、ボンネットの上へ、ワイパー

の端へと消えてゆく・・・

目の前の薄ぼんやり滲んで見える、赤い信号が青に変わりそのまま過ぎ去っていった。

やがて、安西のマンションが見えてきた。

そして、安西のマンションが押し迫るように近づいてきた。





                            *





   ―― 安西のマンション ――



安西と雪耶は、エントランスを抜け、雪耶は安西に促され安西より先にマンションのエレベーターにのった。

二人を乗せたエレベーターが上昇した。雪耶は、安西とここで過ごした回数を心の中で数えた。



               ―― ピンポン ――


13回まで昇りつめエレベーターの扉が開いた。

二人はエレベーターを降りエンジ色の絨毯を踏みしめ、安西の部屋1034号室まで歩いた。鍵を開けドアを開き二人は部屋へ入った。

玄関で靴を脱ぎ、廊下に通され、安西の寝室まで辿り着いた。この部屋へ入るのは今日が初めてだった。毛足の長い深いレッドの絨毯が

敷かれ高級感たっぷりの家具が置かれその奥には広々としたベッドが置かれていた。安西がソファーに腰を下ろすと、雪耶を手でこまね

いた。雪耶が近づくと、安西は雪耶の手を引いた。雪耶は、安西の膝の上へ抱かれる形で座った。

「合格おめでとう」

 安西がそう言った。

そして、そっと雪耶の薄紅色の柔らかな唇にそっと指を触れさせた。雪耶が雪のように白い手を、その安西の手に重ねた。安西の強い腕

が、雪耶の体をギュッときつく抱きしめた。安西の腕の強さが衣類の下まで焼けるように強く伝わって来た。をして雪耶の生成りのセー

ターの下へ、安西の手が侵入してきた。雪耶のきめ細かな白いうなじに、安西の熱いと息がかかった。そして安西はそこに、唇を押し当

て、セーターの下に差し込まれた手が、雪耶のブラウスのボタンを一つずつ外していった。そしてそこから侵入していった安西の手のひ

らが、雪耶の白いすべすべな肌に押し当てられた。そしてその肌の上を安西が押し当てた手のひらを、そっと滑らせた。雪耶の雪のよう

な肌を安西の手のひらがゆっくり這っていった。そして指先で、ピンク色の乳頭を転がした・・・雪耶が固く瞳を閉じると、もうかた方

の手で雪耶のベルトを外した・・・雪耶が白い繊細な手をその安西の手の甲に置いたがそれに構わず、安西は、硬骨とした手でベルトを

シュッと抜き、ジッパーを下げた。そして、その手は雪耶の下着の中へ差し込まれ、雪耶の男根を掴んだ。そのまま、スルリとズボンと

下着を下ろされ、白いマショマロのような尻が、露わになった。安西はその尻を撫でまわした。そして己のジッパーを下げ露わになった

欲望で雪耶の白い双丘の間に潜む花蕾を突き上げた。雪耶の肉壁が、侵入してきた安西の欲望を受け入れ、それを、求めるように絡みつ

き締め上げた。安西は雪耶の熱くなった身体を抱きかかえ、荒々しく、内部を突き上げた。安西の熱いと息が、雪耶の粉雪の積もった表

面のように、きめ細やかな白い首筋にっかった。雪耶は苦し気に顔を歪めた。窓の外では、激しく粉雪が吹き乱れていた。そして、遠く

で落雷が鳴った。幾度も安西に突き上げられ、遠のく意識の中で雪耶は安西とともに果てた。




                                *




十年後


安西玄蔵を贈収賄容疑で容疑で、秘書、神野雪耶が告発した。

そして、その翌年、比例代表選挙で、神野雪耶は、勝利を成しとげた。



                                       END


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雪の乱 敷島もも @runmori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ