チュートリアルの終わり
直未が話し始める。
「成程、羽陽音お嬢様のお話を聞いて合点が行きました。娘とやっている旦那を見て、頭に血が登った私は、その現場に踏み込んで、怒鳴り散らしました。すると娘が妖艶な笑みを浮かべて、旦那に何かを囁いた後から記憶がありません。恐らく、その時にそのデーモンズフロンティア?でしたかの世界に囚われたのでしょう」
惜しい少し違う正しくは、デモンズフロンティアだ。
「そしてゴーストの姿になっていたと?」
「ゴースト?あぁ、あの霊体みたいなものですか?楽しかったです。御主人様のあらゆるところをペタペタと触ってイタズラするのは、クスクス」
「あの世界で、看護師ですとか20歳超えてるんですとか言ってましたが、どうして記憶が?」
「あら、そうですわね。ハッキリと自分のことを思い出したのは、御主人様とやってからなのですがあの光を受けてから、うつらうつらと思い出した感じですわね〜」
「成程」
「それにしてもまさか御主人様が旦那の御友人である。いえ、旦那に嵌められたのでしたわね。桶階作斗さんの息子さんだったなんて、あっこのままでは未智さんの身が危ないかもしれません!」
未智と聞き話を聞いていた母さんが詰め寄る。
「それは、どういうことかしら?未智が何処にいるか知ってるなら吐きなさい!」
「話します話しますから!未智さんは、旦那が作った培養液の中に閉じ込められているのです。その培養液は、その人の過去の記憶を消し去り、記憶だけを産まれたままの状態にする恐ろしい機械なんです。あれで、脳を溶けさせられ、何人も旦那の女になりました。このままでは未智さんも。あの人は精神力が高いらしく培養液に16年浸らせても記憶が抜け落ちていないと旦那が舌打ちしていました」
「それが本当ならこうしていられない。すぐに警察に届けて、未智を助けないと!」
「無駄です。貞朝は警察とも癒着しています。恐らく話をすれば、そこから足がつくことでしょう。今は未智叔母様の精神力を信じるしかありません」
今回は色々と新情報がわかる収穫があった。1つは、産みの母さんは、危険な状態だけど生きていること。2つは、御離羅貞朝の妻の1人を籠絡できたこと。でもこのまま返すわけにはいかないんだよな。スパイとして働いてもらいたかったんだけど。どうして無事なのか根掘り葉掘り聞かれると僕の能力に辿り着かれてしまうかもしれない。今のところ御離羅貞朝が僕を狙うのはあくまでも麻弥と春香から譲渡されたfrontier社の株式を奪うことなんだ。だから、この切傷治未さんを風呂階家の使用人ではなく僕専属の使用人として雇うこととなった。これで、学校でまた虐められることになってもまともな治療は受けられそうだ。この近くの病院は御離羅家の影響力が強く門前払いだったからな。やっと見つけた闇医者に手当てしてもらうったりで当然保険は効かないので、高額の値段を払っていた。聞くところによると治未さんは医療行為の許されている看護師さんなんだそうだ。それって医者なんじゃないだろうか?本人は看護師ですと頑なだけど。そして、僕は今麻弥と春香にせがまれて、僕だけのナビゲーターであるアイリィンを呼び出したのだが。
「ホッホッホ。ようこそデモンズフロンティアの世界へ。初めましてかの。ウェルカムボーナスをくれてしんぜよう。この資金を好きに使って、この世界を楽しむのじゃぞ」
見慣れない紳士服を着たオッサンにそう言われた。
「ほら、やっぱり一緒じゃん。ナビゲーターって言えば、このお爺さんだよ」
「フグオ君だけ可愛い女の子とかあるわけないじゃん」
「いや、でも、何で?」
「そう断言するのは早くない?だって、このお爺さんは、フグオに初めてあったかのようなそぶりで当たり前のようにウェルカムボーナスをくれたんだよ。それって何かおかしくない?考えられるとしたらフグオのだけ何かしらの細工がかかっていて、それが解かれたって可能性が高いんじゃないかな」
この世界では見た目は脳筋の戦士だが現実世界では、学年トップの秀才であるナナがクールに分析した。そう、これは僕のチュートリアルが今、終わりを迎えたということだった。
---------------
標高10000Mと名高い山の頂上にギルド総本山は存在する。その神秘の間に鎮座する女神像が突如として光輝く。
「ようやくおかえりになられましたのね。我らが女神アイリーン様」
「えぇ、長い間、苦労をかけましたね。トップオブマスターエンジェル」
「いえ、女神様から言われた通り、サダトーモ財団の調査は滞りなく、その過程で、サダトーモの要請に従いフグオ討伐の詔も発布しました。ですが、我らの忠実な配下であるウェポンズマスターにだけは、真実を話し秘密裏にフグオの力となるように命じました。ですがどうして、ギルド全体にあのような命令を?」
「それは、ギルドマスターの中にサダトーモと内通する裏切り者が居るからです」
「まさか、そのようなこと」
「信じられないのも無理はないでしょう。ですが私が信じられるのは、私が直々に洗礼を与えた貴方とウェポンズマスターのみ。くれぐれもフグオのことを頼みましたよ」
そう言って、また光が消え元の女神像へと戻る。
「またお眠りになられてしまったのですね。必ずや我らが御当主様のお命は御守りいたします。未智様」
----------------
frontier社の執務室では、御離羅貞朝がまた消えた人間に対して、焦っていた。
「頑丈な扉を開けた形跡もなくまた1人消えただと。どうなっている?」
そこに血相を変えて、入ってくる御離羅貞朝の娘、毱。
「あのクソ女が消えました」
「直未が消えた?確かなのか毱?」
「はい。薬漬けにして、デモンズフロンティアの世界で、脳を破壊して、処理するつもりだったのですが、申し訳ありませんお父様。どうか私に罰を罰をお与えください」
「いや、罰は与えん。Mのお前にとっては罰にならんからな。お前にはフグオを殺せと命じたであろう。それが達成されるまでお前の喜ぶことはせんよ。とっとと、殺してくるのだ。わかったな」
「はい。お父様、あのクソ女もフグオも必ず私の手で殺します」
そう言って、出ていく毱。
「よりにもよって閉じ込めた女どもを解放してくれよって、しかし、ずっと前に羽陽音お嬢様が解放されたにしては、動きは鈍い。やはり、会長夫妻が居なければ、脅威にはならんということか。しかし、奴らはどうやって、あの地下からワシの新たな雌奴隷予備軍を盗みだしている?やり方がわからん以上、警戒するしかないのだが誰か入ればすぐに分かるトラップや身体を一瞬で焼く赤外線を張り巡らせたにもかかわらず消えた。これは一体どういうことか?そして消えた直未。アイツには1番知られてはまずいことを一つ知られている。こんなことならあの時、なりふり構わず殺しておくのだった。まぁ未智のことがバレていたとしても。行動は起こせぬはずだ。羽陽音という女は、会長夫妻と違い慎重派だからな。何、全てフグオという男を殺せば済む。ワシの勘だがな。アイツが現れてからワシの計画に狂いが生じたのだ。司・嵩・毱だけでは、心許ないか。まぁ良い手駒は、山のようにいるのだからな」
-----------------
チュートリアルが終わって、フグオはこれからどうなっていくのだろうか?2部へと続く。
いじめられっ子の僕が可愛い人外娘と行く冒険旅〜但し人外娘へと変える方法が独特で〜 揚惇命 @youtonnmei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます