35・ソレカラ

 あーあ、あとは読書感想文だなー、とコハルはナツミの家でみんなでソーメンを食べながら話をした。

 ソーメンはひとりで食べるよりみんなで食べたほうががおいしいとは思うのだけれども、他のふたりはさっさと食べ終わってなかよく学校の宿題をやっている。

 といっても、やはりミユキとアキラは仲が良いというわけではなく、お互いに欠けているものをお互いに持っているという関係なんだろうな、とコハルは思った。

 自分は海底二万マイルとかヴェルヌの話で感想を書こうか、とアキラは言った。

 なんか戦争に反対するとか、ほら、えーと夏に戦争があった、っていうのは昔の人が知ってて動画とかでも特集とかやるじゃん、いやー本当にあったかどうかなんてわかんないよ、確かに映像や記録や原爆ドームあるけどさ。

 でも、ネモ艦長の冒険と、戦争と、甲子園で野球をするヒトたちの間に、物語としての嘘と真実は、同程度混じり合っているか分からない。

 で、こういうのは本当に存在している本じゃないとダメなのかな、と、ナツミはややこしいことを言った。

 つまり、ミユキが今書いてて、夏休み中に完成させる予定の物語の感想とか。

 どういう話だっけ、と、コハルは聞いた。

 えーとねー、戦争に負けた帝国の領地が舞台で、そこも世代交代で若い領主にに変わるわけで、その領主は陰では三等貴族と呼ばれて、そういうのね、で敗戦国を立派な国に立て直そうと頑張る、と。

 なんか面白そう、絶対夏休み中に完成させてね、エタっちゃダメだよ、と、コハルははげました。

 で、お前はなんの本にするんだよ、コハル、とナツミは聞いた。

 こんな本。

 え、紙に印刷してる本なんて、おれ、教科書以外じゃはじめてぐらいに見たよ、ふーん、パラパラと読み流しとか読み返しができて便利だな、今度電子書籍読むときはプリントアウトしたのを読もうかな。

 イラストとか漫画みたいで面白そうだし、翻訳? 文章もすらすら読めるね、へー、『飛ぶ教室』……ケストナーってドイツの昔の作家なんだ、カドカマのつばき文庫って、児童文学専門のレーベルなのね……ふん……ふん……ふんふん。

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