破滅の章
『空の穴』
歩道橋の上、突然の轟音が鼓膜を襲った。
爆風に煽られて手すりにしがみつきながら見上げる空に炎が揺らめく。
真紅の炎が天を舐め、虚空に開いた黒い焦げ穴から、無数の何かが降りてくる。
あれは、何だ?
……きっと、目がおかしくなったのだ。
明日、眼科に行こう。
もし明日も、この世界が存在していたら。
(お題:歩道橋、鼓膜、眼科)
『銀幕と彗星』
古い映画の中で、殺人鬼が嗤う。
闇を裂いてナイフが閃くのを、息を詰めて見ている。
銀幕のむこう、モノクロームの血が流れる。
窓を開ければ、見上げる空には巨大な彗星が迫り、見下ろす街路は逃げ惑う人々でごった返しているのだけれど、今だけは、見たくない。
もう少しだけ、膝を抱えて、ここにいる。
(お題:映画、殺人鬼、彗星)
『魔女の弟子』
「魔女の弟子をいじめる命知らずは誰だ?」
小さな擦り傷に薬草を貼ってくれながら訊ねるお師匠様の、赤い唇が不穏な笑みの形に歪む。
使い魔のカラスも肩の上で羽毛を逆立てている。
(ジャック、逃げて……)
いじめっ子のために、僕は祈った。
この村には、カエルにキスしてくれるお姫様なんていないもの。
(お題:キス、カラス、不穏)
だいたい140文字くらい小説集 冬木洋子 @fuyukiyoko
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