俺、なんかしたか?
「ヘレナ、良かった。ちょうどそっちに行こうと思ってた」
「……リア? そう、リアも見つけたのね。それなら、もう逃げられる心配は無いわね」
ここでヘレナが俺の味方をしてくれるっていう熱い展開はないのかな。
無いんだろうな。当たり前だ。……こんな絶望的な状況、縋りたくもなるだろ。
「……はぁ。それで、リア。ラミカはどこにいるんだ?」
俺は一旦諦めて、そう聞いた。
ラミカと合流さえすれば、俺が逃げられる可能性がまた出てくるからな。
「そこにいる」
すると、リアは指をさしながら、一言そう言ってきた。
その瞬間、さっきまで全く気配を感じられなかったのに、ラミカが突然現れた。
……いや、え? 居たの? 仮にそうだとしたら、いつからだよ。
というか、居たのなら、なんで助けてくれないんだよ。
そんな思いを込めて、ラミカに視線を向けると、まるで後ろめたいことがあるかのように、目を逸らされた。
いや、なんで? 俺、なんかしたか?
え? あの時、急に俺の目の前から姿を消したのって俺が何かをしたからだったのか?
「ラミカ、俺、なんかしたか?」
本当は助けを求めようと思ったけど、リアと強くなったヘレナが居るからいくらラミカに協力してもらっても簡単には逃げられない……ってこと以上に、単純に恋人に嫌われたままっていうのは嫌だから、俺はそう聞いた。
「別に〜、何もされてないよ〜」
「なら、なんで姿を消したんだよ」
「……気持ちが分かるからかな〜」
気持ちが分かる……? 誰の?
あの時一緒にいたのはヘレナだから、ヘレナのか? ……仮にそうだとして、なんでヘレナの気持ちが分かったからって俺の目の前から姿をいきなり消したんだよ。
……俺に逃げられる人の気持ちを教えたかったから、とかか? ……いや、意味わかんないだろ。
ラミカは俺の事情を知ってるし、なんで今更俺を逃がすことに罪悪感を覚えたりするんだよ。
……そもそもの話、もっと罪悪感を感じるようなことは普通にしてきてるだろうし、今更すぎる。
「気持ちって、誰のだよ」
「……秘密〜」
……なんでだよ、と思ったけど、嫌われてるわけではなさそうだし、俺はもう何も聞かないことにした。
……ただ、一つだけ別の疑問は残った。
これ、俺が逃げるのに協力してくれなさそうな感じだけど、そんなことないよな? 協力してくれるんだよな? ……リアがいる時点で、ラミカが協力してくれないと普通に終わりだから、協力してくれない場合マジで困る……というか、終わるんだけど。
そんなことを考えているうちにも、俺は無慈悲にもついさっきまで居た宿に連れ戻されていた。
……どうしたらいいのかな。……いや、冗談抜きで。
逃げても捕まえられる。かと言って、正直に全部話せば、普通に殺される。
もう諦めて土下座でもするのが一番生存確率が高かったりするのかな、なんて、ふざけた考えが思い浮かぶくらいには、俺は追い詰められている。
ヒロイン二人を誘拐して即殺されるモブに転生したと気がついたのはヒロイン二人を誘拐してる最中でした シャルねる @neru3656
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