ラミカと合流さえすれば
朝食を食べ終わった。
ヘレナより早く、だ。
ヘレナはまだ俺の目の前で食事を続けている。
つまり、今が止められることなく堂々と逃げられるチャンスってことだ。
「それじゃあ、俺は食べ終わったし、そろそろ……いや、ちょっと外に出てくるな」
そろそろ外に行くな、と言おうとしたんだけど、それじゃあ何となくだけど、ヘレナと近くにいるのが嫌で逃げようとしていると思われて、またデバフのスキルを使われると思ったから、俺はそう言った。
「……もう少しで食べ終わるから、少しくらい待ちなさいよ」
すると、ヘレナは拗ねたような様子で、そう言ってきた。
……ダメだぞ、俺。惑わされるな。
普通に言い訳をしよう。嘘は何故かフィオラや主人公じゃないのにバレるから、気をつけながらな。
「外の空気を吸いに行くんだよ」
嘘は言ってない。
外に逃げようとしてるんだからな。
「もう行くぞ?」
「……食べ終わったら直ぐに私もあんたのところに行くわよ」
「あぁ、分かった」
逃げるんだから無理だろうけどな、と思いつつも俺は頷いて、そのまま外に出た。
よし、上手く出られたな。
さっさとラミカを探そう。
「やっと会えた」
そうして、ヘレナがいる方向から少し離れたところで、今度は目の前に突然リアが現れた。ちょっと……いや、かなり怒った様子で。
なんでリアなんだよ。そこはラミカにしてくれよ。
そう思いながら、俺は無理だと分かっていながらも、後ろに向かって走り出そうとしたのだが、リアにものすごい力で抱きつかれてしまった。それこそ、かなり痛いくらいに。
「り、リア、い、痛いって」
「ダメ。もう、絶対離さない」
「お、俺は今忙しいんだよ。な? 頼むから」
嘘では無い。
ラミカを探すのに忙しいんだよ、俺は。
「ラミカの居場所なら私が知ってる」
そう思っていると、リアはまるで俺の心を読んだかのように、そう言ってきた。
は? ラミカの場所を知ってる? なんでリアが知ってるんだ?
「ち、ちょっとあんた! 外で空気を吸うだけって言ってたじゃない! どこまで行ってるのよ!」
リアのたった一言に内心での困惑を隠しきれないでいると、今度はヘレナの声が聞こえてきた。
やばい。そうだ。俺、ヘレナから離れてる途中だったんだった。
リアが目の前にいきなり現れたことに動揺しすぎて、気配も消せてなかったし、最悪だ。
「ヘレナ、良かった。ちょうどそっちに行こうと思ってた」
「……リア? そう、リアも見つけたのね。それなら、もう逃げられる心配は無いわね」
ここでヘレナが俺の味方をしてくれるっていう熱い展開はないのかな。
無いんだろうな。当たり前だ。……こんな絶望的な状況、縋りたくもなるだろ。
「……はぁ。それで、リア。ラミカはどこにいるんだ?」
俺は一旦諦めて、そう聞いた。
ラミカと合流さえすれば、俺が逃げられる可能性がまた出てくるからな。
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