たんばん

ツヨシ

第1話

ばあちゃんの話。

ばあちゃんはよく、「悪いことすると、たんばんに連れていかれる」と言っていた。

軽く聞くと、たんばんとは妖怪やもののけの類のようだが、深く聞こうとすると、ばあちゃんは途端に歯切れが悪くなり、結局たんばんがどういったものなのかは、よくわからなかった。

そこでじいちゃんに聞いてみたが、じいちゃんは「たんばんなんて知らない」と言う。

まわりの大人たちに聞いてみても、誰一人たんばんのことは聞いたことがないと言う。

ばあちゃん一人だけが、たんばんのことを言っていた。


ある日、ばあちゃんの様態が悪くなった。

病院に行き、数日間は何とか会話ができたが、やがて眠るように亡くなった。


葬式の時、ばあちゃんが遺言状を書いていたと聞いた。

その内容はと言うと「たんばん様、どうか孫たちを連れて行かないでください」と書かれていたそうだ。



         終

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たんばん ツヨシ @kunkunkonkon

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