第6話 この世界の事を少し考えてみた。

よく見ると部屋の奥に扉がある。

隠し扉?慎重に開けてみると・・・なんと外に出れた。

確かにボスを攻略するとウィンドウが出て外に出るかどうか

聞いてきた気がする。なるほど。扉になっているのか。

いいじゃないか。来た道を戻るのも大変だし喜ばしい事だ。


気が付くと夕暮れ時前となっている。

これは困った。もしもマップが俺の知っている通りならば

村はまだ先のはずだ。少し急ぎながら移動をする。

しかし雪丸の能力のおかげで普通に歩いているのだが

早歩きくらいの速度で移動をしている気がする。

・・・ちょっと走ってみた。凄く早く移動できた。

いいじゃないか!全速力は疲れるので駆け足程度で移動をする。

それでも結構な速度だ。20分ほどで村が見えてきた。

太陽が沈まないうちに着けたのはありがたい。

雪丸のもう一つの能力『警戒』のおかげで敵を回避して進んだ。

夜になると魔獣の強さが上がってしまうからだ。


近くに来ると高い塀に囲まれており、入る場所には人影が。

うーん。ジヴァニアはいいとして雪丸はまずいな。

どうやってひっこめるんだろうか。俺は雪丸を見ると

何かを察したかのような感じでいきなり飛びついていた。

いや、俺にじゃなかった、俺の影に潜っていった。

ほええええ。そうなるのか。


俺は入り口に向かい、そこに居た男と話をした。


「ふむ。冒険者か。取りあえず通行税として銅貨2枚だ。」


銅貨2枚!銅貨1枚しか持ってねえよ!俺は銅貨1枚と軽貨10枚で

いいか聞いてみたら問題ないとの事。よかったよ。

しかしこれで全財産は軽貨140枚となった。単純に14,000円ほどだ。

俺はその男に軽貨を銅貨に変えてくれる所が無いか聞いてみたら

宿屋兼冒険者ギルドがあるのでそこで聞いてくれと言われた。


村と言っても結構人がいるもんだな。一通りの、生活に必要な店も

あるし。しかし俺は違和感を感じていた。なんだろうこの感じ。

俺は宿屋に入り、とりあえず冒険者ギルドで登録をする事とした。

冒険者登録をするとクエストが受けられ成功報酬も手に入る。


「じゃこの板に手を置いてね。へぇレベル10なんだね。駆け出しって

 ところだね。がんばんなさいよ。ランクFからのスタートになるからね。

 まぁでもこの村ではEとFの依頼しかないからね。はい、登録完了だよ」


うへぇ。レベルってバレるんだな。


「昔はあんたみたいな駆け出しが多かったんだけどねぇ。今じゃ

 冒険者なんてめったにお目にかからないよ。」


それは過疎ゲームってやつでしたからね。うん。

・・・うん?俺は今この村に冒険者が何人いるか聞いてみたら

何と俺一人って事らしい。まじか!しかしそれを聞いた時に

ここに来る途中の違和感に気づいた。

そうなのだ。NPCいわゆる村人だったのだ。すれ違う人たちが。

ゲームでは村人は歩いておらず店にいるだけだった。

歩いているのは全員冒険者、いわゆるプレイヤーだったはずだ。


そして定型ではなく普通に会話が出来ている。そうなのだ

NPCだった立場の「モノ」も生きている人間になっている。

もうこの世界は既に現実となっているのだろうか。1つの異世界として。


俺は部屋を借りる。3泊4日分だ。朝食と夕食付きで

銀貨1枚だった。勿論銀貨なんて持っていないから軽貨100枚を

渡した。これで残りが4千円ほどだ。しかしこれでいい。

俺は早速夕食を食べる。

黒パンとシチューの様なモノ。そしてちょっとした肉。

飲み物も1杯選べるようだったのでジヴァニアの為に

果物を使ったジュースを頼んだ。

おれはスプーンにすくいジヴァニアに飲ます。


「おいしいわ!おいしい!甘いし!」


凄く感動してくれた。シチューも気に入ったらしく

とてもご満悦だった。


食事を終え部屋に入りベッドに寝っ転がった。

俺は気になった事をジヴァニアに話した。

俺のほかにも向こうから来た者はいなかったのかを。

答えは「わからない」だった。しかし

俺が飛び込む30分ほど前からシステムに相当な負荷が

掛かり続けていたとの事。他にも俺をゲームに転移させる事を

神様に言った所、神様が凄く興味深くあれやこれや聞いてきた事。


「もしかしたらだけど向こうの世界の人をこの世界に

 移したんじゃないかなぁ。」


いや、ならばここの村人たちのように馴染んでいないだろう。

いや、まて。NPCは魂のないロボットの様なモノとした時に

それに魂を入れたらどうなるのだろうか。

NPCは外見は人間だ。それに魂が入ったら本物の人間じゃないか。

しかし数が増えているのがどうやったのだろう。


「簡単よ?キョークの様なプレイヤーを作るよりもね。

 まぁ労力的にはプレイヤー1に対してNPCは500は

 作れるわ。そう考えればあの時の負荷は納得できることよ」


俺はどれほどのNPCが作られたのか聞いてみたら「多分」と

前置きをされ30万人ほどと言われた。


俺はふと異世界アニメの事を思い出した。

「お前は新しい世界で生まれ変わるのだ」という神様のセリフ。

主人公的には前世の記憶を持っての生まれ変わりだが

前世の記憶を引き継がないでこの世界に生まれ変わる。と、したら。


もしも現実世界で死んだ時に魂はリセットされ生まれ変わる

と仮定。隕石が落ちたのだ。人口は相当減っただろう。

であれば行き場のない魂も相当数あったはずだ。その魂たちを

この世界のNPCに移したとしたら。


うーん。よくわからん。とりあえず俺はもうそう言う事を

考えるのを止めた。眠たかったからだ。

いいじゃないか。この世界の人間はみんな生きているんだ。

NPCとかいう言葉を使うのはやめよう。


この世界にはいろんな人がいるだろう。料理人や売り子さん。

靴職人や防具職人、武器職人。そして冒険者。

みんな生きている人間でいいじゃないか。

元々いた人間にプラスされた30万の人間。

いいじゃないか!生きているって事で。

そして俺は爆睡をした。


朝、ジヴァニアの蹴りが入る。俺の目覚まし時計だ。

ジヴァニアに急かされて朝食を食べに部屋を出る。


「やあ、おはよう。朝食出来てるけど食べるかい?」


宿屋の女将の言葉に俺も「おはよう」と答え、朝食をいただく。

朝はサラダと黒パン。そして目玉焼きとポテト。

もちろん飲み物は果物を使った物を頼んだ。


「いくつか依頼を受けてくれないかな?冒険者がいなくて

 困ってたんだよ。全部じゃなくていいからさ。出来れば

 討伐系がいいんだけど」


俺が朝食を食べ終わるのを見計らって

女将は少し申し訳なさそうに俺に話しかけてきた。

勿論俺は二つ返事で受けた。俺は冒険者なのだから。


色々と物色をする。なるほど討伐系が多いな。

俺は自分の能力と依頼を天秤にかけ、出来そうなものを

いくつか選んだ。ってか、殆ど出来そうなものばかりだった。


まずはこれからだ。

野獣 鬼豚の討伐


そう、魔獣ではなく野獣だ。












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