時は奈良時代。豪族の屋敷を舞台に描かれる、男女が織り成す人間模様

舞台は上野(かみつけのくに)国の屋敷――現在の群馬県あたりだと思います。
のどかな自然と豪族屋敷の華やかさが共存していて、とっても魅力的。
でもさらに惹かれるのは、まさに生きていると形容したくなる登場人物たちです。

豪族の屋敷に女官としてあがった三人の女性たち。
それぞれの人生と恋、仕事と人間関係――彼女たちが織り成す悲喜こもごもが描かれます。

本作には完璧な善人も、圧倒的な悪人も出てきません。
きっと読者も人生のどこかですれ違ってきたような、人間くさいキャラクターたちです。

優しい心を持つ者が、時には憎しみの塊にもなり得る。
それこそが不完全で矛盾に満ちた人の心なのだと、
作者様があたたかいまなざしで描かれているのが感じられます。

人物描写が巧みで非常に読みごたえのある作品です。
万葉集の引用(現代語訳付き!)も楽しいですし、
奈良時代に興味がある方もない方も、ぜひ開いてみてください!

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