第五回【カレー】
【
飯塚「ねーだろそんなもん……」
三ツ星「ほらほら飯塚も手ぇ振って! イエェーイ!!」
飯塚「……い、いえーい……」
三ツ星「はい、というわけで始まりました第五回『満点! 三ツ星レストラン!』張り切って参りましょーう!」
飯塚「……なあ、これ俺も手振る必要あったか?」
三ツ星「振れるものは何でも振りなさい! それが人生というものです!」
飯塚「もう人生を棒に振った気がするんだがなぁ……」
三ツ星「まあまあ、細かいことは気にしない気にしない! さて、今回作る料理は……カレーです!」
飯塚「おお、カレーか。家庭料理の定番だな」
三ツ星「でしょー? それに今日は夏らしく、辛いものが食べたい気分なのさ!」
飯塚「あー、まあ分からなくもないな」
三ツ星「スパイスの効いた刺激的な辛さに、思わず汗ばむほどの熱気と興奮が湧き上がってくる! そんな夏の夜には、やはりカレーを食べるに限るのですっ!」
飯塚「急に熱く語りだしたなお前!?」
三ツ星「だって暑いんだもん」
飯塚「気温の話かよ!?」
三ツ星「まー、あたしが言いたいのはつまり、暑い時に食べるカレーは最高ってことなのさぁ! というわけで材料の紹介だー!」
飯塚「強引だなおい……。カレーの材料って言ったら、だいたい予想がつくけど」
三ツ星「はーい、まずはお肉です! ビーフ VS ポーク? 飯塚はどっち派だい?」
飯塚「戦わすなよ……。そういうのはビーフ・オア・ポークって聞くんだろ普通……。あとチキンも忘れんなよ?」
三ツ星「おおっと、そうだった! さすがチキンハートの異名を持つ男だね!」
飯塚「誰がチキンハートじゃい!?」
三ツ星「今回は予算の都合上、豚肉を使いまーす! 豚さん、よろしくおねしゃーす」
飯塚「なんだその安っぽい扱いは……。もっと大切にしてあげろよ……」
三ツ星「そしてお次は野菜たち! 右からオニオン、キャロット、ポティトゥにございます!」
飯塚「なんでわざわざ英語で言った? 玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモで良いじゃねーか。そんでポテトの発音だけ無駄に良かったのは何なんだよ……」
三ツ星「そこはほら、クローバーな時代ですから」
飯塚「グローバルだろ。シロツメクサの時代ってお前……みんな花冠でも作ってんのか? こうやって」
三ツ星「ね、運転してるところ悪いんだけどさ、次に進めていい?」
飯塚「運転じゃねーよ! ハンドル回してんじゃなくてだな……。ああもう……好きに進めろよ……」
三ツ星「オーライ♪ それじゃ続きまして、ルウになりまーす!」
飯塚「おっ、これがないと始まらないよな」
三ツ星「イエス! 料理の『らりるれろ』の真ん中に位置する、あの魅惑の調味料!」
飯塚「何だよ料理の『らりるれろ』って。『さしすせそ』だろ? 他に何があるんだよ……」
三ツ星「『ら』は『ラー油』で、『り』が『料理酒』、そして『る』は『ルウ』。『れ』は『レモン汁』で、『ろ』が『ローリエ』だぁ!」
飯塚「おぉ……スゲー……。そんなのがあんのか……」
三ツ星「ふふーん♪ どう? すごいっしょ? まあ今考えたんだけど」
飯塚「うぉいっ! お前が考えたのかよ! ちょっと感心しちまったじゃねーか!」
三ツ星「へっへー、見直したかい? 飯塚は単純だねぇ」
飯塚「くっそー、バカにしてやがるなーこいつめ……」
三ツ星「最後はお水! これで材料はすべて揃いましたっ」
飯塚「材料紹介だけでこんなに尺使うの、俺らぐらいだぞ……」
三ツ星「さてさて、調理開始といきましょーう! まずはお肉と野菜たちをカットしていきまっす! 飯塚、メス!」
飯塚「ん。……って、手術か! お前は外科医かっ!」
三ツ星「飯塚、シー……。手元が狂うから静かにして……」
飯塚「こんなやつに執刀されんの絶対嫌だわ……」
三ツ星「さーて、それじゃあいよいよ炒めていきますよー! お鍋に油を敷いて、切った肉塊を投入しまーす!」
飯塚「肉塊言うなや……。なんかヤバいもんに聞こえるだろうが……」
三ツ星「じゃあ、肉片?」
飯塚「どっちも同じだろ! 普通に豚肉って言えよ!」
三ツ星「飯塚、ツッコミ長いよー。そんなんじゃ、将来ハゲるよ?」
飯塚「まだ大丈夫……ってか、何でお前に心配されてんだよ俺は!?」
三ツ星「飯塚が将来ハゲても、あたしはずっと友達でいるからね?」
飯塚「だからなんで俺がハゲること前提なんだよ!? ああもう、いいからさっさと進めろよっ!」
三ツ星「はいはーい♪ あ、そろそろいい感じかな? ここに野菜たちも合流させて、さらに炒めまーす!」
飯塚「よしきた。順番とかは決まってないよな」
三ツ星「ここで、お鍋の中を実況してみたいと思います! おぉ~、熱気に包まれていますねぇ!」
飯塚「実況って急だなオイ……。まあ、そりゃ熱気は感じるだろ。火使ってんだからよ」
三ツ星「ニンジンさんとジャガイモさんは、仲良く寄り添ってますね~♪ 玉ねぎ様は……あら、こんなにしんなりしちゃってまぁ」
飯塚「何だこの状況……。そろそろ水入れるぞ」
三ツ星「おぉーっと、ここで飯塚選手、水を投入するようです! 果たしてこの選択は吉と出るか凶と出るかーっ!? 解説の飯塚さん、いかがでしょうか~?」
飯塚「俺は選手なのか解説なのか、どっちだよ!?」
三ツ星「さあどうなるでしょうか? はたして、勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか……?」
飯塚「無視すんなコラァ!!」
三ツ星「……あっ、グツグツ煮立ってきた! 飯塚、火を止めてー」
飯塚「俺の怒りの炎は消えねーよ……。はぁ……もういいや、止めりゃいいんだな?」
三ツ星「そーです! そこにルウ、参戦ッ! それそれ~……あちちっ!」
飯塚「おいおい、大丈夫か? 火傷すんなよ?」
三ツ星「くぅっ……攻撃を食らってしまいました! ですが、飯塚の優しい気遣いでなんとかMP回復! ありがとう飯塚!」
飯塚「いや、別に大したことはしてないんだが……。つーか、ゲーム脳すぎるだろそれ」
三ツ星「でもやっぱり熱いので冷やしまぁす……」
飯塚「強がりだなぁ……」
三ツ星「さてさて……ルウが溶けてきたので、弱火で煮込みまーす!」
飯塚「おぉ~……カレーの匂いがしてきたな。これは食欲をそそられるぜ……」
三ツ星「ふっふっふー♪ カレーの魔力の前には、誰もがひれ伏すしかないのですっ!」
飯塚「いや、誰目線だよそれ……」
三ツ星「そして待つこと数分……ようやく完成でーす♪」
飯塚「おー、やっとできたかぁ~!」
三ツ星「ご飯は炊いてあるから、 セルフサービスでよそっちゃってくださーい! あたしがつまらないものをおかけいたしますので……」
飯塚「つまるもんだよ! 俺たちで作ったんじゃねーか!?」
三ツ星「はーい、これで完成ですっ! それでは早速実食タイムと参りましょう!」
飯塚「おう! いただきまーす!」
三ツ星「いっただっきまーす!……ふふ、ふふふふ。ふひひひ……」
飯塚「うわっ、気持ち
三ツ星「ひゃははは……はっ! おっと危ない、あまりの美味しさにあたしの中の悪魔が顔を出してしまったようだ……!」
飯塚「お前の中の住人、全員食い意地張ってそうだな……」
三ツ星「失礼なっ! そんなんじゃないやい!……たぶん」
飯塚「……自信ねーのかよ!?」
三ツ星「まあまあ、今回も三ツ星、星三つ! という素晴らしい出来栄えでした! いやー、我ながら惚れ惚れしちゃうね~」
飯塚「まあ、確かに味は良いんだよな」
三ツ星「あたしも、料理系ユーチューバーとしての立ち位置を確立してきてますなぁ」
飯塚「いやいや、まだ全然駆け出しだろ」
三ツ星「そんなことないってー。そのうちチャンネル登録者数100万人突破したりして」
飯塚「ねーよ」
三ツ星「夢がないなー飯塚は」
飯塚「お前が変な方向に突っ走りすぎなんだよっ!」
三ツ星「はいはーい、それではまた次回! 来週辺りにお会いしましょう! 今度は何を作りましょうかね~」
飯塚「来週? そろそろテスト期間だろ。さすがに勉強した方が良いんじゃないか?」
三ツ星「……ナ、ナンノコトカナー?」
飯塚「おいこら、目を逸らすな! ったく……しばらくは動画投稿禁止だなこりゃ……」
三ツ星「ええー、そんなぁ~! せっかく楽しくなってきたのにぃー!」
飯塚「少しは危機感持てよ……。学生なんだからよ」
三ツ星「くっ……ここまでか……! もう駄目かと思ったその時、奇跡は起きたのだ! なんと、あたしの周りに突然現れた救世主たちによって、難を逃れることができたのだった!」
飯塚「なんで急にナレーション口調なんだよ。それに困難は逃れてねーよ……。とりあえず、今回はここまでだ。締めんぞ」
三ツ星「はーい……。それでは皆さん、またいつかどこかでお会いしましょーう!」
飯塚「会うとしたらここでだろ。そんじゃまあ……」
三ツ星&飯塚「「ありがとうございましたー!」」
三ツ星クッキング☆チャンネル 夜桜くらは @corone2121
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