第四回【パフェ】

飯塚いいづか宅のキッチンにて】


三ツ星みつぼし「満点! 三ツ星レストラーン! イェーイ!」


飯塚「お、おう……」


三ツ星「ヘイヘイ飯塚、ノリが悪いZO? もっと元気出していこうZE!」


飯塚「なんでラップ調……?」


三ツ星「ノンノンあたしはアルミホイル調! フライパンに敷けばノンストレス、Yeahイェア!」


飯塚「お前はどこのラッパーだ……。アルミホイル調ってなんだよ、聞いたことねえよ」


三ツ星「えっ、飯塚知らないの!? 最近のトレンドなのに!?」


飯塚「知るかそんなもん! つーか、始めるんならさっさと始めろよ……さっきからグダグダじゃねえか」


三ツ星「おっとそうでした! では早速参りましょう、第四回『満点! 三ツ星レストラン!』今回の舞台はここ、飯塚の家のキッチンになりまーす!」


飯塚「『今回は』って……いっつも俺んちだろ」


三ツ星「はーい、そうでーす。代わり映えのしないキッチンでーす」


飯塚「うるせえわ! だいたいキッチンなんてそんな頻繁に変わるもんでもないだろ!?」


三ツ星「いやいや、変わるものですよ~? 今はいろんなグッズがありますからね?」


飯塚「ああそうかい……。それで、今日のメニューはなんなんだ?」


三ツ星「ふっふーん、よくぞ聞いてくれましたっ! 今回は趣向を変えて、スイーツを作ろうと思います!」


飯塚「ほぉ、また珍しいな……。そんで、どんなの作るんだ?」


三ツ星「ふふん、聞いて驚くがよい! 今回あたしが作りまするは、ズバリ……パフェでございますッ!」


飯塚「これまたあんまいの選んだな……。まあ、レストランとかでは定番だが」


三ツ星「でしょー? なんてったって、パフェはパーフェクトなスイーツですからね! 味も見た目も良し、まさに完璧な存在なのです!」


飯塚「確かに語源はそんな感じらしいけど、なんでお前がそんなに偉そうなんだ……?」


三ツ星「だってあたしは完璧だからねー! パーフェクトガール・三ツ星、ここに見参!」


飯塚「自分で言うのかそれを……。パーフェクトの意味を辞書で引いてこい」


三ツ星「いや~、辞書は重いから持ちたくないんだよねー」


飯塚「……そうかい、じゃあ後で俺が持ってきてやるよ。そしてお前が入った部屋の前に積んでやる」


三ツ星「出られない! 外開きだから出られないよ飯塚! ……ハッ、これがまさに檻の中の虎タイガーインザケージならぬ、部屋の中の三ツ星スリースターズインザルームということか……! ククク……なかなかやるな……!」


飯塚「厨二やめい……」


三ツ星「えーい黙れ黙れぇい! とにかく今日はパフェを作るんだい! さっそく材料の紹介だぁ!」


飯塚「はぁ……なんかもう疲れたよ俺は……」


三ツ星「まずはこちら、じゃん! コーンフレーク!」


飯塚「フルーツとかじゃなくてコーンフレークが先なのかよ!? しかもなんか量が多くないか?」


三ツ星「あーこれ、分裂してるだけだから気にしないで~」


飯塚「気にするわ! 何!? コーンフレークって分裂すんの!? マジで!?」


三ツ星「いや、するわけないじゃん? やだなぁ飯塚、常識的に考えてよ~?」


飯塚「お前が言い出したんだろうが! なんで俺がおかしなことを言ったみたいになってんだよ……」


三ツ星「まあまあ、次行くよ~。はい、生クリームでございまーす!」


飯塚「さらっと流すなや……。生クリームか。これもパフェには必須だよな」


三ツ星「そうそう、これをたくさん盛ってあげると喜びますなぁ」


飯塚「誰がだよ」


三ツ星「そりゃもちろん、佐々木ささきさんに決まってるじゃん!」


飯塚「また佐々木さんかーい! もはや準レギュラーじゃねえかあの人……」


三ツ星「『生クリームは飲み物だ』って名言を生み出した人だからね。彼女の血管には、血じゃなくて生クリームが流れてるんだよ、きっと」


飯塚「そんな人間がいてたまるかぁ! お隣さんで変な想像をするな!」


三ツ星「はい、じゃあ次はこちら! アイスでございまーす!」


飯塚「お、やっと主役が来たな」


三ツ星「これでパフェの完成度が一気に上がるのだ! ちなみにこのアイス、冷凍庫にあったお高いやつを拝借しました」


飯塚「泥棒じゃねーか! 返せ、俺のダッツ!」


三ツ星「大丈夫大丈夫、返せたら返すから!」


飯塚「それ絶対返さないやつの台詞だからな!?」


三ツ星「続いてはパフェの花形、フルーツちゃんズでーす! キャーステキー! ほら、飯塚も声援送って!」


飯塚「……わーすごーい(棒)」


三ツ星「艶めく果実の情熱的な魅力に、あなたは耐えられるかしら? いや耐えられないわ、今すぐ食べちゃいたいもの……ジュルリ☆」


飯塚「おい待て、ヨダレ拭けよ汚いな……。ていうか最後の台詞なんだよ、意味深すぎるだろ」


三ツ星「いやー、ついテンション上がっちゃって……てへ☆」


飯塚「『てへ☆』じゃねーよ全く……。んで、材料はこんだけか?」


三ツ星「はい、そうでーす! それじゃあさっそく作っていきますよー!」


飯塚「おーう……。まずは何からするんだ?」


三ツ星「ふっふーん、それはですねぇ……。まず最初に、器を用意いたします! 飯塚の家にはパフェグラスなんて洒落たものはないだろうから、普通のコップを使うといいよ」


飯塚「一言余計だっつーの……。ほい、用意できたぞ」


三ツ星「おっけー! 次に、コーンフレークと生クリーム、それからアイスをそれぞれ盛り付けていきまーす!」


飯塚「おいおい、ずいぶん適当だな……」


三ツ星「いいのいいの、こういうのはキーリングなんだから!」


飯塚「なんだよキーリングって……。フィーリングだろ。どこの鍵をぶら下げるつもりだ……」


三ツ星「あたしの心の?」


飯塚「やかましいわ! お前はいつでもオープンだろーが!」


三ツ星「マイハート、オープンッ! あたしの心、覗いてみたくない?」


飯塚「覗くもなにも、開けっぴろげで丸見えだろ……」


三ツ星「うーん、こりゃ一本取られたぜぃ! さーて、アイスが溶けないうちにどんどん進めるよー!」


飯塚「聞けよ人の話……」


三ツ星「次はフルーツを切っていきまーす! ここからはお好きなものをチョイスしてね♪」


飯塚「俺はイチゴにするかな。やっぱり王道は外せないよな……」


三ツ星「あたしはバナナかなー? バナナンナン♪ バナナンナン♪」


飯塚「その歌やめろ……なんか腹立つ……」


三ツ星「えー、いいじゃん別にぃ。あ、飯塚も歌いたかったら歌ってもいいんだよ? 遠慮せずにどうぞ♪」


飯塚「歌ったりしねーよ! ったく、早く進めてくれ……。ほれ、切ったぞ」


三ツ星「おぉっ! さすがエーススライサー飯塚! 見事な包丁さばきだね~!」


飯塚「エーススライサーって何だよお前……。エースストライカーみたいに言うなや」


三ツ星「まあまあ、ついでにあたしのバナナも切ってちょ♪」


飯塚「なんでお前のまで切らなきゃいけねーんだよ! 自分で切れ自分で!」


三ツ星「むっ……飯塚、こちらを見なさーい!」


飯塚「なんだよ?」


三ツ星「あなたはあたしのバナナが切りたくな~る……切りたくなるぅ~♪」


飯塚「どういう暗示だよ!? つーか、食べ物で遊ぶな!」


三ツ星「はーい……。それじゃ気を取り直して、調理再開でーす!」


飯塚「まったく、調子のいいやつだな……。次はどうするんだ?」


三ツ星「切ったフルーツを盛り付けていってくださーい! 崩さないように気を付けてね?」


飯塚「了解っと。なかなか難しいなこれ」


三ツ星「崩れたらゲームオーバーですよ飯塚選手! パフェ作りは繊細さが大事ですから!」


飯塚「お前はどこ目線で語ってんだ……?」


三ツ星「はい、盛り付けが終わったら完成でーす! それでは早速実食タイムと参りましょう!」


飯塚「おー、これで完成か。そんなに手間がかかるわけでもないんだな……」


三ツ星「ふふ~ん♪ パフェ様は料理初心者にも優しい、スウィートなお方なのですよ~」


飯塚「パフェ様って……まあいいか、間違っちゃいないしな」


三ツ星「さあ飯塚、スプーンを持ってスタンバイするのだ!」


飯塚「へいへい……んじゃ、いただきますっと」


三ツ星「いただきまーす!」


飯塚「おっ、うまいなこれ。イチゴの甘酸っぱさとクリームの甘さがよく合ってるし、アイスもいい感じに溶けてる。これならいくらでも食べられそうだ」


三ツ星「お~! 飯塚の食レポが進化してる! これはあたしも負けてられない!」


飯塚「いや、勝ち負けとかないから……」


三ツ星「んー♪ 美味なりぃ……! お口の中が幸せでいっぱいだぁ……!」


飯塚「まあ確かに、甘いものは幸せな気持ちになるよな……」


三ツ星「三ツ星、星三つ! 大満足でございますっ!」


飯塚「はいはい、よかったな……」


三つ星「それじゃ、今回はこの辺でお別れしましょう! 次回もお楽しみに~」


飯塚「当たり前のように続くんだよなぁ……。めちゃくちゃグダグダだけど……」


三ツ星「では、またお会いいたしましょう! サラダバー!」


飯塚「通じんのか? それ……。ありがとうございましたー」

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