その魔女は、最初の夫の苗字を名乗っている。

長い時を、変わらない姿で生きる新淵さんの旧友、南波さん。
彼女もまた、長い時を変わらない姿で生きていた。

「南波って苗字は、最初の夫の苗字なんだよね」

そうして彼女は、澄花に、最初の夫と、最後の夫の話をする。

同じ時を歩むことはなく、同じ過去を共有することはできない。
それでも共に笑い、怒り、泣き、いたわった時間があった。
切なくも、どこか胸をともすような物語。