第8話 最終話。妖精、そして
城の外での激戦はもう1つあった。それは妖精と暗殺集団の激闘であった。激しい戦闘が繰り広げられる中、妖精たちは驚いて、「こんなやつらがいたとはね!」、「凄い魔力」と感嘆の声をあげていた。その声は驚異的な魔力を持つ敵と戦いの最中にもかかわらず、驚くほど落ち着いていた。
暗殺部隊も戦う中で驚いている。彼らの暗殺技術や魔法能力は他を圧倒するものであったが、妖精の攻撃は他の何物にも似ていなかった。
ルィリの側近も焦りが出てくる。「ここまでしても相手にダメージを与えられないのか!」と月が叫ぶ。
「防ぐのがやっとにゃ。とんでもない戦闘力。普通の騎士なら10万人いようが100万人いようが一瞬で蒸発レベルにゃ」セナウも滅多に会うことができない強敵に興奮している。ケープは切り刻まれて体内の金属が所々見えてる体で「でも楽しいねぇ」と落ち着いている。
妖精の一撃一撃を寸前でかわす。特にこの気持ちの悪い妖精の攻撃は異様である。不気味なかぶり物はすでに焼かれていたが、その下の顔は更に不気味な腐った肉団子に骨やら神経やらがむき出しに飛び出している。そこから発される死のブレスは、脳波の弱いものなら緩衝材や保護装置があっても即死するほど呪われていた。暗殺部隊の能力があれば即死は防げるが、脳波にダメージが残る。
「脳波に直接の呪いは厄介だにゃ」
「これでお終いだぁぁ!」
ピンクの髪の妖精ニナの手から光がほとばしる。そんなに大きな声を上げるニナを見るのが初めてと、コトハが唖然としている。
その魔法を直撃して吹き飛ばされたのは暗殺の任務から戻ってきたRdィースだ。両腕と顔半分が吹き飛ばされた。彼はその血だらけの顔で憎悪を燃やしながら「くそったれが、わが闇の軍団を連れて来ていればこんな遅れを取ることは無かったのに」と言った。よほど悔しかったのか、顔が半分飛ばされている痛みや出血など忘れてにらみつけている。
「次会ったときは、この何千倍もやり返してやる」血を吐きながら地獄の底から聞こえてくるような声で言った。
さすがの妖精たちも少し迫力に飲まれた。
「なんか恨まれてしまったね」
「あはは、ここまで真剣にさせておいてね。そんなに根をもたれても困るんだけど。いつでも待ってるからね」
「ケロも楽しみって言ってるわよ」
「本当かよ」
「それではそろそろ潮時かな」
「もういいっか、飽きたし」
笑いながら消えていく妖精たち。精鋭暗殺者数十人がたった3名の妖精に抑えられ、死者は出なかったがほぼ全員重傷を負った。彼らのプライドも大きく傷つけられた。
城の中では激しい戦闘が終わろうとしていた。偽皇帝以下200万の虫たちは命乞いをして降伏し、公女エルメはその仲間とすでに逃亡していた。ヒミコは置いていかれたと嘆きながら降伏したが、内心は虫たちから解放されると、喜んでいる。
20の味方戦艦が城の前に降りていた。すでに数千隻の大惑星ポルゲンと連合の敵艦が向かってきているとの報が入る。大急ぎで研究材料になる捕虜の虫人と悪獣、そしてヒミコを乗せて離陸した。
戦艦が飛び立つ様子を、間に合わなかった援軍の虫たちが遠くから眺める。
空振りした数千もの敵艦隊は全力で追いかけたが、殿として残った西星連の戦艦を2隻破壊することしかできなかった。
戦艦の内部は狭苦しい。広大な大ホールに、捕虜とした虫人たち200万人を無理やり詰め込んでいる。身動き1つできない。ザワザワと蠢く虫人の真ん中にヒミコはいた。すぐ隣の飢えた悪獣ドリマカがよだれを垂らしている。そのよだれを頭に受けているヒミコは顔を真っ青にしていた。毛嫌いしている虫人と隙間なくピッタリとくっついている。鳥肌が止まず体を震わせながら、「なんでまたこんなことになるのよ! ここから出してぇーーーー!」彼女の声がホール内に響いた。
前哨戦は東西宇宙群とも手の内を明かしてしまう痛み分けとなった。双方の戦力と策略が露わとなり、次の戦いに向けた準備が必要となる。各首脳たちは、この戦いで得た経験を活かすべく、戦術の見直しを始める。
戦艦が飛び立つ様子を、間に合わなかった援軍の虫たちが遠くから眺める。
空振りした数千もの艦隊は全力で追いかけたが、殿として残った2隻を破壊することしかできなかった。
帝国に戻った騎士団は、皇后の直ちに釈放を求めた。そして新政権を発足させ、東星連との関係修復も視野に入れ、新たな王朝を築くこととなる。
虫の王国(帝国騎士団の逆襲) スノスプ @createrT
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