一筋な突撃少年と不思議な佳人が織りなすファンタジーラブコメディ!

前提として、この作品はラブコメディである。魔法学園に入学した新入生が、高嶺の花である先輩佳人に一目惚れし、あの手この手で頑健な城のような心を絆していく。というセオリー自体は抑えてある。しかし、この作品が他と比べて優れているといえるのは、劇中の八割近くを占めるコメディの部分である。
本来であれば、主軸は恋愛である筈なので、尋常の作品ならばコメディは脇役乃至は恋愛と五分五分になる筈だ。だが、本作品はコメディ部分が多いため、時折挟まれる恋愛要素(ヒロインが主人公にしか見せない仕草をしたり、相手を見直したりなど)が非常に際立っているという他無い。またその恋愛要素も、普段のヒロインの言動や性格も相まって、秀逸なほど可愛らしい。現実と混同するわけではないが、主人公が惚れて周りが見えなくなるのも理解出来る気がした。

本作品の主人公であるルークは、魔法学園に通う新入生で、桁違いに明朗快活で、白い目で見られようが、片想いの人にあしらわれようが、滅多に落ち込まない。ヒロインを端麗で静謐な月と見るならば、彼はそれを照らし、本心を露わにする太陽と言えるだろう。作中でもルークと一緒にいる友人達が、彼の快然さに乗せられて、いつの間にか場の雰囲気が明るくなっているということが多々あるほどだ。しかし一見、何も悩みが無さそうな少年には暗い過去や事情があるらしい。偶に匂わされているので、興味がある人には追って頂きたい。
ヒロインであるブレアは、学園でのルークの先輩で、学内でも指折りの才女である。しかし、魔法以外は基本的に抜けており、常識感覚がズレている。具体例を挙げればキリがないが、兎に角、私生活より、研究に打ち込むタイプである。しかも、自分が友人、若しくは有用だとみなした人間以外、皆虫けらか何かだと思っているらしく、面倒ならば会話はおろか、眼を合わせることもしない。しかし、彼女はルークにいきなり告白されたり、弁当を作って貰ったり、彼の調子に乗せられて、あれこれ交流している内に、徐々に彼のことを友人以上の何かとして扱っていく。

その他にも、ルークにアドバイスを与えたり、彼をサポートしたりする、友人でありこの作品では希少な常識人枠のヘンリー、その兄であり犯罪スレスレの行為で小遣いを稼ぐルークの悪友アーロン。ブレアの介添人であり、ルーク君と同じタイプで学内全てが友達という思考をしていそうな天真爛漫のエマなど、魅力的な人物が物語を彩っている。

レビューでは、本作品の魅力全てを書き切ることは、けだし無理である。しかし、この短い駄文で、貴方が本作の魅力を少しでも感じられたのなら、是非とも、迷うことなく読んで頂きたい。時間を使ったことを、後悔しないことは保証できる。

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