毒虫
うろこ道
毒虫
「ばかな地虫め。ついばんでやろうぞ、ついばんでやろうぞ」
地虫は黒々とぬめった土から重たい頭をもぞと
「食えるものなら食うがいい。吾が身には毒がある」
「うそを言え。おまえの肉は臭いだけで毒などありはせぬわ」
トウト鳥は白い喉をそらし
地虫はさも悔しげにその
「
地虫のくぐもった
「そろそろ北の一番風が吹く。おまえの相手などしてはおれぬ」
「いずこへ往くか」
「南方じゃ。あたたかな極楽浄土じゃ。おまえは死ぬまで冷えた
地虫は
その拍子に、
「トウト鳥よ。食うと言うたではないか」
「おまえのくさい肉など食わぬ」
「食うてたもれ、吾はそなたのために胃の腑を毒で満たしてきたのじゃ。触れるだけでいいのじゃ」
地虫は
すでにまなこも
「からだがとけてしまう、食うてたもれ、食うてたもれ」
くぐもった地虫の声はにごり、ぐぶぐぶと湿った音でしかなくなった。
トウト鳥がむらさきの空に消えたころを見はからって、青い甲虫が土を割って這い出てきた。
「ばかな地虫め。言わねばわからぬものを」
甲虫は
毒虫 うろこ道 @urokomichi
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