春風そよ吹く空をみれば、さながら霞める朧月夜

時に、西暦一九〇四年。第二回旅順港閉塞作戦が決行される。
大日本帝國海軍少尉候補生、大湊朧次郎の乗る福井丸と共に、弥彦丸・米山丸がロシア艦隊へ向け突進、爆破装置に点火し、用意された小型船に乗り込んで撤退する段取りだったが、ロシア艦隊の要撃を受ける。
水雷が直撃。気付けば、傷を負って海面に浮かんでいた。
小舟に乗り、朧次郎を助けたのは、白髪を後ろに束ねる天使のような少年――廣瀬蛍。
二人をめぐる数奇な運命が、いま動き出す。