ねぇ見上げて広い夜空、精一杯輝くから満月を探して

ちょっと不思議なファンタジー。
憧れだけは誰にも消せない。
憧れることで、ちょっとずつ、正しさから遠ざかっていくのかもしれない。

書き出しが良かった。
躍動的でありながら詩的な感じがする。

人魚のいう「正しい巡り」とは「生まれる。死ぬ。まっさらになる。生まれる」といった、人生や輪廻転生のことをさしているのかもしれない。

人ならざるものは、自分と違う。
故に畏怖と崇拝の象徴になるけど、最後は恐れられてノケモノにされてしまう。
ハブれものに気づけるのは、同じく周りからノケモノにされたもの。
主人公の青年も、人魚と同じなのだろう。

青年は人魚を、人魚は鯨を、鯨は月を眺めながら、追いかけているのだ。
これは一つの巡りを生んでいるのでは。
人魚の考えは、あながち間違っていない。