魔法陣の中心で愛を叫ぶ

魔法陣の中心で愛を叫ぶ

　皆さんは21MM-392ジェイムスン教授をご存知だろうか。

機械の体に脳を移植されたサイボーグと言うのが彼の正体なんだけどね。

ジェイムスン教授は実は古典SFの登場人物だったりする。

ジェイムスン型サイボーグのジェイムスンという名称はそこからきてるってわけだ。

　皆さんもご承知の通り。

ジェイムスン型サイボーグと言えば、私みたいに人型の擬体を必要とする人間が移植体。Second Existence、略してSEXを用意できるまでの中繋ぎのボディの事を言う。

Second Existence

まんま二番目の実存ってこと。

なんのこっちゃ良く分かんないけどね。

　とにかくだ。

ジェイムスン型サイボーグは脳を保護維持することに特化したかりそめ、臨時のボディと言うことになる。

SEXはどんな安物でもオーダーメードになるからね。

専用のSEXが出来上がるまでは、ジェインムスン型サイボーグになって待ってなさいってこと。

　有り余る資産を持っているお金持ちは、見てくれも人体に近いボディをレンタルしちゃう。

庶民が贖えるSEXと見てくれはあまり変わらないレプリカサイボーグの中で待機できるわけ。

だけど私みたいな庶民にはレプリカサイボーグなんて高嶺の花だ。

国民健康保険と民間生命保険のカバー範囲で賄えるボディしか用意できない。

　ジェインムスン型サイボーグってのは、レプリカサイボーグみたいな人型と違ってね。

ドラム缶にセンサーとマニュピレーターが付いてるだけの代物なんだよ？

贔屓の引き倒しで褒めたところで可愛くないR2D2って感じ？

　貧乏はいやだ。

通学の途中で事故に巻き込まれた私は、意識を取り戻した時、すでにドラム缶みたいなジェインムスン型サイボーグの中にいた。

そこいらの民間生命保険に加入できる程度の庶民のお約束コースだよ？

まあ、その事には全然文句も異論もない。

学生保険にもちゃんと加入してくれていた両親には大感謝だよ。

一昔前なら死んでたところだからね。

それを考えればね。

こうしてジェインムスン型サイボーグの中にいられるのは幸せなことだよ？

だけど何故？

どうして？

　私はジェインムスン型サイボーグの状態で異世界召喚されてしまったのだ。

どうせ召喚するなら、せめて死んだ時の身体にしてくれよ。

百歩譲ってSEXに脳移植されてからでも良かった。

よりによって花の女子高生がだよ。

何が悲しくてドラム缶みたいななりのジェインムスン型サイボーグとして異世界に召喚されなきゃならないんだ？

　アニメでお馴染みの壮麗な建物の神聖な広間に描かれた魔法陣。

その中央に召喚されちゃったドラム缶だよ？

私にどうしろって言うんだろ。

あっけに取られた神官や貴族や騎士団の皆さんの顔ったらなかったね。

私にまだ舌があったのなら瞬時に噛み切って見せたに違いないよ？

スライムにでも転生した方がまだましだった。